『良い子はみんなご褒美がもらえる』堤真一・橋本良亮らが「自由」と格闘する稽古場


2019年4月20日(土)に開幕する『良い子はみんなご褒美がもらえる』。英国の劇作家トム・ストッパードが“俳優とオーケストラのために書き下ろした”というこの異色作に、堤真一と橋本良亮(A.B.C-Z)がW主演として、演出のウィル・タケットと共に挑んでいる。公演に向け、どんな創作活動が行われているのか?ある日の稽古場を取材した。

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物語の舞台は、舞台はソビエトと思われる独裁国家の精神病院の一室。誹謗罪でつかまった政治犯の男アレクサンドル(堤)、と、“自分はオーケストラを連れている”という妄想に囚われた男イワノフ(橋本)が、精神病院で同室となる。言論の自由と想像することの自由を主張する二人。彼らを通して、「自由な世界」が故に他人と異なることへの「不自由さ」を現代社会に問いかける・・・。

(※堤と橋本の役名が同姓同名のため、以下、堤の役をアレクサンドル、橋本の役をイワノフと表記します)

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稽古場の中央には、階段状のステージ、上手と下手には階段、下手には診察室のような空間。そして、その後ろにはオーケストラ35人のための場所が舞台上に設けられている。“俳優とオーケストラのための”本作では、オーケストラの存在も劇中の登場人物の一人なのだと、その存在をはっきりと提示していた。

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取材日は、堤と橋本のシーンから始まった。オーケストラを連れているという妄想に取り憑かれながら、現状に対する不満を垂れ流すイワノフ(橋本)。空間の隅で身体を丸めて横たわるアレクサンドル(堤)は、それを聞いているのかいないのか。うつろな表情で、ゆっくりと起き上がり、今度はアレクサンドルの独白が始まる――そんな一連の動きを、タケットは二人と共に調整していく。身体はどれぐらい起こすのか?その時の視線の先は?いつ立ち上がるのか?二人の距離は?一つ一つ試しながら、ベストな瞬間が生まれると稽古場には「それイイネ!」と言わんばかりの笑みが溢れた。

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橋本演じるイワノフは、精神病患者という複雑さと長台詞も多い難役に、真正面からぶつかっていた。演出のタケットに向ける視線は、真っ直ぐだ。オーケストラの妄想と共にコミカルな動きを見せる一方で、スポットが当たっていない瞬間はじっと身を潜めている。自らに求められていることを掴み、形にしようという、静と動。本番でどんな姿を見せてくれるのか、楽しみだ。

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続いては、イワノフ息子・サーシャ(シム・ウンギョン)と教師(斉藤由貴)の場面へと変わる。父の逮捕に疑問を持つ少年を、これが日本での初舞台となるシムは純粋に見せる。子どもの疑問を、斉藤演じる教師は説き伏せていくのだが、果たしてこれは“教育”で“正しいこと”なのか・・・。本作の原題『Every Good Boy Deserves Favour』は、五線譜を覚えるための英語の語呂合わせのことだという。「とにかくそういうものだから」という、共通認識としての便利さと、考えることを求めない恐ろしさを、同時に考えさせられた。

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そして医師(小手伸也)とアレクサンドル(堤)のシーンでは、医務室での二人のやりとりが繰り広げられる。小手が演じる医師は、陽気でコミカルな雰囲気ながら、どこか底知れぬ怖さも感じる。そんな彼に、信じる正しさを訴え続けるアレクサンドル。そして、サーシャの父親でもあるアレクサンドル。本番でも、堤は一人の男の中に燃える信念と父親としてのゆらぎを、熱量のある芝居で見せてくれそうだ。

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俳優とオーケストラのための戯曲『良い子はみんなご褒美がもらえる』は、4月20日(土)から5月7日(火)まで東京・TBS赤坂ACTシアターにて、5月11日(土)・5月12日(日)に大阪・フェスティバルホールにて上演される。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

 

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