西岡徳馬、新納慎也&音尾琢真による迫真の騙し合い!『スルース~探偵~』探偵バージョンレポート


2016年11月25日(金)に東京・新国立劇場 小劇場にて開幕した舞台『スルース~探偵~』。本作は『フレンジー』『ナイル殺人事件』などの映画脚本で知られる、イギリスの劇作家アンソニー・シェーファーが1970年に書き下ろした作品。1971年にトニー賞演劇作品賞を受賞し、1972年と2007年に二度映画化されている。日本では、1973年に劇団四季によって初演され、その後も繰り返し上演されてきた傑作サスペンス戯曲だ。

『スルース~探偵~』公開ゲネプロ_2

本公演では「探偵バージョン」として西岡徳馬と新納慎也のペア、「スルースバージョン」として西岡とTEAM NACSの音尾琢真のペアによる2バージョンで上演される。今回は西岡&新納による「探偵バージョン」の公開ゲネプロの模様をお届けしよう。

『スルース~探偵~』公開ゲネプロ_6

マイロ・ティンドル(新納/音尾)はある日、著名なミステリー作家のアンドリュー・ワイク(西岡)から呼び出しを受ける。実はマイロは、アンドリューの妻とひそかに付き合っていたのだ。不倫の追及を受けるものと思っていたマイロだったが、アンドリューは「浪費家の妻にはほとほと困り果てていた」「私にも素敵な愛人がいる」と切り出し、自宅の金庫に保管している宝石を、泥棒に扮して盗んで欲しいと言い出した。宝石には盗難保険がかかっているため、双方に利益があるのだと言う。あまりにも虫の良い話だったが、金銭的に厳しいマイロはアンドリューの筋書きどおりに、珍妙な手順で宝石を盗み始めるが・・・。

『スルース~探偵~』公開ゲネプロ_7

舞台は老作家アンドリューの屋敷のリビングのみで進行する。舞台上には暖炉、柱時計、図書、西洋人形など、ミステリーらしい小道具類が並ぶ。さらに、上演を待つ客席には柱時計の時を刻む音が鳴り続け、上質なイギリス・ミステリーの世界に観客を引き込んでいく。

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アンドリューは、常にミステリー小説に使えそうなネタを考え、周りも巻き込む自分本位な男。人も操れると考える傲慢さと時折見せる滑稽さを交え、西岡が魅せる。ユーモラスでありながら狂気とも思える姿を垣間見せ、隠された心意を掴ませない西岡の姿に、どこまでが偽りなのかと引き込まれる。

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一方で、アンドリューの妻の立場を思い真剣に交際する、誠実で純粋な青年マイロ。一幕では、ピュアで真面目なマイロを、新納は好青年らしく演じている。しかし、その好青年らしさも、アンドリューの口車に乗せられ、崩れていき・・・。その危うい様子にハラハラさせられると共に、目を奪われる。

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この二人によって紡ぎだされる英国流のブラックユーモアとウィットの効いた会話が、心地よく楽しい。だが、それもやがて、ヒリヒリとした緊迫感の張りつめたものへと変化する。相手を騙し観客をも騙すという虚実入り混じるストーリー展開と、男たちの迫真のぶつかり合いは、最後の最後まで見逃せない。

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上演終了後にはその結末の余韻に浸りながら、合同取材での演出・深作健太の「『探偵バージョン』、『スルースバージョン』、どちらも全然違った作品になると思います」という言葉を思い、「スルースバージョン」にも興味をかき立てられた。

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また、ヒッチコック監督作品やアガサクリスティ原作などのミステリー映画の脚本を担当したアンソニーらしく、ミステリーのエッセンスが随所にちりばめられており、怪しい中国人のくだりなどはミステリー映画ファンなら思わずニヤリとさせられるだろう。

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何が現実で、何が虚構なのか?その会話一つ一つ、仕草一つ一つが見逃せないスリリングなサスペンス劇。驚きの結末まで一瞬たりとも目が離せない、ミステリーの醍醐味を存分に味わえる作品だ。

パルコ・プロデュース公演『スルース~探偵~』は、11月25日(金)から12月28日(水)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演される。その後、福岡・愛知・仙台を巡演(スルースバージョンのみ)。日程の詳細は以下のとおり。

【東京公演・探偵バージョン】11月25日(金)~12月11日(日) 新国立劇場 小劇場
【東京公演・スルースバージョン】12月17日(土)~12月28日(水) 新国立劇場 小劇場
【福岡公演・スルースバージョン】2017年1月14日(土) ももちパレス
【愛知公演・スルースバージョン】2017年1月16日(月) 日本特殊陶業市民会館
【宮城公演・スルースバージョン】2017年1月18日(水) 電力ホール

※西岡徳馬の「徳」は旧漢字が正式表記

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

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