市川海老蔵と寺島しのぶの鮮やかな歌舞伎共演!六本木歌舞伎『座頭市』ゲネプロレポート


2017年2月月4日(土)に、市川海老蔵主演の六本木歌舞伎第2弾『座頭市』が、東京・EX THEATER ROPPONGIにて開幕した。リリー・フランキーが脚本を、三池崇史が演出を務め、2017年の今だからこそ観客に訴える新解釈の『座頭市』が誕生。男の世界である“歌舞伎”の冠がついた舞台に、女性であり歌舞伎役者・尾上菊五郎の娘である寺島しのぶが出演することによる化学反応も見物だ。

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『座頭市』といえば、盲目の侠客・市が驚異的な抜刀術で戦う勝新太郎のアクション時代劇シリーズが有名だ。ほか、ビートたけしや綾瀬はるか、香取慎吾が映画で市役を演じ、舞台では哀川翔主演で上演されてもいる。

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今回、物語の舞台となるのは、江戸時代の六本木温泉宿場町。ここに流れ着いた盲目の市(海老蔵)は、賭場でイカサマを見抜き、悪党達の怒りを買う。命を狙われる市だが、宿で女中として働く同じく盲目の少女・おすず(寺島)や、市に心を寄せる江戸随一の花魁・薄霧(寺島/二役)らと交流を重ねていく。

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歌舞伎とは、本来男役だけで演じられる。しかし今回、演出の三池たっての希望で、女性である寺島が舞台に立つ。会見で寺島は「変な異物が入っているように見えないといい」と言っていたが、むしろ女性がいることで、生々しさがにじみ出た。

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海老蔵は、特徴の一つとも言える眼力を封印。終始、目を閉じた盲目の役を演じた。その身のこなしはゆったりとし、空間の中心で周囲の人々を操っているようで、その姿はまさに悪党たちを翻弄する驚異的な剣の使い手。さらに、ここぞという場面で、歌舞伎の醍醐味である大見得を切る。思わず、海老蔵の屋号である「成田屋!」と声をあげたくなる。

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血のように赤い海老像の衣装と対峙するように、対立する剣客・風賀清志郎(市川右團次)の着物は真白だ。紅と白の交わる殺陣は色彩が美しい。歌舞伎らしい派手な演出や大立ち回りも多いほか、二役こなす寺島の早着替えの応酬も、芸である。華やかな花魁と貧しい少女の二役を、瞬時に演じ分けた。

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歌舞伎の豪華絢爛さに加え、ミラーボールを使用したカラオケや客席と一緒に韻を踏むラップなど、三池の現代的な演出も加わる。またリリーの脚本も、六本木ヒルズや、豊洲問題など2017年に旬な話題が登場し、今の都政を反映した。

また、ゲネプロではアドリブも多く、花道や客席通路を通るシーンでは観客や取材陣に話かけることも。本番でも毎日、その日その日の観客とのコミュニケーションがあるだろうことを伺わせた。

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会見では、二人が22年ぶりの共演であることも話題になったが、海老蔵はあまり気にしていない様子。それよりも「音羽屋(尾上菊五郎の屋号)のお嬢さんが歌舞伎という名目の舞台に立つことが感慨深い」と述べた。「(歌舞伎の見せ場でもある)早着替えとか花魁道中とかをされますが、もし(寺島さんが)男だったら、どんな人生だったんだろう」と思いを馳せた。寺島も「歌舞伎の要素をこんなにやらせていただいて感謝です。好きだったんだなあ」と笑みを浮かべた。

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市川團十朗家、尾上菊五郎家ともに、300年近くの歴史を持つ歌舞伎界の名家である。2017年に両家が交わる舞台は、家、男女、現代と歴史が交差したエンターテインメントだ。

六本木歌舞伎第2弾『座頭市』は、東京・EX THEATER ROPPONGIにて2月20日(月)まで上演。上演時間は、第一幕60分、休憩20分、第二幕60分の予定。

(取材・文・撮影/河野桃子)

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