城田優、神田沙也加らが笑顔と涙!第43回菊田一夫演劇賞授賞式レポート


第43回菊田一夫演劇賞の授賞式が、2018年4月26日(木)に都内にて行われ、大賞を受賞したミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』の上演関係者一同を代表し、株式会社ホリプロよりファウンダー最高顧問・堀威夫と代表取締役社長・堀義貴、そして演劇賞を受賞した城田優、戸田恵子、神田沙也加、原田諒、特別賞を受賞した甲斐正人が登壇した。

菊田一夫演劇賞とは、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)に贈られる賞。

第43回菊田一夫演劇賞授賞式写真_2

大賞に輝いた『ビリー・エリオット』は、第25回読売演劇大賞の選考委員特別賞に続いての受賞となった。関係者を代表し堀威夫は、演劇と関わり合いを持ったきっかけは「榊原郁恵をアイドルからステップに進ませるために、マネジメントの一環で出会った『ピーターパン』でした」と振り返りながら、『ビリー・エリオット』について「私は、どちらかというと観客の一人という立ち位置でしたが、5人の子どもたちの公演をはじめ、一つの作品を7回観たのは初めての経験であり、どの回も毎回感動をいたしておりました。私自身は、芝居の世界とはやや距離を置いた形で芸能界に入りましたが、スタッフに恵まれ、歴史ある賞をいただけたことを恐縮に存じます。遅ればせながら、できるだけ多くの演劇を拝見し、業界の一員としていくらかでもお役に立てればと思います」と、今後の展望を語った。

なお、会場には、加藤航世、木村咲哉、前田晴翔、未来和樹、山城力らの姿も見え、今回は5人揃っての授賞式参加となった。公演で見せた表情から、また少し大人への階段を登った表情で会話をする姿に、5人の才能の輝ける未来を願った。

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続いて、ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』におけるチーチ役で演劇賞を受賞した城田は「正直、頭が真っ白になっています(笑)」と笑いながら、「まずは、チーチという役を通して、この栄誉ある賞をいただけたことに感謝すると共に、誇りに思います。何よりもこのチーチという役は、共演者の皆さん、スタッフの皆さん、関わるすべての皆さんが作ってくれたものだと思っています。舞台は、お客様の空気によって変わったり、仕上がりが全然違う、ナマモノです。なので、この喜びを、この作品に関わってくださったすべての皆さんと共有できたらいいなと思います」とコメント。

また、同役で初挑戦したタップダンスに心が折れかけながらも自分の限界を越えるべく取り組んだことを「アスリートに近い」と表現しつつ、「演劇は、競い合うというよりは、支え合って乗り越えていくというものだと思いますが、こうした賞をいただけたことで、一段階上がるというか、身の引き締まる思いがします。これからも、ミュージカルや歌を通して、エンターテインメントの力を信じる皆さんに、笑顔と元気を届けられたらと思います。この度は本当にありがとうございました。そして、皆様おめでとうございました!」と感謝を述べた。

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『Sing a Song』における三上あい子役の演技で受賞した戸田は、「栄えある賞をいただきまして、とても嬉しく、光栄に思っております。『Sing a Song』でやらせていただいた三上あい子という役は、歌手の淡谷のり子さんが、戦時中に行軍慰問をされていた数年間をモチーフにしたものでした。怒鳴っては歌い、わめいては歌い、泣いては歌いと、私にとって大変な役であり、戦争というものに真っ向から向きあった初めての役でした。ミュージカルとはまた違う難しさを感じながら、地方公演も含めた2ヶ月という長丁場を、若干ナーバスになりながら過ごしましたが、周囲の皆さんが本当に温かく支えてくださいまいた。(受賞は)皆さんのおかげ。生意気ですが、私からおめでとうございますとお伝えしたい気持ちでいっぱいです。この賞に恥じないよう、これからも地道に精進して参りたいと思います」とスピーチした。

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表彰の授与の段階から、感極まった様子を見せていた神田。「私はこのような場で簡潔にまとめることが得意ではないのですが、この場でお話させていただける機会は今日しかないと思いましたので、まとめてきました」と、思いを込めたスピーチ原稿を取り出した。

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その中で「初舞台から、作品ごとに演出や指導してくださる先生方のもと、必死にやっていたら、いつの間にか10年が経っていました。たった10年、尊敬する先輩方からしたらまだまだひよっこなのですが、一生懸命、ワラをも掴む気持ちで、一生懸命食らいついてきました。その間、この賞を受賞する同年代を見て、本当に羨ましく、この受賞は私にとって大きな目標の一つでした。誰かから決められたものではない、自分で選んだ道で、少しだけ自信と誇りを持てるような気がしています。それは、自力では絶対にできないことだったので、改めて公演を観に来てくださったお客様方、審査員の皆様方に感謝申し上げたいと思っております」と、時折こみ上げる涙を見せながら、読み上げる。

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また、受賞をもたらしたミュージカル『キューティ・ブロンド』について「日本初演となった『キューティ・ブロンド』に、惜しみない愛情と情熱と才能を注ぎ込んでくださったキャストの皆様、スタッフの皆様、プロデューサーの皆様。そして、『この作品を神田沙也加の代表作にしましょう』と言ってくださった演出家の上田一豪さん、ほか、この10年間導いてくださった皆様のおかげで今があり、感謝は言葉では到底表しきれません」と語り、「これから、携わる作品に誠心誠意向き合うことで、恩返しをさせていただきたいと思います。そしてまた、10年が経ちましたとお話できるように、長く役者でいられたらと願わずにはいられません。改めて精進してまいります。本日は本当にありがとうございました」と続け、最後は笑顔で終えた。

涙がこぼれそうな神田に、お祝いに駆けつけた共演者たちが声援を送り、授賞式を終えた神田がそこへ真っ先に駆け寄っていく姿が印象的だった。ミュージカル『キューティ・ブロンド』は、2019年に神田主演での再演されることが決定している。さらなる飛躍に期待したい。

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そして、宝塚歌劇団所属である脚本家・演出家の原田は「受賞を聞いた時は、本当に驚き、言葉が出ませんでした」と明かす。受賞大賞となった宝塚歌劇団のミュージカル『ベルリン、わが愛』ミュージカル『ドクトル・ジバゴ』の2作について「両方とも、宝塚とは相容れないものかもしれませんが、挑戦できたのは宝塚100年の歴史があったからだと思います。宝塚をお作りになった小林十三先生は、新しいことへのチャレンジを決して忘れない方でした。菊田一夫先生も、宝塚に人間ドラマを持ち込み、多くの作品を残されました。そんな小林イズムや、菊田先生の商業演劇での劇作家・演出家としてのあり方が、自分の血脈の中に流れていたとして、それが今回の作品に繋がったとしたら、すごく幸せに思います」と噛みしめた上で、「タカラジェンヌの皆さんは、ひたむきに努力することを惜しまない人たちです。彼女たちの汗と涙、いつも未熟な私を支えてくださいます先生方、共に戦い、励まし、がんばってくださる裏方の皆さん、そして舞台に足をお運びくださるお客様のおかげで、私は今、ここに立たせていただいております。これからもこの思いを忘れることなく、伝統と、チャレンジを忘れずに、ひたむきに努力して参りたいと思います」と決意を燃やしていた。

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特別賞は、永年の作曲及び音楽活動における功績に対して、甲斐に贈られた。「学生時代に、日本の演劇に活き活きとした音楽を提供できたら、この世界がもっともっと大発展するのではないかとという志を持ちまして、作曲家をはじめました。その帰結がミュージカル音楽となったわけですが、私たちを取り巻く音楽環境は、めざましく劇的に変化いていきました。その意味から、音楽の仲間と共にこの賞をいただきたいと思っています。今後はさらに新しい音楽作りに挑戦しつつ、後輩を育成していくことにも力を注いでいきたいと思います」と抱負を述べ、授賞式を締めた。

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