柚希礼音が魅せるマタ・ハリのすべて!ミュージカル『マタ・ハリ』東京公演開幕


2018年1月の大阪公演を経て、2月3日(土)に東京・東京国際フォーラム ホールCにて、ミュージカル『マタ・ハリ』が開幕した。本作は『スカーレット・ピンパーネル』『ジキル&ハイド』などの作曲で知られるフランク・ワイルドホーンが手掛けた最新作。主人公マタ・ハリを柚希礼音が、マタ・ハリの運命を変える男、アルマンとラドゥーを日替わりで加藤和樹が演じる。初日前日に行われた公開ゲネプロの模様をレポートする。

2016年に韓国で世界初演され、日本版として新たに生まれ変わった本作は『ボニー&クライド』『デスノート the Musical』でワイルドホーンとタッグを組んだアイヴァン・メンチェルが脚本を担当し、石丸さち子が演出を務めている。

【あらすじ】
時代は第一次世界大戦下のヨーロッパ。オリエンタルな魅力と妖艶かつ力強いダンスでパリ市民の心をつかんで離さないダンサー、マタ・ハリは、ヨーロッパ中の人気を博し、戦時下であっても各国を移動できる自由を手にしていた。そこに目をつけたフランス諜報局・ラドゥーが彼女にフランスのスパイとして活動することを要求する。断れば彼女がひた隠しにしている秘密を明るみにするとほのめかしながら・・・。

同じ頃、マタは戦闘パイロットのアルマンと運命の出会いを果たす。アルマンの存在にマタの孤独だった心は揺れ、普通の女性としての愛に目覚める。一方、ラドゥーの執拗な要求は続き、やむなく一度だけスパイ活動をすることを決めたマタ。公演旅行でベルリンへ向かい、ドイツ将校ヴォン・ビッシングの自宅で、任務を無事遂行する。だが、フランスとドイツそれぞれの思惑が、アルマンへの愛に目覚めたマタの運命を大きく歪めようとしていた・・・。

公開ゲネプロでは、アルマン役を加藤が、ラドゥー役をWキャストの佐藤隆紀(LE VELVETS)が、戦闘パイロットのピエール役をWキャストの西川大貴がそれぞれ演じた。

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柚希が演じるマタは、一人で強く立ち、しなやかな強さ、そして世の男性を魅了する妖艶さを見せつけた。ソロで見せるダンスは、マタの楽屋に置いてあるシヴァ神の像が形作る神々しさそのものだ。やむなくスパイ活動をはじまることになるマタだが、緊張感をみなぎらせつつも、やはりどこかにしたたかな強さを感じさせる。ところが、アルマンと出会ってからのマタは、一転してキュートで可憐なごく普通の女性へと変貌。柚希は、一人の女性の心情変化を確かな歌声でドラマティックに表現した。

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元宝塚歌劇団のトップスターとして頂点を極め、退団後、女優として開花していく柚希。今回の『マタ・ハリ』は、今の柚希だからこそ描けるマタ・ハリになっているように思う。官能的な要素とイノセンスの同居、ただ一つ真実の愛を求める寂しさと相反する圧倒的なスター性・・・。マタ・ハリという時代と運命に翻弄された一人の女性が、柚希という唯一無二の表現者を通して、多面的に映し出されていた。Wキャストの変化でも、また違ったマタ・ハリの顔が見えてきそうである。

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この日、アルマン役を演じた加藤は、ある秘密を抱えつつも、マタを愛と優しさで包みこむ。自らと共に最前線に送られ、恐怖を隠し切れない若き部下に対しても、上官というよりは兄貴のように接する様を見せていた。こんな男性を演じる加藤が、アルマンとは真逆の冷酷非道なラドゥー役をいかに演じているのか、非常に気になるところだ。

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ラドゥー役の佐藤は、「国家のため」と言い放ちマタに堂々とスパイ行為を促す。その太く深く安定感のあるテノールが響く度に、ラドゥーを憎く感じながらも抵抗できない無力感を抱かずにいられない。まさに「支配する側」としての存在を演じきっていた。だが、その一方で、マタに惹かれている自分を認めたくないと苦悩する弱さ、脆さも見せる。

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本作の中で、物語と共に注目したいのがステージ上の空間の使い方と照明効果。マタの自宅の場面では、かなり高い位置に櫓を組んだことで、屋上から見るパリの街並みや日の出の美しさを、まるでマタやアルマンと共に見つめているような幸福感を感じさせた。一方、最前線から敵地に向けて飛び立とうとするアルマンたちの心情を表すようなトリコロールの光は、美しさと共に戦争に対する恐怖をも伝えてくるよう。

柚希、加藤、佐藤、西川のほか、東啓介(Wキャスト)、百名ヒロキ(西川とWキャスト)、和音美桜、栗原英雄、福井晶一 ほかが出演。

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ミュージカル『マタ・ハリ』は、2月18日(日)まで東京・東京国際フォーラム ホールCにて上演。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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