後藤ひろひと×河原雅彦が語る、舞台『人間風車』の新たな挑戦


2017年9月28日(木)から、東京・東京芸術劇場プレイハウスを皮切りに全国を巡演する舞台『人間風車』。本作の作家・後藤ひろひと、そして演出を務める河原雅彦の二人を迎えた取材会が、7月21日(金)に都内で行われた。

『人間風車』は、2000年のパルコ版初演ではG2演出のもと、生瀬勝久、斉藤由貴、阿部サダヲ、八嶋智人、後藤ひろひとが出演。また、2003年版では、永作博美、入江雅人に加え、河原雅彦がキャストに名を連ねている。そして2017年、演出に河原雅彦を迎え、新演出版上演の運びとなった。

後藤ひろひと

取材会では、本公演の為に一から戯曲をリライトしていることが後藤の口から明かされた。その理由について後藤は「『人間風車』を書き下ろしたのは20代の頃だったのですが、改めてあの頃に抱えていた大切な気持ちを取り戻したいと思っていたんです」と語る。

続けて後藤は「そして、河原さんと何度か電話で打ち合わせさせていただき、そういった部分を理解してくださったので、部分的なリライトではなく一文字目から描き直したんです」と述べ、河原は「初演時の『人間風車』を拝見したことはないのですが、むちゃくちゃ尖っていたという噂は聞いていたので、その辺りのことを改めて後藤さんから詳しく聞いたんです。そしたら、僕の好きなヒリヒリするような質感が宿っている戯曲だと具体的に理解できて、後藤さんの意気込みに賛同した次第です」とお互いの相性の良さを伺わせた。

物語は売れない童話作家の平川、童話の登場人物になりきる不思議な青年・サム、女優でレポーターのアキラという3人を中心に展開する“童話ホラー演劇”。アキラに恋心が芽生えた平川は、その想いを原動力に入魂の童話を仕上げるのだが、親友の裏切りが発端となり、ある恐ろしい復讐を思いつくが・・・というストーリーだ。

河原雅彦

本作の見どころは、平川が描くユニークな童話と現実がクロスオーバーしながら、観客を恐ろしい現実に誘う後藤の巧みな構成だろう。それについて河原は「童話は愉快で単純に楽しい部分としても描かれている。でも、笑って見ているうちに、急転直下、童話が持つ“裏側”が強烈に描かれ、観客を恐怖に包み込む。“ホラー”って油断させてナンボだと思うので、実に良く出来た戯曲なんです」と絶賛。

また、演出については「戯曲の持っている魅力を変えようとは思っていません」と述べつつ、自身も出演経験のある2003年版と比較して「G2さんが演出した『人間風車』は、いわばファンタスティックで切ない感じを押し出した作品でした。なので、今はその完成されたイメージをどうやったらガラッと変えられるか考えています。ま、おそらくですが、“生々しく、ウルトラやるせない感じ”を目指すことになるかな」と構想を思案中であることが明かされた。

今回の公演では主人公の平川を成河(そんは)、ヒロインのアキラをミムラ、サムを加藤諒が演じることでも話題を呼んでいる。後藤は出演者の顔ぶれをみて「先日、加藤くんが僕の舞台を観に来てくれて、そこで初めてお会いしたんですけど、この子がサムを演じたら愛おしくてしょうがないだろうと思いましたね」と感慨深げに語ると、河原が「諒(加藤)なんてもともとが地球外生命体みたいな生き物ですからね(笑)」と冗談を飛ばしつつも「諒のサムには期待を寄せています」とコメント。

後藤ひろひと&河原雅彦

さらに後藤が、成河とミムラとの面識がないことを明かすと、河原が各キャストを紹介。成河については「成河は声にも威力があるし、芝居も心で噛み砕いてしっかり演じられるし、演劇界でも数本の指に入るほど身体が効く俳優。とても楽しみですよ」と多大な信頼を寄せ、ミムラについては「取材で一度お会いしたのですが、ミムラさんは本当に面白い方でしたよ。昔から絵本が大好きなんですって。興味深い人ですよ」と未知数の魅力を伝えた。

取材終盤には、後藤から本作に対する意気込みが語られた。「僕の考える良い演劇は、観終わった後にたくさん話をしたくなる作品。そして、今回の公演では議論の余地がさらに深まるはず。作品の好き嫌い問わず、心を大きく揺らす作品になっていると思います」と自信を露わにする一方、「とはいえ7割コメディですからね(笑)。構えずに見に来て欲しいですね」と続け、本作のコメディ的側面もアピール。

河原も「たしかに。シリアスな気分で序盤から見られてしまうと、お客さんも作品も誰も幸せにならない(笑)」と頷き、最後は「序盤は特にコメディ色が強いので、素直に楽しんでいただけたら」という観客へのメッセージで取材会を締めくくった。

舞台『人間風車』ビジュアル

PARCO & CUBE 20th present『人間風車』は、9月28日(木)から10月9日(月・祝)まで、東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演される。その後、高知、福岡、大阪、新潟、長野、仙台を巡演。

日程の詳細は、以下のとおり。

【東京公演】9月28日(木)~10月9日(月・祝) 東京芸術劇場 プレイハウス
【高知公演】10月13日(金) 高知県民文化ホール・オレンジホール
【福岡公演】10月18日(水) 福岡市民会館・大ホール
【大阪公演】10月20日(金)~10月22日(日) 森ノ宮ピロティホール
【新潟公演】10月25日(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
【長野公演】10月28日(土) ホクト文化ホール・中ホール
【仙台公演】11月2日(木) 電力ホール

公演特設ページ
http://www.parco-play.com/web/play/ningenfusha/

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