松下洸平、杉村春子賞を「武器にせず糧に」第26回読売演劇大賞贈賞式レポート<1>


2019年2月28日(木)に東京都内にて行われた「第26回読売演劇大賞贈賞式」。華やかな祝いの場には、各作品の関係者が集い、受賞者の喜びの声に耳を傾けた。本レポートでは「杉村春子賞」を受賞した松下洸平のスピーチを紹介する。

「杉村春子賞」は、文学座の協力で第6回より設けられた。新劇の名女優、杉村春子氏の業績を讃え、年間の活躍が目覚しく、これからの活動が期待される新人に贈られる。前年の受賞者は、シライケイタ。

松下は、2009年に『GLORY DAYS』で初舞台を踏んだ。評価対象となったこまつ座『母と暮せば』では、長崎の原爆で命を落とした息子役で緊張感のある演技を、もう一つのミュージカル『スリル・ミー』では、残忍な誘拐殺人を犯してしまう「私」役を2011年の初演から演じ続けており、息づまる描写で受賞となった。

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プレゼンターのシライに「お互いにいい仕事をしていきましょう!そして、いつか必ずこの賞をいただいたもの同士、一緒に作品を作りましょう。その日を楽しみにしています」と声をかけられ、笑顔で登壇した松下。

「改めて、この度は非常に栄誉ある賞をいただきありがとうございます。本当に、お礼を伝えたい方はたくさんいらっしゃるんですが・・・」と切り出し、受賞者として同じ壇上に座る、大賞・最優秀演出家賞を受賞した栗山民也に向かい「中でも『母と暮せば』『スリル・ミー』を演出してくださいました栗山民也さんには、何度お礼を言っても足りないぐらいです」と、深々と一礼。

語ったのは、栗山と初めて会った日のこと。「今も鮮明に覚えております。2011年3月12日でした。東日本大震災の翌日、『スリル・ミー』のオーディション会場で芝居と歌を見ていただきました。栗山さんは、僕の芝居と歌を見終わって、最後に一言だけ僕にこうおっしゃいました。『とにかく来てくれてありがとう』と。あれから、たくさんの作品を共に作らせていただきました。栗山さんがいなければ、今の自分はいないと思っております」。

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続けて「もうお一方、どうしてもお礼を言いたい方がいらっしゃいます。それは、井上ひさしさんです。僕は井上さんとお会いしたことがありません。お話をしたこともないですし、ここに井上さんがいらっしゃったら聞きたいことがたくさんあるんですけれども、それは叶いません。ただ、『母と暮せば』『木の上の軍隊』といった戯曲を通して、井上さんと対話させていただいているような気がします。これからも、井上さんの戯曲を一人でも多くの方に届けられるように、精一杯努めていきたいと思います」と語った。

ブロンズ像を手に、思いに満ちた表情で会場を見渡した松下は「お礼を言っても言い切れないんですが、こまつ座に僕を誘ってくださった井上麻矢さん、そして『母と暮せば』の脚本を書いてくださった畑澤聖悟さん、『母と暮せば』ではいつも笑顔で支えてくださった富田靖子さん、そして『スリル・ミー』で7年間に渡り、僕と一緒に戦ってくれた柿澤勇人・・・本当に多くの方に感謝しております。そして、何よりも僕を生んでくれた母に感謝を。この賞を武器にせず糧にして、これからも日々精進してまいりたいと思います。ありがとうございました」とスピーチを締めくくった。

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なお、授賞式後の懇親会では、松下と優秀スタッフ賞を受賞した朴勝哲のピアノ伴奏による「戻れない道」(『スリル・ミー』より)が受賞者パフォーマンスとして披露された。

松下は、5月にこまつ座の『木の上の軍隊』に再び出演する予定だ。詳細は、以下のとおり。

◆公演情報
井上ひさしMEMORIAL10 こまつ座 第127回公演『木の上の軍隊』
2019年5月11日(土)~5月19日(日) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

【原案】井上ひさし
【作】蓬莱竜太
【演出】栗山民也

【出演】山西惇 松下洸平 普天間かおり 有働皆美(ヴィオラ奏者)

【こまつ座公式HP】http://www.komatsuza.co.jp/index.html

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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