市村正親&鹿賀丈史『生きる』開幕!クロサワ映画を日本発でミュージカル化


日本発のオリジナル新作ミュージカル『生きる』が、2018年10月8日(月・祝)に東京・TBS 赤坂ACTシアターにて開幕した。原作は、黒澤明監督が1952年に発表した同名映画。クロサワ映画初のミュージカル化を手掛けるのは、グラミー賞受賞の作曲家ジェイソン・ハウランド(音楽)、『アナと雪の女王』などのディズニー映画の訳詞で知られる高橋知伽江(脚本・歌詞)、宮本亜門(演出)といった面々。

役所の市民課に30年休まず勤め続ける渡辺課長は、早くに妻を亡くし息子夫婦と同居している。ある日胃がんが発覚し、自分の人生が残り少ないことを知った渡辺は、生まれて初めて自分の人生の意味を探し始める。映画で志村喬が演じた主役の市民課長・渡辺勘治役は、 ミュージカル界のレジェンド・市村正親と鹿賀丈史がWキャストで演じる。

開幕にあたり、演出の宮本、主演を務める市川と鹿賀よりコメントが届いた。

◆宮本亜門(演出)
黒澤映画をミュージカル化することは、あまりにも大胆かつ挑戦的で、プレッシャーを感じてきましたが、黒澤明さんの作品をリスペクトしながらも、新しいミュージカルに仕上がっています。この作品をいよいよお客様に届けられることにドキドキしています。皆様の温かい応援を受けて、日本発のオリジナルミュージカルが、いよいよ始まります!

◆市村正親(主演Wキャスト・渡辺勘治役)
皆の力が結集して、黒澤明監督の映画に負けない、ミュージカル『生きる』が出来上がったと感じています。舞台稽古でも、ご覧になったお客さんがたまらず感極まってくださっていたと聞いて、きっとうまくいっているんだなあと実感しました。最後まで演じきりたいと思っています。

◆鹿賀丈史(主演Wキャスト・渡辺勘治役)
非常に手ごたえを感じています。 今まで、自分のターニングポイントとなる作品にいくつか出会ってきましたが、この『生きる』という作品は、デビュー45周年を迎える今年、また自分を変えてくれそうな、素晴らしい作品になっており、幸せでいっぱいです。渡辺勘治役を、精一杯演じさせていただきたいです。

スタイリッシュな舞台セット、色鮮やかな衣裳の数々、ワルツから感動的なバラードまで多岐にわたるブロードウェイを彷彿させる音楽など、見どころはたくさんあるが、何と言ってもこの作品の魅力は、主役を演じる市村と鹿賀の存在感であろう。これまで『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』など海外で成功を収めたミュージカルのオリジナルキャストを務めてきた二人が、今回演じる渡辺勘治は、そのどの役とも違う。なぜなら渡辺は“どこにでもいる普通の日本人”だからである。

しかし二人が演じると、どこにでもいる日本人の渡辺が、チャーミングで魅力溢れる人間に見えるのは不思議だ。胃がん宣告を受け、絶望の淵から生きる希望を見つけ、残りの人生をかけて市民のために公園を作る男を、二人は全身全霊をかけて演じる。完成した公園のブランコで揺られるシーンは、涙なしでは見られない。

劇中で、渡辺勘治は3曲のビッグナンバーを歌うが、そのどれもが素晴らしく、胸を打つ。中でも渡辺勘治が「生きる」ことに目覚め、新たな自分を見つける一幕のラストナンバー「二度目の誕生日」は、ミュージカル史上に残る名曲になる予感がした。

新納慎也(鹿賀回)と小西遼生(市村回)がWキャストで演じる小説家役も、本作では重要な役どころだ。鹿賀と新納はミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』で長年に渡り共演しており、息もぴったり。新納が持つ狂気性とユーモアが、小説家のキャラクターに見事に活かされていた。市村と小西は今回が初共演となるが、お互いの個性を引き出す、見事なコンビネーションを見せてくれた。特に小説家が渡辺勘治に人生の楽しみを教える夜のシーンでは、小西の歌の力が空間を支配していた。

ミュージカル『生きる』舞台写真_8

今回、初めてミュージカルに挑戦している市原隼人の歌声に、きっと観客は驚くことだろう。勘治の息子・光男役の彼の歌は力強く、胸を打つ。ミュージカル『生きる』の物語は、勘治と光男の物語とも言える。自分を男手一人で育ててくれた父親とうまくコミュニケーションがとれない息子を、市原は繊細に演じていた。

勘治が生きる希望を見るけるきっかけを与える本作のヒロイン、小田切とよ役を演じるMay’nと唯月ふうかの二人もまた、素晴らしかった。普段は、歌手として世界中で活躍するMay’nは、歌声もさることながら、その演技力で観客を惹きつけていた。ミュージカル界のニューヒロインと呼ぶのにふさわしい堂々のミュージカルデビューではないだろうか。

すでに確かな実力で名を馳せている唯月だが、この小田切とよ役でさらに格段にステップアップした印象を受けた。とにかく歌唱力が圧倒的。『デスノートTHE MUSICAL』に引き続き、日本発のオリジナルミュージカルには欠かせない女優である。

ミュージカル『生きる』舞台写真_3

本作の特徴の一つに助役を演じる山西惇をはじめ、佐藤誓、重田千穂子など、普段はストレートプレイを中心に活躍する俳優陣が参加していることが挙げられる。時にはコミカルに、時にはシリアスに、その安定した演技力は観客に安心感を与え、このミュージカルを味わい深いものにしている。彼らの歌声には、ミュージカル俳優とは一味違う説得力があるように思えた。山西が二幕で歌うコミカルなナンバー「夢を見るのは愚かだ」は、笑い転げるそうになるほどおかしなシーンに仕上がっている。名優たちの奮闘にもぜひご注目いただきたい。

ミュージカル『生きる』舞台写真_4

ミュージカル『生きる』舞台写真_5

このミュージカルがこれほどのエンターテイメントに仕上がっているのは、間違いなく演出を手掛けた宮本の手腕だろう。黒澤明の『生きる』が、これほど楽しいミュージカルに生まれ変わることを誰が予想できるだろうか。これほどエネルギーを放つ舞台を他に知らない。 宮本自身 「いつか日本のミュージカルをブロードウェイで上演したい」と強く願うそのパワーがそのまま俳優に宿り、それが観客に伝わるのだろう。宮本の新たなる代表作と言っても過言ではない。

作品を観終え、「この作品はいつか世界中に知られるミュージカルになるかもしれない」という想いがよぎった。その世界初演を観たことは、のちに自慢できる日が来るかもしれない。 市村正親、鹿賀丈史、二人の俳優の生き様をぜひ生で感じて欲しい。上演時間は、約2時間15分(休憩込)を予定。

黒澤明没後20年記念作品 ダイワハウス presents ミュージカル『生きる』は、10月28日(日)まで東京・TBS 赤坂ACTシアターにて上演。

【あらすじ】
役所の市民課に30年勤める課長の渡辺勘治(市村・鹿賀/Wキャスト)は、まもなく定年を迎えようとする矢先に、当時は不治の病とされていた胃がんになり、余命わずかと知る。 時間が残されていないことを知った渡辺は、これまでの人生を考えて苦悩し、一時はやけ気味で夜の街を歩き、知り合った小説家(新納・小西/Wキャスト)と遊びまわるが、心はむなしいばかりで、息子の光男(市原)にも打ち明けられずにいた。そんな折に偶然街で出会った同僚の女性(May’n・唯月/Wキャスト)から刺激を受け、市民が求めていた公園の建設を成し遂げようと思い立つ。かけがえのない人生をどう「生きる」か・・・そこに込められた渡辺の夢とは・・・?

【公式HP】http://www.ikiru-musical.com/

(取材・文/オフィシャル支給、編集/エンタステージ編集部、写真/引地信彦)

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