奥菜恵、佐伯大地が丸尾丸一郎作品で見せる激しいギャップ!『親愛ならざる人へ』稽古場レポート


2017年3月2日(木)より、東京 座・高円寺1にてOFFICE SHIKA PRODUCE『親愛ならざる人へ』が上演される。本作は、2014年にNHKラジオ第一で発表され、好評を博したラジオドラマを新たに舞台作品として仕上げたもの。作・演出を務める丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)にとっての、初コメディ作品でもある。開幕迫る中、熱入る稽古場の様子を取材した。

OFFICE SHIKA PRODUCEでは、これまでにCocco(『ジルゼの事情』)、鳥肌実(『山犬』)、鳥越裕貴(『竹林の人々』)などを主演に、作品を発表してきた。本作では、約2年ぶりの舞台出演となる奥菜恵をはじめ、ミュージカル『刀剣乱舞』~阿津賀志山異聞~の岩融役で知られる佐伯大地、宝塚歌劇団元月組トップスターの久世星佳を迎えている。

(以下、配役と物語の一部、舞台の構造などに触れています)

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物語の主人公は、33歳、厄年を迎えた本宮華(奥菜)。結婚式前夜、華は夢であった両親への手紙を書こうとしている。「お父さんとお母さんの娘でよかった!」・・・良かったかぁ?書こうとする度に浮かび上がる、疑念。故郷の両親は、私を愛していたのだろうか。隣には、結婚式の段取りで右往左往する新郎・岡島毅(佐伯)。子宝に恵まれた幸せ絶頂な妹・舞(鷺沼恵美子/椙山さと美、Wキャスト)からの電話。両親への手紙は一文字も書けぬまま、夜は更けていく・・・。運命の朝。華は、しわくちゃな手紙を握り締めて式場へ向かうのだった―!

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取材時に行われていたのは通し稽古前のシーン稽古、物語の中盤に登場する、披露宴の場面。舞台は客席が対面式の「はさみ舞台」になっており、新郎新婦の入場を見ていると、まるで客席もその披露宴に参加している参列者のように見えてくる。幸せそうな新郎新婦が高砂に向かう様子を、役者と一緒に拍手で迎えようとするが・・・次々に沸き起こるハプニングの数々!そして、乱れ飛ぶ本音!!

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丸尾は「両親への手紙を読むことに憧れがありすぎて、いざ書こうとしたらまったく書けなかった」という友人の話から、本作の着想を得たという。奥菜が演じるのは、幸せ絶頂のはずの花嫁・・・なのだが、外見と内面、本音と建前のギャップがすごい。新郎演じる佐伯も、花嫁に圧倒され振り回されまくりで、佐伯の豪胆なイメージとはかけ離れた姿を見せていた。

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結婚式とは美しく幸せに満ちている“良い面”ばかりが見えるものだが、どこまでが本当の素直な気持ちで、果たして“本音”もそうなのか?毒を含みつつ、笑えて泣ける、いろんな方向にパンチの効いた楽しい作品に仕上がりそうだ。

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稽古の中で、丸尾は「毅は、もっと華に集中していて」「そこはもう少し、タイミングを早くしてメリハリをつけようか」などと、時に実演を交えながら、場面ごとに細かく修正を入れていく。役者陣も、疑問や意見を忌憚なくぶつけ、ディスカッションを重ねていた。

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稽古の合間に、丸尾、奥菜、佐伯に話を聞くことができた。奥菜と丸尾の縁は、奥菜が劇団鹿殺しの評判を周囲から聞き、『岸家の夏』(2011年)を観に来たことから始まったという。「奥菜さんにずっと出てもらいたくて、それ以来ずっとラブコールを送っていたんです。だから、今回出演していただけることが決まった時は、小躍りしましたよ(笑)。奥菜さんがぽんっと真ん中にいるだけで、作品がまとまるイメージが湧きました」と、念願叶ったことを明かした。

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もともと「舞台は一番やりたいことであり、一番好き」と言う奥菜。今回、丸尾の演出を受けてみて「すごく愛情のある方なんだなと思いました。愛の鞭というか・・・ちゃんとビシバシ言ってくれる人がいる環境が、うらやましくなっちゃって(笑)。舞台の魅力をさらに教えていただけたました」と、舞台に対してさらなる楽しさを見出したようだ。

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佐伯は、以前、OFFICE SHIKA×映画『ピースオブケイク』×原作・ジョージ朝倉として上演された劇団めばち娘旗揚げ公演『ツチノコの嫁入り』に出演しており、二度目の丸尾作品への挑戦となる。佐伯は、丸尾への印象について「いい意味で雑に扱ってもらっています(笑)。気を使わずに、120%のパワーで向き合ってくださるので、すごく嬉しいです」と語り、「厳しい言葉もかけられるけど、それは僕にとって必要なものであり、すごく欲しかったもの」と絶大な信頼を感じさせた。

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間近に迫る初日に向け、3人は「肩の力を抜いて、友達の披露宴に参列するような気持ちで観てほしいです。笑える作品だけど、きっと、生きることそのものや、人生って素敵だと思える瞬間もあると思うんです。それぞれの、かわいらしい人間像に共感してもらえたら」(佐伯)、「共演者の皆さんとコミュニケーションを取りながら、芝居のキャッチボールする時間が本当に楽しいです。その一つ一つを丁寧に、一生懸命に演じたいと思います」(奥菜)、「この作品を観てくださった女性の方が、観終わったあとに胸が空に向かって開くような後味を持ち帰ってもらえたらと思います。お芝居は、日常の楽しくないところを補っていけるものでありたい。しっかりと、そういったお芝居に仕上げるので、ぜひ楽しみにしていてください!」(丸尾)と、それぞれメッセージをくれた。

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春の劇場32 日本劇作家協会プログラム OFFICE SHIKA PRODUCE『親愛ならざる人へ』は、3月2日(木)から3月12日(日)まで東京 座・高円寺1にて、3月17日(金)から3月20日(月・祝)まで大阪・ABCホールにて上演される。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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