松雪泰子らが女性小説家の心の闇を見つめる!舞台『この熱き私の激情』開幕


2017年11月4日(土)に東京・天王洲 銀河劇場にて、舞台『この熱き私の激情~それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』が開幕した。本作はカナダの小説家ネリー・アルカンの作品をもとに、女優・演出家であるマリー・ブラッサールの翻案・演出で生み出されたもの。本作に出演する松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、奥野美和、霧矢大夢がブラッサールと共に会見に臨み、上演内容の一部を公開した。

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舞台上には10個のキューブが組み立てられている。6人の女優は各部屋に一人ずつ入っているのだが、互いの姿は見えないため、イヤーモニターから聞こえる音声だけを頼りに演じることになる。また、客席側にはガラスがはめ込まれており、キャストからは鏡のように見えるため、部屋の外の様子もよく見えない構造となっているらしい。

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「影の部屋」には松雪、「天空の部屋」には小島、「神秘の部屋」には初音、「ヘビの部屋」には宮本、「幻想の部屋」には芹那、そして「血の部屋」には霧矢が入り、「失われた部屋」を担当する奥野だけは、唯一各部屋を行き来する。何とも美しく、だが、行き場のない閉塞感を感じさせるセットに息を呑んだ。

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部屋に入った女たちは、娼婦として、女として感じる様々なキーワードを呟きながらやがて死について語り続ける。それはまるで、36歳で自らこの世を去ったネリー自身の魂の叫びのよう。

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会見ではブラッサールが、この作品の上演について「素晴らしい女優の皆さんとダンサーの奥野さんと、ネリー・アルカンへのオマージュを形にした作品を皆さまにお見せできることが嬉しいです」と語り、特殊なセットで稽古を続けた女優たちに「皆さんに、耳だけを頼りにすばらしいアンサンブルを作っていただきました。演出家とは、パフォーマーがより深く演じるためのお手伝いをするための仕事なんだと改めて実感しました」と6人のキャストを賞賛した。

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さらにブラッサールは「この作品では、現代社会におけるプレッシャーを提示しています。メディアから与えられるプレッシャーや、自分以上の何かにならないといけないというプレッシャー・・・それは世界共通、男女を問わないものだと思います。お客様にはぜひこの作品を観て、闇ではなく光を持ち帰っていただきたいです」とメッセージを送った。

以下、キャストの挨拶を紹介しよう。

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◆松雪泰子(影の部屋の女)
ネリーの小説「Putain (「邦題:キスだけはやめて」)」を読んだのですが、あまりにネリーの痛みが痛すぎて・・・私の部屋は死の直前を意味する部屋なので、死に向かっていく彼女の精神状態を考察し想像していくと、自分の中にある潜在的な痛みと彼女の痛みとヒットする瞬間があり、身動きが取れなくなることもありました。イヤーモニターだけで繋がっている私たちが個々に演じていることをバトンのように次の人に渡していき、最後は一つの舞台に見えるようにしていきたいです。緊張感を持って、いい作品になるよう演じたいです。

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◆小島聖(天空の部屋の女)
これだけすばらしい方々とご一緒しているのに、(稽古では)まったく顔が見えず、声だけの交流しかないというのもなかなかセクシーだなと感じていました(笑)。マリーさんには言葉と身体との繋がりを大切に、と言われました。言葉を信じて動くより、単純に動いたほうが楽なんですが、それをしないというのは大変でしたね。

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◆初音映莉子(神秘の部屋の女)
ネリーの36年の人生がなかったら、自分はここにいないと思います。ネリーが書いた本を読んで彼女の痛みが自分にもグサグサッと刺さって泣いてしまうこともありました。彼女の悩みと対峙することが痛かったです。彼女の人生が自分に与えてくれたこと、マリーとマリーの周りのカナダ人のチーム、日本人のスタッフ、そしてすばらしい共演者と出会えたことを感謝しながらネリーの魂を自分の中にぐっと込めて演じたいと思います。

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◆宮本裕子(ヘビの部屋の女)
稽古があっという間で稽古場から去りたくないという思いがとても強く、マリーをはじめスタッフの方たち、キャストの方たちと楽しくやることができました。ただ自分としてはこんなに苦しくガツンときた稽古は久しぶりでした。製作発表の時、マリーの演出は「真綿で首を絞めるような感じ」と例えたのですが、いざ稽古が進むと真綿に水が含まれていて時々キュッを締められるような感覚でした(笑)。自分の役者人生をも破壊されかねないくらいの衝撃でした。

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◆芦那すみれ(幻想の部屋の女)
マリーやスタッフ、キャストの方々と楽しく稽古ができました。今日からが本番ですが、楽しむ気持ちも忘れずにやっていけたらなと思っています。お客様にはこの舞台で何かを感じて帰っていただけたら嬉しいです。

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◆奥野美和(失われた部屋の女)
私にとって演劇作品に出演するのが初めてで、それが稽古の中でいちばんの課題でした。今日の初日を迎えるまで、スタッフやキャストの皆さまたちにアドバイスをいただいて、出来立てほやほやの舞台でもあります。一回一回、集中した濃い時間を過ごして、演劇とダンスの身体表現・・・私にとってすごく難しかったことなのですが、ここでしっかり習得していきたいです。

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◆霧矢大夢(血の部屋の女)
部屋の中から出ないで(共演する)皆さまの呼吸を感じること、個々のようで同じ空気を感じなければならない、という演劇手法が初めてで難しかったです。いまだに課題です。ネリーの心の闇や怒りにより深く探求することで、自分自身も闇に落ちそうになるのですが、マリーが言ったとおり、闇を光に変えられるようにしたいです。初日を迎えるこの瞬間も怖いという気持ちもありますが、お客様のパワーを自分の力に変えて、ネリーの世界を伝えていきたいです。

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『この熱き私の激情』それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』は11月19日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて上演。その後、広島、福岡、京都、愛知を巡演する。日程は以下のとおり。

【東京公演】11月4日(土)~11月19日(日)天王洲 銀河劇場
【広島公演】11月23日(木・祝)JMSアステールプラザ 大ホール
【福岡公演】11月25日(土)・11月26日(日)北九州芸術劇場 中劇場
【京都公演】12月5日(火)・12月6日(水)ロームシアター京都 サウスホール
【愛知公演】12月9日(土)・12月10日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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