杉村春子賞は演出6年目の注目株シライケイタ!第25回読売演劇大賞贈賞式レポート<2>


2018年2月28日(水)に東京都内にて行われた「第25回読売演劇大賞贈賞式」。読売演劇大賞は、1年間(1月~12月)に国内で上演されたすべての演劇から、最も優れた作品、個人に贈賞される。大賞は、作品・男優・女優・演出家・スタッフの5部門の最優秀賞と、杉村春子賞の中から選考。

杉村春子賞とは、文学座の協力により、第6回から設けられた賞で、杉村春子の業績をたたえ、年間に活躍した新人(俳優、スタッフ問わず)を対象に選出される。昨年は、俳優の三浦春馬が受賞した。

今年、この賞に選出されたのは、演出家のシライケイタ。大学時代に教えを受けた蜷川幸雄に見出され『ロミオとジュリエット』で俳優デビュー、その後、2011年に劇団「温泉ドラゴン」で脚本・演出を始めた。演出家としてのキャリアをスタートして、わずか6年で頭角を表してきた“旬”の演劇人だ。今回は、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』『袴垂れはどこだ』の2作での功績をたたえ、受賞にいたった。

受賞の挨拶で、シライは「普段100人足らずの劇場で活動している身としては、小劇場で、お客様は少なくても、真摯に作品を作り続けていればこのように評価していただける、43歳でも新人賞をいただけるのだと、勇気をもらいました。また、演出家は一人では絶対に仕事ができません。(関わっていただいた)全員での受賞だと思っています」と感謝の意を述べた。

受賞のきっかけとなった2作品について「この2作品は、奇しくも革命というテーマで共通しています。世の中のあり方に疑問を持った若者たちが、自分たちの理想の世界を作ろうと立ち上がったお話です。その途中、彼らは殺人を犯します。僕は、殺人を決して肯定しません。けれど、彼らが平和と平等を旗印に蜂起した時の純粋な思いもまた、真実なのだと思っています」と言及。

そして「僕たちの稽古場は、彼らを理解しようとする稽古場でした。どちらも、僕の経験の中でもとりわけ激しく、俳優さんたちとぶつかり合った稽古場になりました。もう幕が開かないかもしれないと、何度も絶望しました。しかし、その絶望を乗り越えられたのは、言葉、対話の力でした。他者とのつながり合おうとするその行為は、他者を理解しようとする行為であり、他者の野目を持とうとする行為でした。そして、その行為こそが、未だ実現していない、(作品の中の)彼らが求めた理想の世界に近づくための唯一の手段なのではないかと、そんな思いをいだきながら稽古しました。僕は、武力と暴力を否定し続けます。そして、他社の目を持とうという努力をし続けます。つまり、これからも“演劇”を続けていこうと思います。それこそが、僕がこの二作品を演出させていただいた意味であると思うし、このように賞をもらう意義だと思っています」と熱く語った。

最後に、関係者、温泉ドラゴンのメンバー、両親、家族と名前を挙げながら「僕を演出家にしてくれてありがとう」と感謝の意を繰り返した。

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各賞の受賞者は、以下のとおり。

◆大賞・最優秀女優賞
宮沢りえ
『足跡姫~時代錯誤冬幽霊(ときあやまってふゆのゆうれい)~』『クヒオ大佐の妻』『ワーニャ伯父さん』の演技

◆最優秀作品賞
『子午線の祀り』(世田谷パブリックシアター)

◆最優秀男優賞
橋爪功
『謎の変奏曲』の演技

◆最優秀演出家賞
永井愛
『ザ・空気』の演出

◆最優秀スタッフ賞
土岐研一
『天の敵』『散歩する侵略者』の美術

◆杉村春子賞
シライケイタ
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』『袴垂れはどこだ』の演出

◆芸術栄誉賞
仲代達矢

◆選考委員特別賞
『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』

◆優秀作品賞
『ザ・空気』『怪人21面相』『屠殺人ブッチャー』

◆優秀男優賞
市村正親、佐川和正、佐藤誓、中村雀右衛門

◆優秀女優賞
新橋耐子、藤井由紀、森尾舞、若村麻由美

◆優秀演出家賞
小笠原響、小山ゆうな、日澤雄介、和田憲明

◆優秀スタッフ賞
鎌田朋子、塵芥、乘峯雅寛、前田文子

【選考委員(50音順)】
青井陽治(演出家、翻訳家、訳詞家、劇作家)
大笹吉雄(演劇評論家)
河合祥一郎(東京大学教授)
中井美穂(アナウンサー)
西堂行人(演劇評論家、明治学院大学教授)
前田清実(振付家、舞踊家)
みなもとごろう(演劇評論家、日本女子大学名誉教授)
矢野誠一(演劇・演芸評論家)
渡辺保(演劇評論家)

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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