劇プレ第2幕の“序章”!劇団プレステージ企画公演『あいつのチョキ』開幕


劇団プレステージ(以下、劇プレ)の企画公演『あいつのチョキ』が、2018年2月27日(火)に東京・千本桜ホールにて開幕した。本作は、劇プレリーダーの今井隆文を筆頭に、平均年齢32.8歳の劇団古参メンバー6名が集まり、劇プレの“始まりの地”とも言える東京・千本桜ホールで久しぶりに行う公演。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、今井のほか、小池惟紀、向野章太郎、長尾卓也、大村まなる、秀光が登壇した。

(以下、一部配役、ストーリーの内容に触れています)

会見では、思い出深いホールに戻ってきたことに対し大村が「我が家と言うよりも“おばあちゃんち”みたいな感覚かな」と発言すると、メンバー一同から「分かる」との声があがった。

『あいつのチョキ』02

今回、作・演出も担当する今井。今回の脚本の出来については「何度も目を通しては直して、皆と稽古して意見をもらっては直して、という作業を繰り返し行ったので、その分構成は上手くできたと思います」と自信をのぞかせた。また、見どころを問われると「長尾君次第で劇全体の見え方がだいぶ変わってくるところですね」とコメント。

『あいつのチョキ』03

小池は、ラッパーという役どころで、舞台上で見事なラップを披露した。これまでもラップを歌うことはあったものの「劇の中で役としてラップをすることに苦戦した」と小池。また、役と自身との年の差が1歳しかないこともあり「自分に当てはまることが結構あって、他人事とは思えないんです(笑)。刺さるシーンがいっぱいあります」と役に親近感を覚えている様子だった。

『あいつのチョキ』04

向野は「13年前に、右も左も分からないまま、このホールで劇プレとしての初めての舞台を上演したところから始まりました」と、これまでの歴史を振り返りながら「今回は今井を中心に、自分たちで一つの作品を作るために様々な努力しました。最初はどうなることかと思ったのですが、稽古を重ねていくうちにやっと一つのものになったかな、と思えました。この気持ちを忘れず、これからも続けていきたいと思います」と、劇プレへの熱い思いを言葉に乗せた。

『あいつのチョキ』05

長尾の役は、自身と同じ役者ということもあり「自分で言っていても突き刺さるような、嘘がない台詞がたくさんあります」と語る。また「今までの作品とは違う重みがあるなと感じています。色々な気持ちが、稽古をやるごとに深まっていきました」と、本作が劇プレの中でも特別な位置にあることも明かした。

『あいつのチョキ』06

「劇プレの第2幕じゃないですけど、ここからまた始まっていくような感覚の作品だと思っています」と言った大村は、「僕たちのリアルな部分や悩みを描いているので、そういう意味ではすごくいい作品ですし、新しいことが始まりそうな予感がするので、その第一歩を見に来ていただければと思います」と、意気込みを加えた。

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違う立場の人物ニ役を演じ分ける秀光。「長尾くんの話にもあったのですが、僕たちにとって遠くないストーリーで、自分たちに引っかかる言葉が多いですね。本当に辛いなと思いながらやるシーンも多かったですし、逆に子どもの頃こんなことがあったな、ということを思い出すような作品です」と稽古期間を振り返った。

『あいつのチョキ』08

本作の登場人物たちは、ひたすら部活に打ち込むような熱い10代や、恋に仕事に悩むような青臭さの残る20代ではなく、自分のこれからの人生を否が応でも考えなくてはいけない30代の男たち。“まだ30歳?もう30歳?”そんなジレンマが彼らに確実に忍び寄る。

その退路を断たれたような年齢の中でも夢を追い求める男たちは、これまで築いてきた経験や時間を今後どうしていくのか、決断が迫られることに。安定を求めた男も、やりたいことや夢が見つけられず、友人に夢を託しているだけだ。また周りの人間も、それぞれの人生を生きながら、彼らのことを時に助け、時に叱咤して成長の過程を見守る。

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そんな登場人物たちの口からこぼれるのは、夢、親友、未来といったまっすぐな言葉。大人になってから、人前で口に出すのをくすぐったく思ってしまうような言葉だが、それらが嘘偽りなく純粋に発せられる。

これについて向野が「そういう言葉を脚本に自然に書けるところが、今井のいいところなんじゃないかと思います」と称えると、今井は照れくさそうに「(思考が)子どもなんですよ」と返答。だが、その顔はほころんでおり、こういったささいなやり取りにも信頼関係に満ちた温かな空間が広がっていた。

『あいつのチョキ』10

やりたいことは、イコール夢なのか。そのために費やした時間や労力は、人生においてどんな意味を持つのか。観客は登場人物を通して、自分の過去と向き合うことになるだろう。心を抉られるようなテーマでありながらも、最後は今の自分を恥じずに“ここからだ”と思えるようなエネルギーを感じる舞台であった。

会見の最後には今井が「30歳を超えた方も、そうでない方もぶつかる問題点がいくつもあると思います。そういったものが描かれているので、そこを俯瞰で見て、考えていただけたら嬉しいです」とメッセージを送っていた。

また、劇プレのメンバーが公私ともに関わりを持っている山崎樹範と諏訪雅から、公演に向けてコメントが届いている。

◆山崎樹範
劇団プレステージ座長の今井くんとは長い付き合いです。大人になるとそう簡単に友達なんてできない。今井君は数少ない大人になってからの友達です。そして尊敬しています。劇団を守っていくのは計り知れない苦労があります。カムカムミニキーナの劇団員として座長を見てきたからよく分かるのです。とてもじゃないが私には出来ません。そして今井くんは結婚しました。おめでとう!お会いしたことがありますが、とても可愛い奥様。長く彼を支えてくれている。最近は今井君をテレビで観る機会も増えた。私よりもたくさん出ている。
・・・くそっ!だんだん腹立ってきた。あいつ波にのってるじゃねぇか!?こけろ!『あいつのチョキ』こけろ!!でも、どうせおもしろいんだろうなぁ。劇団プレステージはいつもおもしろい。男しかいないのを逆手にとって自由に遊んでいる。男子のバカバカしさを存分に描きつつ、切なさやいとおしさを照れのオブラートに包みながら表現してくれる。すべての女子に観てほしい。彼らの芝居こそが男子のありのままです。男ってバカだけど、捨てたもんじゃないなと必ず思っていただけるはずです。私も今から観に行くのが楽しみです。
最後に業務連絡です。劇団プレステージ最年長の向野章太郎さん、あなたこそそろそろ素敵な相手を見つけて落ち着いてください。以上、山崎樹範略してやましげでした!

◆諏訪雅
今井くんとはなんだかんだで7回くらい舞台の共演をさせてもらってまして、僕のことを劇の先輩として慕ってくれたり、毛髪の量で愉快な気分にさせてくれたり、高い声で慰めてくれたり、人一倍の努力で引っ張ってくれたり、不気味な顔面で愚痴を受け止めてくれたり、長めの指で宣伝ツイートをリツイートしてくれたり、全身から”優しい”が漏れ出てる男だなあと感じています。『あいつのチョキ』もきっと”優しい”が漏れまくったチョキになってると思うので、そのチョキに目潰しされる覚悟で劇場に行こうと思ってます!

劇団プレステージ企画公演『あいつのチョキ』は、3月6日(火)まで東京・千本桜ホールにて上演。なお、毎公演当日券も発売される。

『あいつのチョキ』囲み

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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