前田航基、原嶋元久らで『ポセイドンの牙』Version蛤として再演!寓話的な物語に込められたメッセージとは


2017年10月13日(金)に東京・紀伊國屋ホールにて、舞台『ポセイドンの牙』Version蛤が開幕した。本作は、舞台芸術集団地下空港の主宰を務める伊藤靖朗の作品で、2016年5月に初演。今回、サブタイトルを「Version蛤」として再演に臨む。初日前には公開ゲネプロが行われ、出演する前田航基、原嶋元久、小早川俊輔、小松準弥、森田桐矢、山下聖菜、森山栄治、汐崎アイル、渡辺和貴、西丸優子、愛原実花、岡田達也(演劇集団キャラメルボックス)、作・演出の伊藤が登壇し、意気込みを語った。

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物語の舞台は、架空の海洋都市ナカツ県乙亀(オトガメ)市。水産高校に通う陽気でバカな男子高校生「スイサンズ」は、ある日自治体の資金難から母校が防衛人材育成高校、しかも男子校に変わってしまうという話を聞く。海と女子と夢と女子を愛するスイサンズは、それを阻止するべく、乙亀市海外のスニオ岬の海底に沈むと伝わる「黄金の釣針」を手に入れようと画策。しかし、機を同じくして、海底に沈む太古の神々もその「黄金の釣針」を巡り動き出していた―。

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怪物と宝物の争奪戦を繰り広げる男子高校生「スイサンズ」のリーダー的存在・須長宇宙期(すながそらき)役は、兄弟お笑いコンビ「まえだまえだ」の兄としても知られる前田が務める。前田はこれがお笑い以外初の舞台出演。

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そして、親が牧師のインテリ・道井麿多井(みちいまたい)役は原嶋が続投。貝類オタクの葛崎賢人(くずさきけんと)役は小早川、エロで頭がいっぱいの生方英(なめかたすぐる)役は小松、スイサンズの筆頭バカ萩原安打尊(はぎわらあんだそん)役は森田が新キャストとして演じる。

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高校生たちの冒険譚であるが、物語の根底にあるテーマには、非常に鋭い視点で描かれている。初演に比べ、より一層深い切り込み方をしてきた印象だ。大きな流れは変わらないが、細かなブラッシュアップは、この1年急速に変化する現実世界とリンクした焦燥感に駆られ、その鋭さを寓話的要素で包み“演劇”という手法で届けようとする伊藤の思いを感じた。

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とは言っても、非常にエンターテインメント性にも富んでいる。高校生たちのしょうもないやりとりや、海神ポセイドン(岡田)とその妻アムピトリテ(西丸・初演より続投)の攻防には笑ってしまうし、スイサンズの憧れである寅一知花(山下)の武闘派な一面、堅物かと思ったらなかなかぶっ飛んだ発想をする豊玉エリー先生(愛原)の行動には驚かされる。

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外資系エリート・岸部秀夫(渡辺・初演より続投)の企み、深海の使者ドローナ(森山)とカルナ(汐崎)の不穏な動きで、陸の上も海の中も大混乱!想像力が世界を広げ、いつしか巻き込まれていく。

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ゲネプロ終了後の会見で、主演の前田は「『まえだまえだ』というお笑いコンビで舞台には上がらせていただいていたんですけど、それとはまた違う、2時間板の上に立ち続けるという重みやクイックな反応が返ってくる楽しさを感じています」と、すっかり舞台に魅せられていると明かした。

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初演からの続投キャストとなる原嶋は「キャストが変わったことで、作品に流れる空気感がまた少し違う感じになっています。(続投する自分にとって)パラレルワールドに来たような、こういう『ポセイドンの牙』もあるんだなと実感しています」と不思議な感覚を味わっている様子。きっと、初演を観た方も同じように感じ、新たな楽しみ方ができるだろう。

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岡田は伊藤作品への印象について「誤解なく受け取っていただきたいんですけど・・・基本的に作家さんとか演出家さんって、普通の人はいないと言っても過言ではないぐらい変な人が多いんです(笑)」と語る。そして、稽古中のダメ出しの最中、伊藤が言葉を止め、自身の目の前でさかんに手を振る謎(?)の動きを繰り返していたことを明かし、「演出家さんが踊りだした!?ってびっくりして(笑)。きっと、ご本人の中では全体の動きや導線などを整理されていたんでしょうね。だんだんと伊藤さんのことを分かっていくうちに、描きたい世界観もちゃんと見えてきて、大変おもしろく稽古をさせていただきました」と振り返った。

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岡田の言葉に照れ笑いしつつ、伊藤は「作家として物語を届ける中で、この時代に対して“願い”をぶつけていきたいという気持ちを強く持っています。この『Version蛤』では、この作品自体がもう一歩、お客さんの方に進んでいくことを選びました。(今の社会に対し)それぐらいしないと“間に合わない”というような強い危機感を持って、この作品に臨んでいます」と作品に込めた強い意思を語った。

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以下、各出演者のコメントを紹介。

◆前田航基
初めて本読みをしたのが1ヶ月前。早いもので、あっという間に時間が過ぎてしまいました。初めての舞台ということで、皆さんにご迷惑をおかけすることもあったと思いますが、僕を諦めることなく、あたたかく見守ってくださった皆さんに応えられる公演にできるように、そして、お客さんにも僕たちのエネルギーやメッセージをしっかり持って帰ってもらえるように、がんばりたいなと思っております。最後まで応援よろしくお願いいたします。

◆原嶋元久
続投ということで、新しい役の側面を見せたり、主演の航基を支え「スイサンズ」として作品を盛り上げたりしていけるように、一生懸命がんばりたいと思います。

◆小早川俊輔
毎日この作品の深さを感じて、お客さんに楽しんでもらうためにやっていきたいと思います。それから、僕、昨日(初日前日)が24歳の誕生日だったんですが、バチバチやっていきたいと思います!よろしくお願いします!

◆小松準弥
僕が演じる役は、「エロい、チャラい、バカ」という三拍子が揃っています(笑)。思春期もびっくりするぐらい、男子高校生に詰まっているものが全部煮詰まっていますが、男子校化阻止のため!女子を求めて!パワフルに冒険したいと思います。

◆森田桐矢
(小松に)バカを取られちゃいましたが(笑)。バカの役として、バカなりのパワーで「スイサンズ」を盛り上げて、あっという間の2時間だったと思えるような作品にしたいと思います!

◆山下聖菜
今回、唯一ちゃんと戦う役をいただいていまして(笑)。周りとのコントラストを出していけたらいいなと思っております。

◆森山栄治
久しぶりにごっついメイクをさせていただいておりますので、このメイクに負けない芝居をしていきたいと思います!

◆汐崎アイル
素敵な相方の森山さん、対する素敵な先輩岡田さん、そして、座長として前田さんという推進力を持った方が前を走ってくださっているので、(座組みの)一員として一緒に走っていけたらと思います。私ごとですが“楽しんでいる人間を観るのは楽しい”ものだと思います。楽しいだけの作品ではありませんが、作品の奥底にあるものを噛み締めながら、お客さんにもそれを味わっていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

◆渡辺和貴
本番に入ってからも、役としての“正義と愛”を追求していきたいと思います。

◆西丸優子
女王様の役なので、威厳を持ってやれたらと思いつつ、重いテーマの中、コミカルな要素で皆様に楽しんでいただける部分を作れたらと思っています。一回一回、丁寧に取り組んでいきたいと思います。

◆愛原実花
キャスト、スタッフ、皆様の力強いパワーと瑞々しさに、稽古場から毎日勉強させていただきました。千秋楽までがんばりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

◆岡田達也
非常にしっかりとしたテーマで、少し重たいものが根底に流れている作品なんですが、それでも我々がやっていることはエンターテインメントです。この芝居を楽しく見ていただけたらなと思っています。

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これから公演を観に行かれる方は、ぜひ、お早めに劇場で席に着いて、開演を待ってほしい。

舞台『ポセイドンの牙』Version蛤は、10月13日(金)から10月21日(土)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。

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(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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