結城企画『くるみ割れない人間』開幕レポート!ダメダメな男たちの必死のバレエ(?)に笑いが止まらない!!


結城企画『くるみ割れない人間』が、2017年1月25日(水)に東京・OFF・OFFシアター(下北沢)にて開幕した。「男たちがバレエを踊る舞台をやりたい!」という結城洋平の希望でスタートした今企画。依頼を受けたモラル(劇団「犬と串」作・演出)が脚本を書き下ろし、濃密な空間でいい年の男たちが踊り、騒ぎ、汗と笑いを飛び散らせる舞台に仕立てた。

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序盤から、全身ピンクのバレエのような(入院着のような)衣装で並ぶ男4人が登場し、目を引く。彼らは絶海の孤島に集められた、口ばっかりのダメダメな“口だけ人間”。彼らは女医から、謎の「治療」という名目で、強制的にバレエを踊らされるのだが、「行動するには理由が欲しいね」「今日はあんまり調子がでない」「経験してないことはできるわけがない」など、口先ばかり。まるでくるみのように固い殻をかぶり、言い訳ばかりして本気になることがない。

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4人のダメ男のキャラクターが立つ。キザで浮ついた路上ミュージシャンのレイ(富川一人/はえぎわ)、独自のこだわりを譲らないラーメン屋店主のミチノリ(眼鏡太郎/ナイロン100℃)、プライドの高い横柄なベンチャー社長のダイキ(佐藤銀平)。そして、優しいのかなんだかヘラヘラとしたマナト(結城洋平)。全員が同じ動きをするシーンも多く、また、同じピンクの衣装に少しアクセントを加えているだけなので、一瞬誰が誰だかわからなくなってもおかしくなさそうだが、キャラクターがハッキリしているので、一見似ているからこそ個性が際立っている。むしろ、全員違う衣装だったなら舞台上のまとまりがなくなって疲れてしまうかもしれない。

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テンションの高いコントのような掛け合いは、達者な役者たちが見せる安心感がある。稽古見学の時には互いの演技を探っていたような雰囲気もあったが、いまや、互いを信頼している空気が伝わる。相手の打つ球をさらに強く打ち返してラリーが続くような、心地よい高まりに、しだいに観ている方も引き込まれ、体温が上がってくる。

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時々、アドリブなのか、相手の変な顔に耐えられないのか、はたまた演技か・・・吹き出す直前の半笑い顔になるシーンもいくつかある。そのまま勢いを途切れさせることなく展開を畳み掛けてきて、その微妙な半笑いの表情がむしろ、一緒に舞台を創っているような気分にさせられて楽しい。それは「お客さんとみんなで楽しみたい」という結城の基本スタンスそのものだ。

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いくつか挟まれる踊りのシーンは、バレエの要素はありつつも、パントマイムやコンテンポラリーダンスのようでもある。ここでは一人数役をこなす。みんなが役を離れて何かになりきり、バレエ音楽『くるみ割り人形』のメロディに乗せて、踊っていく。通りすがりのサラリーマンやおばあちゃん、時には被り物をして動物や野菜(?!)にまで扮する。目まぐるしく一人何役もこなし、役者たちが変幻していく踊りから、それぞれの役の人生エピソードが垣間見える。いわゆる“バレエ”ではない(そもそも役者たちにバレエの経験はない)。しかし人生の走馬灯のような踊りには、ふんだんな笑いだけでなく、どこか切なくさせる表現が詰め込まれている。

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4人のダメな男たちが右往左往する中、紅一点の未来(カムカムミニキーナ)が舞台の空気を変えていく。厳しい女医であったかと思えば、バレエシーンでは、可愛らしい動物や、無邪気な女の子、ツンとした女優から、変顔まで、いろんな顔を見せる。男臭い舞台に可愛らしさを運び込み、ほっと表情をふやけさせてくれた。

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息つく暇もなく、畳み掛けるように展開していくシーンの連続。彼らは自分のくるみを割ることができるのか?OFF・OFFシアターという至近距離で、楽しくて仕方なさそうな人たちと一緒に、笑う105分間。終演後、役者と共に遊びまくって「ああ楽しかった」と笑みを浮かべた帰り道には、「よくよく思い出せば、バレエもちゃんとしてたよな」と思い出し、またニヤリとするのだった。

結城企画 第二回公演『くるみ割れない人間』は、1月31日(火)まで東京・OFF・OFFシアター(下北沢)にて上演。

(取材・文・撮影/河野桃子)

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