三浦涼介&内藤大希の痛切な叫びが闇をつんざく、空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』開幕!


2017年2月16日(水)、東京・東京芸術劇場 シアターイーストにて空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』が幕を開けた。本作は、脚本家・演出家のほさかようを中心とした演劇プロデュース・ユニット「空想組曲」による新作舞台だ。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』三浦涼介_2

舞台は客席に挟まれる両面舞台で、天井から吊り下がる鎖に繋がった椅子が舞台中央に置かれている。照明は薄暗く、床はひび割れ、閉鎖感と緊張感が漂うシンプルな作りとなっていた。

物語はごく微かな薄明かりの中ではじまる。おそらく、「少年」役の内藤大希が「男」役の三浦涼介に拉致監禁されているのだが、肉眼ではっきりと捉えることは難しく、観客は序盤から五感を研ぎ澄まして想像を膨らませざるを得なくなる。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』三浦涼介&内藤大希

それからすぐ、闇の中で繰り出される拷問の数々。スタンガンの音、肉をえぐるような生爪の切断音が聞こえるたびに、少年の阿鼻叫喚が闇の中に響き渡る。あまりにも一方的に繰り出される暴力の数々は闇に乗じて観客に恐怖を植え付け、男はライターを灯して言うのである。

「今から君の教育をはじめる」

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』山下容莉枝

また、圧倒的な恐怖が空間を満たすなかで、突如「女」役の山下容莉枝が「むかーし、むかしあるところに・・・」と童話を読み聞かせるような優しい声色で現れ、舞台は恐怖と女の母性が入り混じる、悪夢のような歪な様相を見せていく。そうして、3人の関係性が徐々に浮き彫りになり、物語は意外なほど濃厚な人間関係を紡ぎ始めるのであった。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』三浦涼介&内藤大希&山下容莉枝

本作の見どころは、何といっても三浦、内藤、山下の迫力の演技だろう。両面舞台ゆえに舞台と客席がとても近く、人物の感情が叫びや囁き、荒い息遣いから震え、汗と涙、血の滴りを通して、圧倒的な臨場感で表現される。

特に、三浦の「男」役がすごい。一見、単なる精神異常者になりがちな難しい役どころを、三浦はギリギリで人間性を保ち、“人間”の物語へと昇華させる。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』三浦涼介&山下容莉枝

以前、エンタステージの取材で三浦は「今回は意識的にもっと役に踏み込んで、“演劇的”な人間になれたらいいなって考えています」と本作について語っていたが、まさに一歩も二歩も人物に踏み込んだ役作りに挑んだのだろう。三浦と対極のピュアネスを演じる内藤と、物語をさらに歪んだ狂気に展開させる山下もあわせて、極限状態で感情をぶつけ合う俳優陣に注目だ。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』三浦涼介_3

また、これまで少女漫画のようなファンタジー性の中にリアルな現実を突きつけ、ダークファンタジーと称される作品群を創作してきた作・演出のほさかようが、今作で「闇」に振り切れ、底抜けの恐怖を描いたことも大きな注目だ。闇を効果的に使い、イマジネーション豊かな舞台で観客一人ひとりの感情を激しく揺さぶる。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』三浦涼介_4

また、その闇の中にかすかな希望の光を灯す劇作手腕は見事であった。「闇」や「恐怖」といったネガティブなモチーフのため苦手意識のある人もいるだろうが、最後にはほさかの祈りに似た「光」が描かれる。三浦、内藤、山下の狂気に似た迫真の演技で迫る人間の深淵を見逃さないでほしい。

空想組曲vol.14『どうか闇を、きみに』は、2月19日(日)まで東京・芸術劇場 シアターイーストにて上演される。

(取材・文・撮影/大宮ガスト)

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