笑いと汗と男たちのバレエ!結城企画『くるみ割れない人間』稽古場レポート


2017年1月25日(水)から1月31日(火)まで東京 OFF・OFFシアターで上演される結城企画『くるみ割れない人間』。本作は、俳優・結城洋平が2016年11月に立ち上げた団体の第2回公演となる。毎回、異なる作・演出で上演するという結城企画。今作は、小説家としても活躍する劇団「犬と串」のモラルを迎えた。前作からまだ2ヶ月。勢いに乗った結城企画の次回公演は、とても勢いのある公演になりそうだ。その稽古場を取材した。

結城企画『くるみ割れない人間』稽古場レポート_2

舞台は、絶海の孤島。そこに拉致された4人の男は、口ばっかりのダメダメな“口だけ人間”だ。なにかと理由をつけて行動しなかったり、大口を叩いてサボったりと、本当に口だけである。彼らは女医クララから、謎の「治療」という名目で、強制的にバレエを踊らされる・・・というコメディ。4人のダメ男を演じるのは、主宰の結城洋平、眼鏡太郎(ナイロン100℃)、佐藤銀平、富川一人(はえぎわ)。そして、女優の未来(カムカムミニキーナ)が彼らを束ねる女医を演じる。

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前回公演は会話劇だったが、今回は体を張ったパワフルな舞台。ダメな男たちがグダグダと文句を垂れ流したり、しょうもないことで喧嘩したり、くだらないことで興奮したりと、大騒ぎである。まるで小学生男子のよう。さらには、演出のモラルまでもが「いやー!いいですね!もっともっと!」と大笑いしながら騒ぎに加わって、大の男5人が盛り上がる。それを、困ったような笑顔を浮かべながら、微笑ましく見守る唯一の女性キャスト未来と、女性スタッフたち。まるで小学校の放課後の教室である。

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もちろん、彼らも遊んでいるわけではない(舞台上で本気で遊んでいる、とも言える)。休憩中には「いやあ、俺、本気で何をやってるんだろう」と苦笑することも。普段の生活ではありえないほどのパワーを出しているからこそ、役を離れた時の差が大きい。「はい、始めましょう」とモラルが合図すると、大きな声と表情で、休憩時とは違う顔を見せる。また、モラルが「はい、そこまで」と演技を止めると、和やかな雰囲気の中、真剣な議論が交わされる。「こうしてみましょうか?」「じゃあ前に決めたことは忘れちゃいますね」「そうだねぇ・・・前回の案もすごく好きなんだけどねえ」「だったらこの方法はどうだろう・・・」と、各自が意見を出し合い、稽古で試していく。

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模索が続くあまり、短いワンシーンを1時間以上稽古することもあるという。この日、2時間で進んだシーンは作品全体の10分の1。おそらく、本番では10分くらいのシーンになるだろう。じっくりと取り組む稽古について、結城は「互いに励まし合って稽古しています」と楽しそうだ。

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稽古場には笑いが絶えない。いい歳をした男たちが汗と勢いにまみれ大騒ぎをしている様子は滑稽でもあるが、あまりに本気なので何も考えず大笑いできてしまう。男だけだと暑苦しくなりそうだが、紅一点の未来の存在が気持ちのいい息抜きになる。爽やかな声で心地の良い風を運んできたかと思えば、声のトーンを使い分けた確かな台詞使いで、締めるところはきっちり締める。かわいらしい女性に男4人が翻弄される様子も、またおかしい。

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『くるみ割れない人間』は、チャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』をもじったタイトルだ。結城の「舞台と客席が近いOFF・OFFシアターで、バレエを踊りたい!」という希望を受け、いい年の男たちがバレエを踊るという脚本をモラルが書いた。とはいえ、肝心の男4人はバレエ未経験。バレエシーンは、台本とは別に設定資料を作成し振付する。単純なダンスシーンではなく全身で思いを表現する踊りになる・・・ということだが、果たしてどんなバレエになるのか。

稽古中、モラルは何度も「この台詞では○○さんと○○さんの距離を近くしましょう」「このシーンでは、○○さんだけ離れてくれませんか?」といった指示を出し、登場人物の距離感で関係を見せていく。その口調は柔らかく、稽古場の雰囲気は非常に良い。

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モラルは「自分の劇団では一番年上ですが、この現場は先輩ばかり。みなさん意欲的に意見を出してくださるので、いろんな毛穴が開いている感覚です」と新鮮な気持ちで臨む現場のようだ。結城は「モラルさんが遠慮なく付き合ってくださるので、もっともっと、と貪欲になれるんです」と意気込んだ。

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結城企画『くるみ割れない人間』は、1月25日(水)から31日(火)まで東京・OFF・OFFシアター(下北沢)にて上演される。座席数80ほどの距離感。間近で観る大人の男たちのエネルギッシュなバレエ(?)を堪能したい。

(取材・文・撮影/河野桃子)

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