開幕間近!松岡充と丸尾丸一郎がしのぎを削るVOL.M『不届者』稽古場レポート


2017年9月27日(水)より上演されるOFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M『不届者』。松岡充と丸尾丸一郎が「枠にとらわれない作品作り」を目指して立ち上げた新ユニットが、ついに始動する。『不届者』・・・そのタイトルが意味するものとは。松岡と丸尾が、一体どんな物語を作り上げ、何を成し遂げようとしているのか。創作活動が進む稽古場を取材した。

松岡と丸尾の出会いは、2012年に上演された音楽劇『リンダ リンダ』(再演/作・演出:鴻上尚史)にさかのぼる。その公演の最後、丸尾はすでに「一緒に何かやりたい」と松岡に伝えていたそうだ。5年の時を経て、ついに実現する野心。二人のこの挑戦は、野心と呼ぶのがふさわしい気がする。稽古場には、そんな空気がすでに渦を巻いていた。

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二人は、この一年の間、”前代未聞の作品を作ろう”と意見交換をひたすら重ねてきた。その中で、丸尾が松岡に提示したモチーフは「徳川吉宗」。丸尾は、徳川吉宗の持つ妖しさが「ミュージシャン・俳優として、のし上がってきた松岡の人生に重なって見えた」という。それに対し、「そんなことはない(笑)」と松岡は否定しつつも、「自分をよく知る丸くんですら抱くそんなパブリックイメージ、松岡像へのチャレンジとして受け取り、演じてみようと思ったんです」と語っている。

劇団鹿殺しとしても、外部作品としても、丸尾にとって時代劇を扱うのはこれが初となる。しかしVOL.Mのために書き上げたこの『不届者』は、ただの時代劇にあらず。物語は、「徳川吉宗」を軸とした江戸時代の暗殺劇と、現代で起こった保険金詐欺事件が絡み合う、予想もしない仕上がりとなっていた。

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行われていたのは、冒頭から変更点を確認しながら進められる稽古。松岡のほか、荒木宏文、池田純矢、谷山知宏(花組芝居)、小沢道成(虚構の劇団)、そして劇団鹿殺しよりオレノグラフィティ、橘輝、鷺沼恵美子、峰ゆとり、近藤茶、椙山さと美といった全キャストが顔を揃え、台本と格闘していた。

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これまで何度か丸尾が演出する作品を取材してきたが、この日の丸尾は一段と熱かった!一つ一つの登場人物の動きについて「もっとこうして、こうして」「ある程度のテンションと勢いがないと、ここ(その感情)まで到達できないと思う」と、演出卓を飛び出して指示を出していく。ダメ出しも、とにかくスピーディ。丸尾の頭の中と、再構築されていく目の前の出来事についていくのがやっとだった。

松岡は、そんな丸尾の姿を「脚本の世界を諦めない」と評した。本作は、丸尾自身が作・演出を手掛けているということもあるが、頭の中にある世界を描ききることに、絶対に手を抜かない。タイトなスケジュールの中でも最善の表現を模索し続ける、そんな気概が感じられた。

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このVOL.Mが丸尾作品への初参加となる池田は、そんな丸尾の演出スタイルを「いい意味で流動的」と表現。自身も作・演出をし、作品を作り出している池田だが、「それはものすごく勇気がいること。でも、それが丸尾さんの強みでもある」と感じているといった。

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それが顕著に感じられたのは、荒木のあるシーン。流れの中で、荒木が見せた芝居に、丸尾は違う角度から切り込んでいく。それに対し、荒木が自らの考えを示すと、丸尾は「ああ、そうか。う~ん・・・」としばし考え・・・るかと思いきや、「それは後で決めよう!」と即座に保留に。別のシーンでも、全体の動きは後でつけようと言いながら、ぐいぐいと物語を前に進めていく。

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そんな疾風怒濤の丸尾を追いかけるように、要所要所で方向性を確認していく松岡や、休憩中も自らのシーンを何度も反芻する小沢、台本とにらめっこしながら言葉を交わし合う谷山とオレノなど、各シーンを詰めていく姿が稽古場のそこかしこにあった。

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本作について、丸尾自身は「かなりのプレッシャーを感じている」と言いつつも、「野心としては、どうジャンルの名をつけていいのかわからないような、新しい境地に取り組みたい」と、強い意思をむき出しにしている。徳川吉宗という、時代を感じるモチーフを選びながらも、現代の「保険金詐欺事件」というまったく要素を提示することで、“なぜ、演劇なのか”を観る者の想像力に問いかけようとしているのではないかと感じた。

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松岡と丸尾、二人のタッグが、どんな“不届者”を生み出すのか。少しでも気になる・・・と思った方は、本作の初日、冒頭30分がニコ生で無料配信されるので、ぜひ観てほしい。きっと、画面からはみ出るほどの圧倒的熱量が、そこにあるはず。“なぜ、演劇なのか”。願わくば、その答えを劇場で見届けてほしいと思う。

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OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M『不届者』は、9月27日(水)から10月1日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて、10月13日(金)から10月15日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される。また、9月27日(水) 18:30よりニコニコ生放送にて「不届者」開幕特別番組を配信。19:00より前代未聞の初日無料生配信が決定している。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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