加藤和樹&凰稀かなめW主演『暗くなるまで待って』は“体感型”サスペンス・エンターテインメント


舞台『暗くなるまで待って』が2019年1月25日(金)に東京・サンシャイン劇場にて開幕した。初日前日には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、W主演となる加藤和樹と凰稀かなめに加え、高橋光臣、猪塚健太、松田悟志、演出の深作健太が登壇した。

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本作は、1966年にフレデリック・ノットが書き下ろした戯曲。ブロードウェイで初演されたサスペンスの傑作『暗くなるまで待って』(原題『WAIT UNTIL DARK』)は、1967年にオードリー・ヘプバーン主演で映画化され、アパートの一室で繰り広げられる盲目の若妻と悪党たちの手に汗握る攻防戦と衝撃のラストが話題となり大ヒットを記録した。日本では2009年以来、約10年ぶりの上演となる。

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【あらすじ】
ロート(加藤)・マイク(高橋)・クローカー(猪塚)は、カメラマンのサム(松田)が旅先から持ち帰った人形を奪おうとアパートに侵入する。人形には、麻薬が仕込まれているのだった。家探しの末、人形を見つけられなかった3人は、盲目の若妻・スージー(凰稀)を言葉巧みにだまして人形を手に入れようと手を尽くすが、奇妙な心理戦が続く中で、スージーは彼らの言動に不審を抱くようになる。

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少女グローリア(黒澤美澪奈)の協力を得て、男たちの正体を次々と暴いていくスージーだが、やがて凶悪なロートの魔の手がスージーに迫り、絶体絶命のピンチを迎えることに。暗闇の中、最後の対決を迎える二人の運命は・・・。

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開幕を迎える心境を問われると、加藤は「稽古を重ね、一つ一ついろんなチャレンジをしてきました。正直、どうなるか分からないです。いい意味でも悪い意味でも、実際にお客様が入ってみないと分からないところがあるので、果たしてこの舞台が皆様にどう見えるのか・・・。プレッシャーを感じつつ、それがいい緊張感になっています」と意気込む。

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凰稀も「私自身、サスペンス作品は初めて。お客様からどんな反応をいただけるのか、まったく分からないのでかなりドキドキしています。皆様をこの作品世界に引き込めるように、自分自身も楽しんでやっていきたいです」と語った。

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見どころについては、高橋が「“物音”に敏感な舞台です。お客様の咳なども、スージーが気付いちゃうかもしれないので気をつけつつ、一緒に楽しんでください(笑)」と茶目っ気たっぷりに答えると、キャスト陣から笑いが起こり、会見は一気に和んだ雰囲気に。

「照明、音響、そして皆さんの芝居も含めてすごいものが出来たなという確信を得られた」という猪塚は、「早く観に来た皆さんをゾクゾクさせたいですね(笑)。この作品は“体感型サスペンス・エンターテインメント”だと思っているので、皆さんも一緒に体感しながら、この世界にドップリ浸かっていただけたらと思います」とコメントした。

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松田も「同世代の役者が集まっているので、ある種クラスメイトのような仲間意識が芽生えて、些細なことでも積極的に話し合えた現場でした。このチームワークが舞台上でどのように花開くのか。キャスト、スタッフ一丸となって、最後まで緊張感をしっかりと作っていきたいです。共犯者と被害者、どちらの視点に立ってもハラハラ&ドキドキすること間違いないので、それぞれの視点で楽しんでください!」と自信たっぷりにアピール。

演出の深作からは「“戦友”と思っている加藤和樹くんや、とっても頼りになる凰稀かなめさんをはじめ、素晴らしいキャストの皆さんと一緒に作ってきました。このカンパニーの熱量を、そのまま舞台上に持っていければなと思っております。ラスト20分、暗闇でのクライマックス・シーンは素敵な仕上がりになろうとしています。いろいろな表現があふれているこの時代の中で、舞台でしか感じられない、本当のサスペンス劇を届けることができたら・・・」と、キャスト陣を見渡しながら笑顔を見せた。

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気になるのは、深作の言葉にもあった“暗闇”のシーン。「私は、実は暗い方が楽なんですよ。逆に今、ライトが当たっている方がかすんで見えます」と語る凰稀に、加藤は「この人、本当に見えていないんですよ、こっちが心配になるレベルで(周囲のものに)ガンガン当たってくるんです(笑)」と苦笑い。

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一方、加藤はこれが“本格的な悪役”初挑戦。役に臨む心境を「いまだにロートの本質がどこにあるのか分からないし、掘り下げれば掘り下げるほどいろんな表現の仕方があるように思います。どれも間違いではないけれどどれも正解ではない。掴めそうで掴めない・・・やればやるほど変化していく感覚がおもしろいです」と吐露した。

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舞台の上には、家具や家電。60年代のアメリカをイメージしたアパートの一室で、盲目の若妻と3人の悪党による密室の攻防劇が繰り広げられる。「目が見えない相手だから簡単にだませる」と思っていた男たちだが、視力に頼らない生活を送っているからこそ些細な音や匂いなどに敏感なスージーは、相手の言動に次第に不信感を募らせ、バラバラになったパズルのピースをはめていくように仮説を立て、彼らの正体に迫っていく。その思慮深さには、驚嘆すると同時に、目に映ることがすべてではないと改めて思い知らされる。

時計が秒針を刻む音、冷蔵庫のコンプレッサー、街の雑踏、部屋を訪れる男たちの足音・・・生活の中にあふれる多くの“音”がこの作品では重要なファクター。そして、最初はスージーに反発しつつも、次第に心を通わせ共に戦う協力者となる少女・グローリアとの絆など、人との心の交流もポイントとなっている。

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そんな中、情に流されることなく最後まで“悪”として存在した加藤が演じるロートの振り切れっぷりには驚かされた。目的のためには手段を選ばない冷酷さ。用意周到な計算高さ。そして淡々と計画を進めてきた彼が最後に暗闇のシーンで感情を爆発させる様は、表情こそ鮮明に見えないものの、漂う空気や口調から不気味さすら感じさせ、狂気そのものだ。

今から50年以上前に書かれた作品ではあるが、人間の心理を突いた駆け引きとスピーディーなストーリー展開に息を呑む。一気に突き進んだ先で、待ち受ける衝撃、そして恐怖を、ぜひ劇場で、肌で体感してほしい。

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舞台『暗くなるまで待って』は、2月3日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。その後、兵庫、名古屋、福岡を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。

【東京公演】1月25日(金)~2月3日(日) サンシャイン劇場
【兵庫公演】2月8日(金)~2月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【名古屋公演】2月16日(土)・2月17日(日) ウインクあいち
【福岡公演】2月23日(土) 福岡市民会館大ホール

【公式HP】http://wud2019.com/

(取材・文・撮影/近藤明子)

 

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