『妖怪アパートの幽雅な日常』前山剛久、主演舞台で考える“普通とは何か”


舞台『妖怪アパートの幽雅な日常』が、2019年11月27日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演されている。本作は、シリーズ累計580万部発行、第51回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞した大ヒット児童文学のコミカライズを舞台化もの。舞台写真と、初日前日に行われた囲み会見の模様を交えながら、本作を紹介する。

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描かれているのは、妖怪ファンタジーの体裁をとりながら、心優しくもクセの強い入居者たちとの交流を通して、主人公の心の成長を描いていく青春ストーリー。上演台本は谷碧仁、演出は劇団「エムキチビート」主宰の元吉庸泰が手掛けている。

出演は、前山剛久、小松準弥、佐伯亮、谷佳樹、中村裕香里、相川春樹、荒井悠・猪股怜生(Wキャスト)、室井響、石井英明、馬渡亜樹、永田紗茅、三井聡。

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会見で、前山は「魂込めて稽古に臨んできたので、素敵な作品に仕上がっていると思います」と自信をのぞかせた。前山が演じるのは、妖怪アパートで一人暮らしを始める主人公の稲葉夕士。見どころについては「話の展開スピードは速くないですが、キャラクター同士の関係性やどう思っているのかなど、内面を深く掘り下げながら、丁寧に描いています」と明かした。

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小松は、夕士の親友・長谷泉貴役を演じる。「僕の役は妖怪アパートでは暮らしていませんが、夕士の親友として、彼を見守りながら、心の変化を感じています。(アパートの住人など)いろいろな人の話や表情、思っていることをどれだけ受け取れるかを考えながら演じていこうと思っています」と意気込んだ。

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アパートの住人の龍さん役の佐伯は、自身の役柄について「似ているところがすごく少なかった」と吐露しながらも、「龍さんは、夕士の悩みを全部分かっていて、選択肢を与える役割。彼を導くための道筋作りは大変でしたが、演じていくうちに龍さんの優しさを感じられたので、充実した稽古になりました」と笑顔を見せた。

一色黎明役の谷は「一番(夕士と)直接的に、深く関わっていくキャラクター。親のような目線で関わっていくので、そこを大切に演じたいです」とコメント。前山とは本作が3度目2年ぶりの共演だといい、「座長としてすごい成長している」と絶賛すると、前山も「佳樹もいろいろな作品を経て成長していると感じました」とにっこり。さらに「今回より近くなった距離感が、芝居にも出ていると思います」と加えた。

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コミック化、アニメ化もされている本作だが、元吉の演出は、舞台版ならでは「妖アパ」の魅力を引き出している。タイトルにも“日常”と付けられているように、描かれているのはなんてことのない、日々の暮らし。妖怪と幽霊と人間が同居しているのは、ちょっと普通ではないのかもしれないけれど、妖怪アパートこと「寿荘」では当たり前のことなのだ。

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物語は夕士の目線で綴られているので、当たり前であるはずの“日常”には戸惑いや驚きに満ちているが、流れている空気には温もりがある。ゆっくりと氷を溶かしていくように、いろいろな形の優しさが、大人になるために頑なだった少年の心を解いていく。夕士の気持ちも、彼を見守る周囲の人々の気持ちも、役者が身一つで演じているからこそ、リアルなコミュニケーションのあり方として伝わってくるものがあり、舞台化の意義を感じた。

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また、振付・ステージングも担当している三井がスペシャル・ダンサーとして表現を加えるほか、キャストたちが妖怪や幽霊に姿を変え、次々と現れるのも目に楽しい。そして、桑原まこが手掛ける音楽の心地よさと一緒に、いつしかその光景が目に馴染んでいて、沁みる。

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会見の最後、前山は「この作品を観たら“普通とは何か”考えると思います。僕にとっての普通と皆さんにとっての普通は違いますし、それぞれに答えも違う。この作品では、自分と相手の境界線を踏み越えていく勇気をもらえると思います。ぜひ普通とは何かをこの作品を見て考えていただけたら嬉しいです」と語っていた。

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舞台『妖怪アパートの幽雅な日常』は、1月11日(金)から1月27日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演。

【公式HP】https://www.youapa-stage.jp
【公式Twitter】@YouapaStage

(C)香月日輪・深山和香/講談社 (C)2018 舞台「妖アパ」製作委員会

(取材・文・撮影/嶋田真己、エンタステージ編集部)

 

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