キャラメルボックスがクリスマスまで走り続ける!『ゴールデンスランバー』東京公演開幕


演劇集団キャラメルボックス2016クリスマスツアー『ゴールデンスランバー』の東京公演が、神戸公演を経て12月10日(土)に東京・サンシャイン劇場にて幕を開けた。原作小説は、2007年に出版され本屋大賞と山本周五郎賞を受賞、2010年には堺雅人主演で映画化され大ヒットした伊坂幸太郎の作品。東京公演初日前には、公開ゲネプロと囲み会見が行われ、出演する畑中智行、渡邊安理、岡田達也、山崎彬、脚本・演出の成井豊が登壇した。

『ゴールデンスランバー』東京公演ゲネプロ_9

物語の舞台となるのは、杜の都・仙台。宅配便ドライバー・青柳雅春(畑中)は、数年ぶりに大学時代の友人・森田(山崎)に呼び出される。久しぶりの再会にたわいもない会話を交わすが、様子がおかしい森田。心配する青柳に森田は告げる。
「お前、オズワルドにされるぞ」

『ゴールデンスランバー』東京公演ゲネプロ_3

突然、首相暗殺の濡れ衣を着せられてしまった青柳。巨大な権力と陰謀から逃げ続けるため、彼は仙台の街を走り続ける。舞台の上で、目まぐるしく景観を変える仙台の街を表現するのは、役者の身体、音響、照明、劇団員たちが動かす“アミダ”というセットのみ。シンプルだが、“演劇だからこそできる表現”が想像力を刺激する。

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畑中演じる青柳は、2時間ひたすらに走り続ける。真に迫るその姿が緊張感を生み出し、客席の心拍数も上げていく。それを追い詰める、岡田演じる佐々木刑事の迫力には、思わず手に汗を握ってしまう。そして、渡邊演じる樋口は、大学時代の恋人である青柳をまっすぐに信じる。そして、ゲストの山崎(劇団「悪い芝居」)が演じる森田は、原作よりもフィーチャーされており、青柳を見守りつつ観客を導く「語り」の役割を果たしている。

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トリックスター的存在で物語を動かしていくキルオ役は、今回オーディションで一色洋平が選ばれた。一色は、秋に全国を回った同劇団のグリーティングシアターvol.3『嵐になるまで待って』に続いてのゲスト出演となる。「・・・びっくりした!」と言いたくなるような、身体能力の高いアクションと神出鬼没でありながら存在感を示していた。

ゲネプロ終了後の囲み会見で、脚本・演出の成井は「原作の魅力をいかに伝えられるか、ということを意識して作りました。長い原作を、物語のエッセンスを込めながら違和感なく縮めるかが難しいところでした」と振り返った。

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先に行われた神戸公演の初日では、演じる側も緊張していたが観客も緊張していたそうだが、岡田は「公演を重ねていくうちに、お客さんと我々の呼吸もあって、すごくいい芝居になりました」と確かな手応えを得てきたようだ。

『ゴールデンスランバー』東京公演ゲネプロ_2

山崎は、これまでにも同劇団の役者陣と個々に共演を重ねているが、改めて劇団の公演に参加してみた「僕自身も劇団をやっているのですが、長くやっているキャラメルボックスさんの稽古に参加できたことで、すごく勉強になることがありました」という。山崎の演出(悪い芝居『マボロシ兄妹』)を受けたことのある渡邊は「今回は共演者として、悩んでいるシーンについて相談し合えたり、また違う形でご一緒することができているのが嬉しいです」と改めて喜びを語った。

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主演の畑中は「原作ファンの方のイメージを裏切らないようにしつつ、キャラメルボックスとしての“らしさ”を出す。そのバランスをすごく意識して作ってきました。僕自身、客席から観たいなと思える作品です。初めて舞台をご覧になる方でも楽しめるようになっていますので、ぜひ劇場に来てください!」と呼びかけた。

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なお、本作の一部は「劇中撮影OKタイム」が設けられている。開演前にきっちり説明をしてくれるので、ぜひ参加してみてほしい。シャッターチャンスをお見逃しなく!

絶体絶命の状況に追い込まれた男が、何度も口にするのは「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」という言葉。サスペンス調の物語の中に、キャラメルボックスの“演劇の可能性と観客への信頼”が詰まっている。

『ゴールデンスランバー』東京公演ゲネプロ_10

演劇集団キャラメルボックス2016クリスマスツアー『ゴールデンスランバー』東京公演は、12月25日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。

(撮影/伊東和則)
(取材・文/エンタステージ編集部)

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