浜中文一のはまり役がまた一つ!心が浄化される舞台『スケリグ』開幕


2019年1月11日(金)に東京・DDD青山クロスシアターにて舞台『スケリグ』が開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、浜中文一、末澤誠也、渡辺菜花、金子昇、瀬戸カトリーヌと演出のウォーリー木下が登壇し、意気込みを語った。

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「スケリグ(Skellig)」は、イギリスの作家デイヴィッド・アーモンドによって1998年に書き下ろされた児童書で、同年には「ハリー・ポッター」を抑え、ウィットブレッド児童文学賞(現コスタ賞)、カーネギー賞を受賞した傑作ファンタジー。日本では、「肩胛骨は翼のなごり」(山田順子訳・創元推理文庫刊)の邦題で出版されている。

冬の終わり、古い家に引っ越してきたマイケルは、ホコリと虫の死骸まみれで汚れた服をまとい、ねじ曲がった身体で、背中に奇妙なものが生えている「彼=スケリグ」と出会う。スケリグとはいったい何者なのか。

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ステージの上に作られていたのは、とある民家の古びたガレージの内部。絵が抜けてしまった額縁、椅子、木箱などが雑然と置かれ、正面の大きな窓にはすすぼけた硝子がはめ込まれていた。ステージの奥行はかなり狭く、人がすれ違うのがやっとという程度。と、思いきや、芝居が始まると窓のすぐ下のエリア、さらには窓の向こう側でも芝居ができるように作られていることが分かり、一気に視界が広がった。

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そんな空間で、キャストたちは演劇ならではの想像力を刺激するように、台詞や動きを駆使してステージ上のガレージの中に段差、階段、屋根裏部屋などを次々と浮かび上がらせていた。メインとなる役だけでなく、名もない登場人物から劇中のストーリーテラーまで何役もこなし、さらには音楽や効果音もその場で作り出すという八面六臂の活躍ぶり。楽屋や舞台袖で休憩する余裕などないくらい、常に誰かがステージの上にいる状態となっていた。

スケリグ役の浜中は、本当に浜中なのか?と目を疑うくらい薄汚れた姿。真っ白な顔、ボサボサ頭でギラついた眼差しという、なんとも近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。だが物語が進むにつれ、彼を助けようとするマイケルとミナの心に触れていくと、彼を取り巻く空気に変化が生まれ、まるで脱皮したかのような美しい姿を見せる。これまで、遺産争いの中心人物となる旧家の息子、気の弱いバーテン、出兵する若者、性癖に問題ありの変態(!?)などなど、振り幅の広さには定評がある浜中だが、この作品でまた一つ「当たり役」を手に入れたのではないだろうか。

この物語のキーパーソンとなるマイケル役の末澤は、子どもならではの好奇心の強さと、身体が弱い妹の世話をする両親を気遣いながらも、どこか寂しさを感じている心優しい少年像を丁寧に演じており、実は膨大な台詞量をそうとは感じさせずマイケルとして自然にこの世界に生きていた。またマイケルが出会う少女ミナとのやり取りも実に微笑ましく、二人であれこれと行動している姿は本当に「子どもたち」だった。

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スケリグとマイケルが徐々に心を通わせていく中で、子どもたちの目線から、生と死、人の弱さと強さ、優しさが静かに描かれていた本作。ウォーリー木下が手掛ける作品の魅力の一つである独特の音色を持つ美しい音楽と共に心が浄化され、何度も観たくなるファンタジーとなっていた。

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ゲネプロ後の会見では、キャストたちが何役もこなしている話が話題となる。金子は「文ちゃん(浜中)は実はスケリグ役だけでなく3つ、4つとほかの役もやっているんです」と言うと「正確に言うと8役です」と浜中。どんな役をやっているかは「ぜひ(お客様に)見つけていただきたい」と期待を持たせていた。

そんなステージ上でも忙しいはずの浜中だが、瀬戸から「文ちゃんは他の演者にこそっとアドリブで話しかけたりと、いたずらをする余裕があるんです。腹立たしいくらいの余裕です(笑)」と暴露されると、楽しそうに笑っていた。

一方、末澤はマイケル役のひと役だけではあるが「これだけの台詞を覚えるのも初めての経験で、しっかりとした役をいただくのも初めてで大変でした」と振り返る。末澤演じるマイケルの母親役の瀬戸は「息子の成長が日に日に素晴らしく感動しています」とコメントすると「母」の言葉に恥ずかしそうに笑顔を浮かべる末澤だった。

ミナ役の渡辺は『赤毛のアン』アン役をはじめ、これまでミュージカル畑で活動していた。それ故「今回ストレートプレイが初めてなんです」と遠慮がちに話し出すと金子が「というか、これ、ストレートプレイって感じでもないんだけどね」と茶々を入れ渡辺の緊張をほぐす。

今日のゲネプロの出来についてウォーリー木下は「いいゲネプロでした」と胸を張る。「100点満点で何点か?」と質問が飛ぶとウォーリーが答える前に浜中が「100点でしょ?」とカットインして笑いを誘っていた。

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舞台『スケリグ』は1月11日(金)から2月11日(月)まで東京・DDD青山クロスシアターにて上演。その後、大阪、愛知、金沢、兵庫を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。上演時間は約2時間を予定(休憩なし)。

【東京公演】1月11日(金)~2月11日(月) 東京・DDD青山クロスシアター
【大阪公演】2月14日(木) 松下IMP ホール
【愛知公演】2月16日(土) 一宮市尾西市民会館
【金沢公演】2月19日(火) 開演北國新聞 赤羽ホール
【兵庫公演】2月23日(土)・2月24日(日)  開演芦屋ルナ・ホール 大ホール

(取材・文・撮影/こむらさき)

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