息をのむ踊りと愛と冒険のストーリー!東京バレエ団初演『海賊』リハーサルレポート


バレエ『海賊』といえば息をのむような超絶技巧の踊り、ロマンチックでダイナミックなパ・ド・ドゥ(男女二人の踊り)、華やかな群舞など、バレエファンなら必見の、そしてバレエ初心者にも十分に楽しめる演目だ。東京バレエ団による公演は、2019年3月15日(金)から3月17日(日)までの3日間。これに先駆け、リハーサルの模様をレポートする。

ストーリーは、若くハンサムな海賊の首領コンラッドたちが上陸した町では女たちが市場で売られている。その中の一人、美しいメドーラと恋に落ちるコンラッド。海賊たちは売られた女たちをさらい、海賊の島へ去っていく。喜びに溢れて踊る二人と、コンラッドの忠実な忠臣のアリ。だが奴隷商人ランケデムが追ってきて、女たちを取り返す。コンラッドたちは再び彼女らを取り戻すことができるのか?

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公演を前に、振付のアンナ=マリー・ホームズを迎えて行われた公開リハーサルは、前向きな緊張感が感じられながらも、何か楽しげな、高揚した雰囲気があった。リハーサルが始まる前にも、プリンシパルの上野水香がすでにソロパートを踊っている。市場で女たちを物色する大金持ちのパシャをからかうように手招きするユーモラスなシーンで、別キャストで同じメドーラ役を踊るプリンシパルの沖香菜子が美しいメドーラにフラフラとひきよせられるパシャの振りをしてみせ、笑いがはじける。

そしていざ全体リハーサルが始まると、群舞もソロも豪華な踊りの連続。ホームズや芸術監督の斎藤友佳理からテキパキと指示が飛ぶ。端から端まで上質なダンサーたちの中でも一際瞠目の踊りを披露してくれたのはファーストソリストの池本祥真。池本は第1幕のランケデム役で素晴らしいソロを見せてくれたのだが、第2幕ではキャストが変わり、今度はアリ役で豪華な踊りを見せてくれた。2幕でランケデムとして登場した宮川も素晴らしかったので、どちらのキャストを見ても間違いはないだろう。

この明るい雰囲気は、ホームズの明るい性格と、この作品を明るく楽しいものにしたいという明確な意図に由来すると思われる。また、今回のキャスティングに当たり、メドーラ、コンラッド、ギュルナーラ、アリの4役以外の役は、団内オーディションで決定したという。

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斉藤は「主要4役は早い段階で名前を公表しなければならなかったので、オーディションではなく、当時はまだ面識もなかったホームズ先生と、メールと映像でさんざん協議して決めました。そのほかの役は皆を集めて、所属年数やクラスなど一切関係なくステージ上で競い合っていただきました。本当に良ければ役がつくから、皆に挑戦して欲しかったんです。そうして選んだ結果が、この配役です。最終的な決定権は、この作品を一番良く知っているホームズ先生にお願いしました。ダンサーたちも皆納得しているので、それが皆のモチベーションの高さ、テンションの高さにつながっていると思います」と述べた。

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また『海賊』という作品を選んだ理由、その中でもホームズの演出を選んだ理由については「今の東京バレエ団のダンサーたちの個性を生かすためにどの作品が最もふさわしいか考えた時に、『海賊』が浮かびました。古典バレエで男性も女性と同じように見せ場の多い作品というのは限られていますから。そして、ホームズ先生の演出を選んだのは、実にシンプルで分かりやすくユーモアがあるから。戦いもロマンスも、いろんな要素が含まれており、昔の長すぎた部分はカットしつつも、大切なキャラクターの踊りは残されている。これ以外に今の東京バレエ団でやるものはない、と思いました」と目を輝かせた。

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海賊の首領コンラッドと恋に落ちる美しいメドーラ役を踊る上野は「ホームズさんの演出はすごく楽しいバレエだと感じていたので楽しみでした。でも、とても出番が多く、踊りも多いので、めちゃくちゃハードだなと思っています(笑)。同時に、メドーラという女性は運命に翻弄され、悲しい時、辛い時、幸せな時もあるけれど、いつも前向きで明るさを忘れないようなキャラクターなんじゃないかなと感じました。演じていて皆で力を合わせているというのが感じられて、すごく楽しいんです。この空気感が皆に伝わるような舞台を目指したいと思います」と明るく前向きなキャラクターそのままに語った。

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またメドーラと一緒にパシャに売られてしまうギュルナーラを演じるプリンシパル、川島麻実子は「映像や舞台で見たギュルナーラは皆さんすごくきれいに淡々と踊られているのでこんなにハードだと思っていなかったので、こんなに辛いの?と思いながらやっています(笑)。皆で一緒に舞台に立ち、和気あいあいとした雰囲気を感じながら、助け合って作品を作っていけたらいいなと思っています」と微笑んだ。

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この難しくも華やかなバレエ『海賊』を、コンラッドを演じるプリンシパルの柄本弾は「男性ダンサーには憧れの、“男性の全幕バレエ”だと男性陣は勝手に思ってるんです(笑)」という。冒頭の登場のシーンもメドーラとの踊りも最後のソロも、出番が多く大変そうだが「皆で盛り上げ、鼓舞し合いながら良い舞台を作っていこうとしています。ホームズ先生は各々のダンサーの個性をすごく活かそうとしてくださるのでリハーサルで踊っていてもとても楽しいですし、僕の良さをしっかりと出したコンラッドができるようにがんばっていきたいと思います」と意気込みを見せた。

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そして、アリとランケデムを日替わりで踊る宮川は「この『海賊』は、留学していた時に皆で夜な夜な寮を抜け出しDVDを持ってスタジオに行って、できもしないようなことを真似しながらやっていた・・・それぐらい印象が強かった作品で、若い男性ダンサーの憧れでした。それを見た時の衝撃というのは、自分の中でもすごく大きくて、今回アリとランケデムを両方やらせていただくことは本当にありがたいことだと思っています」と謙虚な中に情熱を見せる。

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アメリカン・バレエ・シアターやイングリッシュ・ナショナル・バレエでも大人気のアンナ=マリー・ホームズ演出の『海賊』、本番が待ち遠しい。東京バレエ団初演『海賊』は、3月15日(金)から3月17日(日)まで東京文化会館にて上演される。

【NBSホームページ】https://www.nbs.or.jp/

(取材・文/月島ゆみ、写真/Shoko Matsuhashi)

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