風刺にとどまらない『ザ・空気 ver.2』選考委員特別賞に 第26回読売演劇大賞贈賞式レポート<2>


2019年2月28日(木)に東京都内にて行われた「第26回読売演劇大賞贈賞式」のレポート第2弾では、選考委員特別賞『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』(二兎社)の受賞者スピーチをレポートする。

本作は、「二兎社」を主宰する永井愛の作・演出で、第25回の最優秀演出家賞と優秀作品賞を受賞した『ザ・空気』の姉妹作として今年6月から7月にかけて全国で上演。作品部門にノミネートされ、第一次選考で圧倒的な支持を集めたが、投票結果は1票差の次点に。そのため、選考委員の選ぶ特別賞として選出されることとなった。

描かれたのは、国会記者クラブで起きた“ある出来事”に対する様々なメディアの駆け引き。翻弄される人々の、組織で生きる者としての保身と葛藤をコミカルにあぶり出した。登場人物は5人(出演:安田成美、眞島秀和、馬渕英俚可、柳下大、松尾貴史)。舞台転換もないシンプルな構成ながら、笑いの「仕掛け」もふんだんに盛り込み、単なる風刺劇にとどまらない作品として提示した。

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贈賞は、選考委員の前田清実から作・演出を手掛けた永井へと贈られた。登壇するなり「出演者の皆さんもこちらへ来ていただけますか」と、優秀男優賞を受賞した松尾と、会場に駆けつけていた馬渕と柳下を壇上へ呼び込んだ永井。

恐縮する3人を背に、永井は「私は今回も本を書くのが遅くて、皆さんに大変なご迷惑をおかけしました。それにも関わらず、芝居をおもしろくしてくださったのは(出演者の)皆さんのおかげです」と感謝を述べた。

読売新聞社主催の賞ということで、「この作品は、読売新聞としてはアウトなのでは・・・?」と問いかけ笑いを誘いつつ、「それにも関わらず、選考委員特別賞という栄誉を与えてくださった皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました」とコメント。

また、作品の創作過程において「取材を通しいろいろな人にお会いしました。今、日本のメディアは政権との距離によって分断されていますが、その中でも奮闘している方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々の存在に、今回も励まされました。また、ジャーナリストの白石草さんからは貴重なお話をたくさんお伺いし、作品にイメージを与えていただきました」と明かした。

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そして、折角ですので一言ずつ」と、出演者にもマイクを振る。突然のことに柳下は「えっ」と驚きながらも「この度、出演させていただき、作品に関わらせていただけたことを光栄に思います。ありがとうございました」と挨拶。

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馬渕は、作品作りを振り返りながら「この作品は、稽古の初日から千秋楽の最後までずーっと、ワクワクと鳥肌が立つたまらない作品でした。参加させていただけたことに、本当に感謝しております」と笑顔いっぱい。

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そして、松尾は「私は、保守系全国紙の論説委員でございました。このような場所に立ってよいものか、非常に心苦しいものがあるのですが・・・(笑)」と苦笑いしつつ、「でも、ジャーナリズムはまだ死んでいないかも!とも思えました。本当にいい機会をいただきまして、永井さんにも、共演者の皆さんにも、お客様にも、そして二兎社の皆さんにも御礼申し上げます。ありがとうございました!」と晴れやかな表情を見せていた。

なお、選考委員特別賞、優秀男優賞(松尾)のほか、同作で永井が優秀演出家賞も受賞している。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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