『セールスマンの死』長塚圭史演出で“生きる”ことそのものと向き合う稽古場


アメリカ現代演劇の旗手と呼ばれるアーサー・ミラーの代表作『セールスマンの死』が、長塚圭史の演出で2018年11月3日(土・祝)より神奈川・KAAT神奈川芸術劇場にて上演される。その稽古の様子をとらえた写真と、出演者コメントが届いた。

『セールスマンの死』は、1949年に初演され、トニー賞ベスト・プレイ賞、ニューヨーク劇評家賞、ピューリッツァー賞などを受賞した作品。主人公ウィリー・ローマンの“死”に至る最後の2日間を描き、第二次世界大戦後に顕著になったアメリカ社会の“影”の部分を浮き彫りにしている。

『セールスマンの死』稽古場写真_2

【あらすじ】
舞台は1950年代前後のアメリカ。かつて敏腕セールスマンだった主人公ウィリー・ローマンは、60歳を過ぎ、仕事ではかつてのような精彩を欠き、二世の社長にはお荷物扱いされている。妻のリンダは夫を尊敬し献身的に支えているが、30歳を過ぎても自立出来ない二 人の息子たちとは過去のある事件により微妙な関係だ。セールスマンこそが夢を叶えるにふさわしい仕事だと信じてきたウィリーが、家族のため、そして自分のために選んだ道は・・・。

『セールスマンの死』稽古場写真_3

「いつかこれだけの戯曲と向き合える日があったら幸い」とコメントを寄せた長塚。夢見る心持ちでいた上演に向け、風間杜夫、片平なぎさをはじめ、山内圭哉、菅原永二、伊達暁、加藤啓、大谷亮介、村田雄浩といった出演者たちと共に、本作を家族それぞれの人生が凝縮された“群像劇”として打ち出す。

『セールスマンの死』稽古場写真_4

以下、長塚、風間、片平からのコメント全文を紹介。

◆長塚圭史(演出)
いつかこれだけの戯曲と向き合える日があったら幸い。69年前に書かれたとは思えない、その現代性に驚かされると共に、若い頃に読んだ時には主人公ウィリー・ローマンの物語だと思っていましたが、この作品はウィリー最後の2日間にローマ ン家の家族それぞれの人生が凝縮された群像劇であり、まさしく家族劇の金字塔です。「死」とは生きることそのもの。信じていたものが崩れる中でも必死に生きてきた、生きることにすさまじく向き合って きたウィリーとその家族の姿を描きたい。観る者誰しもが、この家族の物語に共感出来る、すべての人の心を動かす作品だと思います。

◆風間杜夫(ウィリー・ローマン役)
達成出来なかった夢を持つウィリー、親子の葛藤、男のプライドを色濃く出したい。インターネットが発達し、親子、友人同士の会話も減り、人間と人間が生でぶつかりあう場が少なくなった現代、人と人が正面から向き合って、感情をぶつけ合う大切さを見てほしい。自分が生まれた年に発表されたこの作品。自分の人生の様々な局面を思い出し、これまで生きてきた中での経験、記憶を引っ張り出して、実感を持って演じたいと思います。

◆片平なぎさ(妻/リンダ・ローマン役)
数十年間共に歩んできたウィリーの良さを分かっているリンダ、その気持ちを思うと、リンダの夫に対する愛情の深さはよく理解出来ます。とても素敵な女性で、ある意味理想の妻とも言えるけれど、夫の夢を妨げてしまったという負い目もある、複雑な心情を丁寧に演じ たいと思います。最初に読んだ時は、こんな気難しい夫にずっと愛情を注ぎ、献身的に尽くすのは難しいのでは、と思いましたが、風間さん演じるウィリーはかわいげがあってチャーミングで、風間さんのウィリーなら、心底愛し、妻として心を添わせることが出来ます。

『セールスマンの死』稽古場写真_5

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『セールスマンの死』は、11月3日(土・祝)から11月18日(日)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演される(11月3日・11月4日はプレビュー公演)。その後、愛知、兵庫を巡演。日程の詳細は、以下のとおり。

【神奈川公演】11月03日(土)~11月18日(日) KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【愛知公演】11月29日(木)・11月30日(金) 東海市芸術劇場 大ホール
【兵庫公演】12月8日(土)・12月9日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

(撮影/細野晋司)

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