古川雄大、矢崎広、平間壮一らが疾走する!ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』観劇レポート!


ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

1月15日(日)よりTBS赤坂ACTシアターにて公演中の『ロミオ&ジュリエット』。シェイクスピアの戯曲に大胆なアレンジを加え、フレンチロックに乗せた躍動感あふれる世界が展開する人気ミュージカル作品だ。‘13年以来の上演となった本作の模様をレポートしたい。

舞台はイタリア・ヴェローナ。大公が統治するこの街では、モンタギューとキャピュレットというふたつの家が常に争いを繰り広げていた。ある日、モンタギュー家の跡取り・ロミオは、友人であるベンヴォ―リオとマーキューシオに誘われ潜り込んだ仮面舞踏会で、キャピュレット家の一人娘・ジュリエットと出会う。一瞬にして恋に落ち、幸せ絶頂の時を過ごすふたり。しかし、そのことを知ったジュリエットの従兄弟・ティボルトは決闘でマーキューシオを刺し、激高したロミオはティボルトを殺してしまう。大公に追放を言い渡されるロミオ。一計を案じたジュリエットはロレンス神父のもとに走り、神父はジュリエットに自らが精製した“呼吸も脈も止まり、まるで死んだように眠る薬”を渡す――。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真_2

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

‘13年に続き続投となったロミオ役の古川雄大。モンタギューの跡取りとして常に友人たちに囲まれ、ヴェローナ中の女性を夢中にさせるルックスを有しているにも関わらず、どこか孤独な影を抱える佇まいに惹きつけられた。日々、それなりに楽しく過ごしながらも、埋められない何かを求めてさまよう姿は現代の若者にも通ずる造形だ。そんなロミオだからこそ、唯一の人=ジュリエットに出会った時の“輝き”がより強く表出していたとも感じた。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真_3

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

ジュリエットを演じる木下晴香は、本作が本格デビューとは思えないほど堂々と舞台に立つ。透明感がある歌声と瑞々しい演技、一途な恋心でロミオを想う表現が清々しい。木下のジュリエットも古川ロミオと同様、どこか寂しさを宿し“埋められない1ピース”を探しながら生きているという印象。そんなふたりが唯一の相手として恋人を想い、そこから悲劇に向かっていく様が切なく響く。

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ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

ティボルト役の渡辺大輔は、愛情に飢え、憎しみに燃えたキャラクターを力強く演じる。劇中で、ほぼ唯一、苦しみや怒りを抱えたままこの世を去るという役どころを鮮烈に魅せ、物語に大きなうねりを与えていた。声の強さ、太さも印象に残る。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真_5

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

ロミオの親友・ベンヴォ―リオ役の矢崎広は、前半で軽妙な芝居を見せ、ロミオの追放後からは自らの役割を自覚し、成長していく様を丁寧に演じる。ここ数年、彼の芝居を観るたび、舞台上でのポジション取りの巧さに驚くのだが、今回もそれは同様。ラストでキャピュレット夫妻に歩み寄る場面が特に強く響いた。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真_6

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

同じくロミオの親友・マーキューシオを演じる平間壮一は『ラディアント・ベイビー』で見せた繊細な演技とは一味違う、ぶっ飛んだ造形で物語の前半部分を牽引。本人が大きなこだわりを持つダンスもひときわ鮮やかだ。『ラディアント~』のクワンをはじめ『RENT』のエンジェルや『The Love Bugs』のブン太など、これまで優しく明るいキャラクターを担当することが多かった平間だが、本作ではまったく違う鋭い一面を見せつけている。

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ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

今回は新演出ということもあり、ダンスの華やかさもより際立っていると感じた。モンタギューは主にブルーの衣裳でストリート系、ヒップホップを踊り、キャピュレットはレッドを使ったプチゴージャス系の衣裳をまとい、ジャズベースの振付を踊る。そこにクラシックを基としたコンテンポラリーダンスで「死」が絡んでいくのも興味深い。

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ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

また、若手に対し、ミュージカルの世界で大役をこなしてきた大人キャストの活躍も華やかだ。親に愛のない結婚を強要され、不義の子としてジュリエットを産んだキャピュレット夫人役の香寿たつきは、娘を救うのではなく、自分と同じ道を歩ませることで運命に復讐する哀しい女性像を構築。そんな彼女が、引き離されそうになるロミオとジュリエットの遺体を見て「ふたりは本当に愛し合っていたのよ!」と争いをやめない面々に叫ぶ言葉が突き刺さる。

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ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真_10

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

対して乳母役のシルビア・グラブは、時にコミカルな面を見せながら、ジュリエットに対しての深い愛情を切々と表現。キャピュレット卿を演じる岡幸二郎は、ジュリエットが実の娘でないと知りつつ、愛情を注ぎながらも苦悩するという難しい役どころを好演していた。

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ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』舞台写真(C)田中亜紀

若手キャストと大人キャストの競演、小池修一郎氏による新演出、キャッチーなフレンチロック、3人のコレオグラファーによる多彩な振付、現代的なアレンジなど、見どころ満載のエンターテインメントに仕上がった‘17年版『ロミオ&ジュリエット』。シェイクスピアが400年前に紡いだ愛の物語は、またひとつ進化を遂げた。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』はTBS赤坂ACTシアターにて2月14日(火)まで上演中。東京公演千穐楽後は2月22日(水)より3月5日(日)まで、梅田芸術劇場メインホール(大阪)にて上演される。

(キャストは筆者観劇時のもの。ロミオ、ジュリエット、ティボルト、ベンヴォ―リオ、マーキューシオ、死の各役はWキャストにより演じられる)

(取材・文/上村由紀子)

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