“今日”という日を生きる!『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート!


12月15日(木)より、東京国際フォーラム・ホールCにて上演中の『RENT』。1996年にオフブロードウェイで上演されて以来、多くの観客を熱い渦に巻き込むロックミュージカルだ。

7年の歳月をかけ、本作の原作・脚本・作詞・作曲・編曲を手掛けたジョナサン・ラーソンは、プレビュー公演初日の朝に36歳の若さでこの世を去った。それから20年・・・マイケル・グライフによるオリジナル演出で『RENT』の世界が甦る。

『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート_2

舞台は1989年、クリスマスイブのニューヨーク。治安も景気も最悪のこの街で、古いビルを勝手に改造し、家賃(RENT)も払わず住みついている映画監督志望のマークと、元ロックミュージシャンのロジャー。そこに旧知の友人である大学教授のコリンズが現れ、その後の彼らの一年間が印象的な音楽と共に描かれる。

今回の来日カンパニーはそのほとんどが20代キャスト。夢や希望という言葉を心の底に押し隠しながら、絶望と向き合い、ある種刹那的に生きる姿が非常にビビッドに現れていると感じた。

『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート_3

中でも特に印象的だったのが、エンジェルを演じたデイビッド・メリノとマーク役のダニー・コーンフェルドのふたりだ。

仲間に「“愛”を信じる力」をギフトとして贈り、本当の天使となって去っていくエンジェル役のデイビッド・メリノは最高にチャーミング。コリンズとの出会いから、死の間際の「コンタクト」の生々しい叫びまで、そのすべてが心に刺さる。カーテンコールで下手側に退場する際も、最後までお尻を振って歩く姿が非常に愛らしくキュートに映った。

『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート_4

登場人物の中で、ほぼ一人”傍観者“としてその場に存在するマーク役のダニー・コーンフェルドも、自身や他者に対する言葉に出来ない苛立ちを繊細に表現しながら、次第に自分が生きる意味や居場所を見つけていくさまを誠実に演じる。マークの視点=観客の目線でもある本作で、芯となるキャラクターをしっかり構築していると強く感じた。

『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート_5

今回の『RENT』誕生20周年ツアーキャストの多くは、ブロードウェイで活躍するスターではなく、オフ・ブロードウェイや大学の舞台に立つ若手俳優たちだ。まだ粗削りなところもあるが、彼らの全身から溢れ出るエネルギーやパワー、そのひたむきさにただ胸打たれる。

『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート_6

現在、ニューヨークの治安は以前より安定し、景気は底を打って、AIDSは不治の病ではなくなった。だが、20年経った今でも『RENT』の世界がまったく色褪せないのは、誰もが胸に抱く将来への不安や絶望、他者を愛することの恐怖とそれを乗り越えた時の素晴らしさ、生命の輝きといった普遍の事柄が鮮やかに描かれているからだろう・・・ジョナサン・ラーソンが私たちに遺した「No Day But Today」のメッセージとともに。

『RENT』20th Anniversary Tour観劇レポート_7

『RENT』20th Anniversary Tourは12月31日(土)まで東京国際フォーラム・ホールC にて上演中。なお、12月24日(土)のソワレにはクリスマスイブ9 PM公演、12月31日(土)にはニューイヤーカウントダウン公演のスペシャル企画も予定されている。

(取材・文/上村由紀子)
(『RENT』舞台写真 (C)Takayuki Shimizu)

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。