成河、ミムラ、加藤諒らが14年ぶり呼び起こす想像の先の恐怖『人間風車』レポート


2017年9月28日(木)より東京・東京芸術劇場 プレイハウスで上演されているPARCO&CUBE 20th. Present『人間風車』。本作は、1997年に後藤ひろひとが劇団「遊気舎」へ書き下ろし、初演された作品で、パルコ劇場で2000年、2003年とG2演出で再演されてきた。14年の時を経て上演される今回は、演出に河原雅彦を迎え、新版として上演。その公開ゲネプロの模様をレポートする。

今回の出演者には、会話劇からミュージカルまで幅広い作品で活躍を見せる成河をはじめ、ミムラ、加藤諒、矢崎広、松田凌、今野浩喜、菊池明明、川村紗也、山本圭祐、小松利昌、佐藤真弓、堀部圭亮、良知真次という、個性豊かな顔ぶれが揃った。

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【あらすじ】
売れない童話作家の平川(成河)は、則明(松田)をはじめ、公園に集まる近所の子どもたちを相手に自作の童話を聞かせている。子どもたちは大はしゃぎだが、登場人物や題名がすべてレスラーの名前だったり、「三流大学出身より高卒の方がまし」といったテーマだったりと、奇想天外な内容のため、親たちからはよく思われていない。そんな中、平川は子どもたちと共に自分の話に耳を傾ける奇妙な青年・サム(加藤)の存在に気づく。

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友人の童話作家・国尾(良知)から作品を発表するようにアドバイスを受けるが、へんてこな話を作り続ける平川。ある日、どうしても金の工面ができなくなり、大学時代の友人でTV局のディレクターをやっている小杉(矢崎)に金を借りに行ったところで、ひょんなことからタレントのアキラ(ミムラ)と出会う。アキラとの出会いは、平川の書く童話に大きな変化をもたらしていくのだが・・・。

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主人公の平川は一見さえないダメ男。しかし、童話作家らしい純朴さと、想像力あふれる“語り”の強さを持ち合わせている。成河が演じる、この“語り”が強烈だ。歌うわけでもない、踊るわけでもない。成河は、自身の持つ持つ豊かな表現力を存分に発揮して、物語を動かしていく。

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これが2作目の舞台出演となるミムラは、仕事に恵まれないながらも明るく打ち込む一方、その笑顔にどこか陰りを見せるアキラ役を好演。ミムラ自身の持つ透明感が、ますます役の抱える内面を際立たせているように感じられた。

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そして、謎の青年・サムを演じる加藤は、舞台に現れただけで異質さを放つ。かわいらしくもあり、不気味さもあるその佇まいは、唯一無二の存在感だ。サムは一体どんな青年なのか・・・。そのすべてに注目してもらいたい。

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また、平川を取り巻く友人を演じる良知と矢崎は、ファンタジックな童話の世界とはかけ離れた偽善や狡猾さなどを垣間見せる。それは、松田たちが演じる子どもの持つ純真さと相反して、大人だからこそ持ち得る負の部分としてのエッジを立てる。

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舞台中央は回り舞台となっており、本のページをめくるように、回転する度に物語の違う表情を見せていく。物語と現実、交錯する世界の中で、俳優たちは複数の役を演じ分ける。カラフルなセットの中で、貴族になったり、戦士になったり、妖精になったり。想像の世界はとても楽しく、自由だ。一方で、確実に忍び寄る恐怖の瞬間。河原の演出は、ジェットコースターのような戯曲の魅力を、コミカルかつギラギラに引き上げてきた。G2演出をご存知の方は、その違いも楽しみの一つになるのではないだろうか。

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ゲネプロ前には、成河、ミムラ、加藤、矢崎、松田、良知が囲み会見に登壇し、意気込みを語った。まず、成河が「“現代劇”として14年のブランクをどう埋めるのか、後藤さんを含めて話し合い、稽古をしてきました。今を生きる僕たち、そしてお客さんにとって嘘がないこと。そうすれば、この作品が持つ普遍的な本質に近づいていけるのではないかと思います」と熱い言葉で挨拶。

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普段はTVを主戦場とするミムラは、舞台の楽しさを「(TVと違って)同じことを何回もできる楽しさがあります。それから、(一つの作品で)複数の役を演じるが初めてなんですが、いつかやってみたかったので嬉しいです」と、笑顔いっぱいに語った。

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物語の行方の鍵を握る加藤は「今まで演じた役は(芝居の)“受け”が多かったんですが、今回は攻めて、攻めて、攻めていくぞ!という感じです(笑)」と“攻め”の姿勢をアピール。すると、矢崎から「諒くんは稽古着から攻めていたよね」という一言が。「そこ?!」と目を見張る加藤に、周囲からは「攻め間違えてる(笑)!」と笑いが沸き起こった。

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また、矢崎、松田、良知は、稽古を通してかなり刺激を受けた様子。矢崎は「同じ空間にいるだけでも勉強になることが多かったです」、松田は「先輩の皆さんが河原さんと話し合いをしている姿を見て、うらやましさもあり、悔しさもあり・・・。『いつか自分も河原さんとこんな風に話せるようになりたい』という思いに駆り立てられました」とそれぞれの思いを明かした。

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戯曲的にも役としても初挑戦が多かったという良知は「河原さんには、このメンバーの中で一番お世話になりまして・・・」としきりに恐縮。さらに「役の上で支えることが多い成河さんにも、稽古では僕が支えていただくことがほとんどでした。本番では、成河さん演じる平川を、全力で支えたいと思います!」と、決意を新たにしていた。

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最後に成河は、登壇した衣裳に触れ「普段着みたいなので、どんなストイックな会話劇をやるんだろうと思われるかもしれませんが、違います。すでに作品をご存知の方はお分かりだと思いますが、飛び出す絵本のような童話の世界に入ると、その後はハチャメチャです(笑)。笑える楽しいシーンもたくさんありますし、何より演劇的な“仕掛け”が豊か。演劇の醍醐味が詰まっている作品ですので、ぜひ劇場で味わってほしいです」と呼びかけた。

PARCO&CUBE 20th present『人間風車』は、10月9日(月・祝)まで、東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。その後、高知、福岡、大阪、新潟、長野、仙台を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。

【東京公演】9月28日(木)~10月9日(月・祝) 東京芸術劇場 プレイハウス
【高知公演】10月13日(金) 高知県民文化ホール・オレンジホール
【福岡公演】10月18日(水) 福岡市民会館・大ホール
【大阪公演】10月20日(金)~10月22日(日) 森ノ宮ピロティホール
【新潟公演】10月25日(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
【長野公演】10月28日(土) ホクト文化ホール・中ホール
【仙台公演】11月2日(木) 電力ホール

【公演特設ページ】
http://www.parco-play.com/web/play/ningenfusha/

『人間風車』囲み会見

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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