男32名の汗と笑いが飛び散る、愛と欲望の青春!中屋敷法仁『露出狂』稽古場レポート


2016年9月30日(金)から10月10日(月・祝)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて、中屋敷法仁の人気作『露出狂』が、パルコ・プロデュースにて4年ぶりに再演される。サッカーの強豪高校14名の男子生徒たちによる、汗と涙、笑い、愛、欲望にまみれた青春を描いた舞台だ。総勢32名のキャストが【露(あらわ)】【出(いずる)】【狂(くるう)】の3チームに分かれる。まったく味の違う3チームは、それぞれどんな雰囲気なのか・・・全チームの稽古を取材させてもらった。

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まずは、【チーム露】。サッカー部の中心となる4名(市川知宏、陳内将、小沢道成、鈴木勝大)が意見を交わすシーンだ。テンポ良く台詞の応酬が重ねられる中、時々、演出の中屋敷が演技を止め、指示を出す。この日、中屋敷は市川に「その台詞、怒って(言って)みて」「今度はスカしてみて」といろいろなパターンを要求。市川は瞬時に反応し、まったく違うトーンとスピードで、同じ台詞を言う。

市川の台詞のニュアンスが変わると、周囲の俳優の演技も変わっていく。さっきは笑いながら言った台詞で今度は怒鳴り散らしてみたり、まったく新しいポーズをとったりと、それぞれ新しいことを次々と試していく。特に陳内、永島敬三らキャリアの長いメンバーは、アドリブをはさんできたりもする。永島が急に映画『シン・ゴジラ』のジェスチャーで稽古場を湧かせる場面もあった。中屋敷も「他にも何かネタあるんでしょ?」とニヤニヤしながら、俳優たちを自由にさせている。

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稽古は、チームごとの入れ替え制で行われる。一つのチームの稽古が終わると、少しの休憩時間を置いて、すぐに次のチームの稽古が始まる。休憩中は、それぞれが思い思いに過ごしていた。ストレッチをしたり、台詞の練習をしたり、歌ったりと、様々だ。舞台中央では数人がサッカーボールを蹴っている。一人、二人、とそれに加わる人数が増え、いつの間にか10人以上の輪ができている。ボールを追いかけてはしゃぐ俳優たちを中屋敷は嬉しそうに見守る。

休憩時間を5分過ぎても、誰も気づかないほどボールに熱中しているようだ。中屋敷が、稽古時には手放さないというピンクパンサーのぬいぐるみを持ったまま、ゆっくりとサッカーの輪に近づいていく。そして一言「そろそろやろうか」と声をかけると、瞬時に俳優たちはボールを脇に寄せ、立ち位置についた。

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【チーム出】には、【チーム露】に出演していたキャストもいる。しかも違う役だ。市川が演じていた役を陳内が演じ、陳内が演じていた役を永島が演じる。配役が変わると、全体の印象がガラリと変わる。さきほどの【チーム露】では全体的なまとまりと安定感が感じられたが、【チーム出】では強烈な個性のぶつかり合いとスピード感に、観ていて圧倒されてしまう。この日の稽古は、サッカー部内の関係性がどんどんと変わっていくシーン。なかでも感情の動きの多い高良亘、坂口涼太郎、畠山遼ら【チーム出】にのみ出演するキャストの勢いが目立つ。

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その稽古中に誰よりも動き回り、一番笑い声を上げているのは中屋敷だ。俳優が驚くシーンでは、一緒に「え!?」「は!?」と大きな声で台詞を言う。その表情も、舞台上の俳優たちと同じように、驚きや怒りの顔になっている。また、俳優の動きに対して「なんだそれ、おもしろいな!」などと大声を飛ばす。中屋敷の声に乗せられ、俳優たちの演技にも熱がこもっていく。

そして、23歳以下の俳優のみによって構成された【チーム狂】。音楽に合わせ、それぞれの動きや立ち位置を一つ一つ確認していく。芝居を続ける俳優たちに、中屋敷のかけ声が飛ぶ。「Go!」「移動!」「パーン!」などの声が響くと同時に、俳優たちが次のアクションを起こす。一斉に動く様子は、まるでダンスだ。とくにサッカー部員のほとんどが登場するシーンでは、彼らの動きはバレエのフォーメーションのように計算されたものになる。「この台詞の時には絶対にこの位置にいて」といった細かい指定がされる。俳優にそれぞれ居場所を与えていく作業は、とても緻密だ。「わかりました」と実践しながら動きを頭に叩き込んでいく。前2チームに比べると、とても素直な演技だ。勢いにまかせることなく、丁寧にシーンを積み重ねていく。

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総勢32名もいる出演者の誰もが、稽古場に入るたびに「おはようございます」ときちんと挨拶をする。そして、自分の出演するチーム以外の稽古も、静かに真剣に見つめている。

初めは男だらけの暑苦しい稽古場かと思っていたが、皆が礼儀正しく、爽やかな空気が流れている。3チームともまったく印象が違う舞台なのに、出演者14名×3チームの32名全員で、一つの『露出狂』という作品を創っているという一体感があった。

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『露出狂』は、9月30日(金)から10月10日(月・祝)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて上演される。

(撮影/御堂義乘)
(取材・文/河野桃子)

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