梅棒『超ピカイチ!』w-inds.千葉涼平らをメインゲストに年末年始大暴れ!【全日制ver.】レポート


2018年12月15日(土)より東京・東京グローブ座にて梅棒 9th“RE”ATTACK『超ピカイチ!』が上演されている。本作は、2017年に上演された梅棒 7th ATTACK『ピカイチ!』をバージョンアップしたもので、高校生の純情青春物語をヒット曲に乗せて高いダンススキルで表現するコメディ。

梅棒『超ピカイチ!』全日制ver.舞台写真_2

友情、恋愛、部活、憧れ、挑戦、諦め、成長、挫折、オシャレ、自尊心、さらには学校の怪談まで・・・一生懸命だったりくすぶったりしていた10代の日々を、全力のダンスと笑いで包む。今回は、初演の楽しさをぼぼ完全再現しつつ、さらなるブラッシュアップを施した“ド真ん中直球”スタイルの【全日制ver.】と、同じ物語とは思えぬほどキャラと展開がさらに濃く味付けされた“7色の変化球”スタイルの【定時制ver.】と、2バージョンで上演。本記事では、【全日制ver.】の模様をレポートする。

梅棒『超ピカイチ!』全日制ver.舞台写真_3

【全日制ver.】は、初演とほぼ同キャスト。うだつがあがらない男子高校生の主人公・道玄坂を鶴野輝一(梅棒)、ライバルとなるイケメンナルシスト転校生をゲストの千葉涼平(w-inds.)が演じた。これを【定時制ver.】では道玄坂役を千葉が、転校生を野田裕貴(梅棒)がつとめている。

両ver.とも、物語の流れに大きな違いはない。しかし各チームのキャストに合わせたビジュアル、ダンス、セットリストで、カラーの違う作品になっている。ベースは同じなのにそこにいる人が異なると雰囲気がまったく変わるというのは、実際の学校の全日制(昼)と定時制(夜)そのものだ。

梅棒『超ピカイチ!』全日制ver.舞台写真_5

さて、学校とは始業時間前からはじまっているもの。校門に先生が立ち、「はやくしろ学校が始まるぞ」とうながしてくる。この舞台も、開幕より前から出演者が「さあ、舞台(学校)がはじまりますよ、いいですか」と前説をはじめる。着席すればもう、あなたは“青梅英雄高校”の生徒だ。

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友達との登校、席替えで気になる子と近くになれて浮き足立つ気持ち、部活仲間との練習や行き違い、不良たちとのちょっとした揉め事・・・そんな日常の中で、ある日やってくる嵐のような転校生と「生徒会選挙」。とくにパッとしない普通の男子高校生・道玄坂(鶴野)は、気になる彼女(大野愛友佳)との恋のため、選挙に立候補することに・・・しかしそこに、転校生がライバルとして立ち塞がる?!

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鶴野の人なつこさと、コミカルに喜怒哀楽をおもいきり届けるダンス。そこに、オーディションで選ばれた大野のかわいらしくも複雑な女子の気持ちを体現したダンスが重なり、青春の爽やかな甘酸っぱさを感じさせる。【定時制ver.】のヒロインは、大野のポニーテールで真っすぐな女の子とはまた違い、高見奈央がショートカットの溌剌としながら少し大人びた雰囲気もある女子高生を演じている。少年マンガと同じで、ヒロインのタイプが違うだけで、彼女をめぐる恋愛の雰囲気が変わってくる。それが学園ドラマの魅力のひとつだ。

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そして、ある日転校してくる豪徳寺(千葉)。キャッチコピーは“乱世に舞い降りた転校生”。演出の伊藤今人が「見たことのない姿を見せたい」と配役したように、普段控えめさを覗かせる千葉とは真逆の、笑えるほどの豪快なナルシストぶり。首を大きく反らせた決めポーズも、足を高く上げたキザな振る舞いもパシッと決め、学校中の女の子を虜にしていく。格好良さにありあまる説得力。野心のある冷酷な行動をしつつ、時おり優しさを感じさせる演技が、また人を惹きつける。千葉は【定時制ver.】ではドジな純情少年を演じるので、両チーム観るとそのギャップもまた楽しめるだろう。

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個性豊かすぎるキャラクターたちは、学校という場所の多彩さそのもの。野球部員、不良、ギャルら生徒たちとの友情や葛藤も学園ものとしては見どころ満載。それだけでなく、生徒たちを取り囲む教師陣もハチャメチャぶりを発揮している。熱血過ぎるモーレツ体育教師(一色洋平)、おカタイ女教師かと思えば実は・・・な学級担任(suzuyaka)、明るく空回りし続ける教頭(梅澤裕介)ら、むしろ生徒より教師たちの方が常軌を逸しているほど。でも、誰もが生徒たちを愛している。その描き方も、梅棒らしい。

さらには学校に潜む不思議な人物たちも登場。勉強熱心な二宮忠次郎(遠山晶司)、指揮棒とピアノで音楽を操る超ベートーベン(遠藤誠)、女子トイレからやってくる乙女・トイレの雲子さん(魚地菜緒)らが、現役高校生たちと信頼を育んでいく。

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客席は、大笑いや手拍子が耐えない。時々沈黙が流れたかと思えば、堪えきれなくなった数名が吹き出し、笑いが伝播していく。東京グローブ座は客席が円形のため、ステージを囲むように全員が丸く繋がっていく感覚がある。ダンサーたちが客席に降りて踊るシーンも数ヶ所あるので、3階席まで一体感で包まれていく。

セットリストは23曲。シーン展開に合った楽曲が流れ、心情と歌詞がシンクロする。ロック、J−POP、アイドルソング、懐メロ、オリジナルソングまで。振付も梅棒メンバーを中心に数名が担当しており、コミカルなものからダイナミックなもの、ジェスチャーの多いものなど楽しめる。【定時制ver.】では4分の1ほど楽曲が異なるので、両チーム観ても新鮮さがあるはずだ。

そして梅棒といえば、なんと言っても身体表現。フィールドの違うダンサーたちが一堂に介し、ピタリとそろうダンススキルは高く。観ていると迫力と勢いに飲み込まれ、こちらまで踊れる気がしてくる。それぞれの得意ジャンルを披露する見せ場も用意されており、ダンスショーとしても見どころ満載だ。

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魚地菜緒のブレイクダンスや、パイレーツオブマチョビアン(野球部員役)の露出多めの独自世界観、一色洋平の疾風迅雷のトークなど、個々の武器が際立つ。また、ダンスバトルもあり、興奮を塗り重ねるように新しいダンスを繰り出してくる。それぞれが突出した特技を持つからこそ、いろんなエンターテイメントを詰め込んで高め合い、よりクオリティの高いステージができるのだろう。人は皆、違う個性を持っている。それが一ヶ所に集まってくるのが、学校。まさにそんなステージだ。

どの瞬間を切りとっても、あふれる青春の甘酸っぱさ。数々のエピソードの中には、いつかの自分が持った感情を見つけられるかもしれない。全力で高校生を踊りきる彼らを見ていると、10 代の頃の気持ちが昨日のことのように蘇った。それはきっと、彼らが今も少年少女のように、がんばる時も迷う時も遠慮さえも、真剣に、懸命に、目の前のことに取り組んでいるからだ。

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青春漫画のような本気のバカを、プロフェッショナルな大人達が全力で実現する。かつて10代だった人も、これから10代を過ごしていく人も、きっと誰もが懐かしい気持ちを呼び起こされる。本気のバカ騒ぎに大笑いしているうちに、切なさと興奮で胸が熱くなるだろう。終演後、リピーターチケットを求める長蛇の列が、劇場出口への道を埋め、熱気は劇場の外までも続いていた。

今年を締めくくる一本としても良し。年明けに始まる大阪、愛知公演で2019年の幕開けを勢い良く迎えるも良し。年末年始におすすめの一本だ。

梅棒『超ピカイチ!』全日制ver.舞台写真_12

梅棒 9th“RE”ATTACK『超ピカイチ!』は、12月29日(土)まで東京・東京グローブ座にて上演。その後、2019年1月5日(土)・1月6日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて、1月9日(水)・1月10日(木)に愛知・アートピアホールにて上演。上演時間は2時間強を予定。

(取材・文/河野桃子)
(撮影/飯野高拓、赤坂久美、角田大樹)

 

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