二人で20役以上を演じ分け!『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!2018』鯨井康介&上口耕平ver.公演レポート


2017年に日本で初上演された『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!』が帰ってきた。2018年7月18日(水)に東京・新宿村LIVEで開幕した『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!2018』では、初演キャストの福井晶一原田優一ペアに加え、鯨井康介上口耕平ペアが加わり、Wキャストで上演されている。今回は、新キャストの鯨井&上口ペアの公演を取材した。

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アンソニー・キングとスコット・ブラウンによって誕生した本作。小規模なミュージカル・コメディとしては異例のヒットとなり、ニューヨーク、ソウル、パリなど世界6ヶ国で大ヒットした。日本版では、上演台本・訳詞・演出を板垣恭一、 音楽監督兼ピアノを桑原まこが手掛けている。

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登場人物はたった二人。一人は、作家のダグ・サイモン。もう一人は作曲家のバド・ダベンポート。二人は、あるミュージカルを一緒に作ったという。そのタイトルは、『グーテンバーグ!』。「グーテンバーグ」とは、活版印刷機を発明したとされるグーテンベルク(ドイツ語)の名前を英語読みにしたもの。

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互いを尊敬してやまない二人は、このミュージカルをブロードウェイで上演したい!と野望を持つが、実現するためのツテもお金もない。そこで、自腹で劇場を借り観客を集め、出資者を募る「バッカーズオーディション」を行うことに。何やら、客席にはブロードウェイの有名プロデューサーも数人紛れ込んでいるらしい。

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お金がない、ということで、舞台上に用意されているのは、ダンボール箱と椅子とわずかな小道具。そして、たくさんの帽子。物語には、数多くの人物が登場するが、帽子を駆使して、そのすべてを二人だけで演じ分けるのだという。

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ここで、劇中劇の物語の一部を紹介。舞台は中世ドイツの村、シュリマー。村の人々は、ほとんど文字が読めなかった。賢いグーテンバーグは、そんな村の人々の声を聞き、何かしなくてはと思案を巡らす。生業としていた葡萄搾りの過程の中で、偶然、印刷技術を発明することに成功する。しかし、印刷技術で聖書が広まることを良しとしない修道士が邪魔に入り・・・。

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おもしろいのは、この劇中劇を、観客に“解説しながら見せる”というところだ。ト書きを読み上げシーン説明し、観客の想像を煽りながら、一場終わるごとに物語の成り立ちについて、ダグとバドが教えてくれる。物語をどう受け取るかは観る人次第なのだが、一つの“作品”を仕上げる上で、作り手が何を考え、どういう意図を込めたのかを紐解くヒントが、“作品”の中で語られる。しかも、さりげなく風刺や現代社会への問題提起も含まれている。観終わると、観る前よりミュージカルへの意識が変わっているような、不思議な感覚が残るのだ。

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そして、何と言っても二人で20役の演じ分け!ダグ役の鯨井とバド役の上口は、主人公になったり、ヒロインになったり、女性になったり、悪い顔になったりと大忙しだが、生き生きと個々の登場人物をキャラ立ちさせ、鯨井はキレ、上口はまろやかさを含んだ歌声を存分に聞かせてくれる。

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また、劇中劇以外の部分では、漫才のような軽妙なやり取りも。ちょっと天然っぽい上口の言動にツッコまずにはいられない鯨井など、あくまでもダグとバドの会話なのだが、二人の素(?)が垣間見えるようで、リアルと演劇が交差する楽しさがあった。また、二人の経歴をよく知る人にとっては、クスッと笑ってしまうような台詞や演出も散りばめられている。一体どこまでが台本でどこまでがアドリブなのか、見返して確かめたくなってしまう。

『グーテンバーグ!』は、まだ誰も完成形を観たことがない舞台だ。観客は、悲劇的な面も喜劇的な面も、自由に想像し、“余白”を楽しむ。贅沢で豊かな、演劇の醍醐味が詰まっていると感じた。

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なお、福井&原田ペアと、鯨井&上口ペアでは、台本に変化が加えられており、それぞれの組で違った印象を抱く作りになっているという。鯨井&上口ペアのゲネプロ終了後、多く聞こえてきたのは「さわやか~!」という声だった。初演で高い評価を得た福井&原田ペアは、今回どんな仕上がりになっているのか・・・気になって仕方がない。どちらのバージョンにも出資したくなること請け合いだ。

『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!2018』は、7月29日(日)まで東京・新宿村LIVEにて上演。上演時間は約90分(途中15分の休憩あり)。

なお、各日にプロデューサー役として日替わりゲストが登場するほか、カーテンコールでは撮影OKタイムが設けられている。上演時間内は必ず携帯電話の音が鳴らないように注意しながら、ぜひご参加を。

【公式HP】https://www.gutenberg-jp.com/2018
【公式Twitter】@gutenberg_jp

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(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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