女流作家ネリー・アルカンの心の叫びを松雪泰子ら7人の女性たちが描き出す『この熱き私の激情』製作発表


1973年生まれのネリー・アルカンは、2001年に才気溢れる自伝的小説「ピュタン-偽りのセックスにまみれながら真の愛を求め続けた彼女の告白-」で衝撃的な作家デビューを果たし、女子大生娼婦の苦痛に満ちた心の叫びを描いた内容と、ネリー本人の金髪に青い目という美貌で、一躍フランス語圏の文壇の寵児となった。それでも彼女の苦悩は終わることなく、わずか36歳で自ら命を絶ってしまう。

舞台『この熱き私の激情~それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』は、女優であり演出家のマリー・ブラッサールが、ネリーの遺した「Putain」「Folle(狂った女性の意)」「Burqa de chair(肉のブルカの意)」「L’enfant dans le miroir(鏡の中の子ども)」一部で構成し、2013年にモントリオールで上演され大成功を収めた。

ネリー・アルカン肖像
(C)Ulf Andersen/Getty Images

2017年秋、「Discover Nelly Arkan-ネリーを探して-」と銘打った企画で、9月末に彼女のデビュー作が「ピュタン-偽りのセックスにまみれながら真の愛を求め続けた彼女の告白-(旧邦題:キスだけはやめて)」として新訳で発売され、10月には彼女の半生を描いた映画「ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で」(原題:Nelly)が公開。そして、11月には日本人キャストで舞台上演される。

10月2日(月)には、この「Discover Nelly Arkan-ネリーを探して-」プロジェクト発表会見が行われ、出演する松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、霧矢大夢、ダンサーの奥野美和、翻案・演出のマリー・ブラッサール、書籍「ピュタン」翻訳と映画の字幕監修を手掛けた松本百合子が登壇した。

『この熱き私の激情』製作発表_2

作品について、まず松雪は「一つ一つ綿密に繊細に作り上げていくため、非常に集中力が必要になる作品です」と述べた。ネリーについては「彼女の持つ言葉はすごく深くて、突き刺さってくるものが多いんですね。死を選んでしまいましたが、本当はそうではなく『理想の世界で生きたかった』という想いが痛いほど伝わってきて・・・一言で言うなら“崇高な光の中に存在する混沌”というイメージです」と語った。

本作では、モントリオール初演時と同じく、上下に2層、横に5つに仕切られた10部屋が舞台上に設けられる。女優たちはそれぞれ与えられた自分の部屋から出られず、互いを見ることもできない。

松雪がいるのは、死の魅力を語る「影の部屋」。そして、宇宙・星・自然について語る「天空の部屋」には小島、信仰と狂気について語る「ヘビの部屋」には宮本、運命とジャンルの混乱について語る「神秘の部屋」には初音、幻想・イメージと肉体について語る「幻想の部屋」には芦名、家族の絆と血縁について語る「血の部屋」には霧矢が入る。そして、これらの女性たちを結びつけていくのが現実的な部屋を持たない奥野の存在だ。

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この特異な舞台セットについて、小島は「これだけ人と会話をしない舞台というのは初めての経験なので、これからどんな舞台が出来上がっていくんだろうとワクワクしています」と期待に胸をふくらませる。その言葉に、松雪も「部屋は別々だけれど全員で合わせなければならないパートもあるので、信頼関係がすごく大事になりますね」と頷いていた。

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宮本は「一生のうち何回巡り会えるかという作品であり、役だと思っています」と強い思いを口にしつつ、始まったばかりの稽古の様子を聞かれると「真綿で首を絞められるような苦しみを味わっているのですが・・・(笑)」とぽつり。産みの苦しみを感じさせる言葉に、周囲からは笑いが巻き起こった。

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そんなブラッサールの演出に「毎日、一瞬一瞬を大事に、いろんなことを吸収して頑張っている最中です」という初音は、さらに「この美しい女性たち、とても強い俳優たちの中で、役者として自分がどれだけ成長できるか」と、作品に向かう強い気持ちをうかがわせた。

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これが2回目の舞台出演となる芦那も「先輩方の胸を借りて、ちゃんと自分も成長しながら絶対良い舞台にしていきたいと思います」と意気込み、普段コンテンポラリーダンサーとして活動する奥野は「女優さんたちとのご一緒する舞台が初めてなので、とても新鮮です」とコメントした。

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霧矢は、作品を通し「ある部分ですごく強い女性」とネリーを評し、「自らの思いに強く囚われてしまって、そこから逃れられずに、結局自分で命を絶ってしまう女性ではありますが、その中にあるパワフルさ、タフさのようなものを出していきたいです」と、演技構想を明かした。

美貌も成功も名声も手にしながら苦悩の中で命を絶ったネリー・アルカン。その心の叫びを7人の女性がどんな風に描き出してくれるのか。

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演出のブラッサールは「観客がこの舞台を見て他者の痛みや疑問を目にし、また体験し、ネリーに対しても、また女性であることに対しても、思いやりや親しみの気持ちを感じていただけたら嬉しく思う」と語っている。

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PARCO Production『この熱き私の激情~それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』は、11月4日(土)から11月19日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。その後、広島、北九州、京都、豊橋を巡演。日程の詳細は、以下のとおり。

【東京公演】11月4日(土)~11月19日(日) 天王洲 銀河劇場
【広島公演】11月23日(木・祝) アステールプラザ広島 大ホール
【福岡公演】11月25日(土)・11月26日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
【京都公演】12月5日(火)・12月6日(水) ロームシアター京都 サウスホール
【愛知公演】12月9日(土)・12月10日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール

『この熱き私の激情』ビジュアル

(取材・文・撮影/月島由美)

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