「マヤ…恐ろしい子…!」舞台『ガラスの仮面』観劇レポート!


9月16日(金)に、新橋演舞場で東京公演初日の幕を開けた『ガラスの仮面』。今回は初演(2014年・青山劇場)の舞台に新たなエピソードを加えた新バージョンでの上演となる。

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伝説の大女優・月影千草が上演権を有する幻の名作「紅天女」。その主役候補とされる天才・北島マヤは芸能界を追われ、仲間と企画した舞台も、大都芸能社長・速水眞澄の画策によりキャストから外されてしまう。一方、もうひとりの「紅天女」候補・姫川亜弓は、その美貌と努力とで着実にキャリアを築いていた。

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ある日、マヤは眞澄との言い争いの中で、大作「ふたりの王女」のオーディションがあることを知る。このオーディションに通れば、W主演として亜弓と同じ舞台に立つことができるのだ。圧倒的な演技力で大劇場出演のチャンスを掴んだマヤだったが、なかなか納得のいく演技ができない。そんな中、月影千草が倒れ、病院へ運ばれたとの報せが届く。果たしてマヤは「ふたりの王女」の演技で「紅天女」の正式な主役候補となれるのか…そして、決して顔を見せずマヤを応援し続ける“紫のバラの人”との関係は―。

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幕開きとともに花道を通り舞台に上がる月影千草(一路真輝)。この瞬間から観客は一気に“ガラかめ”の世界へと引き込まれる。本作で描かれるのは、マヤ(貫地谷しほり)が芸能界を追われ、さまざまな試練を経てふたたび「紅天女」への挑戦を誓う“復活”の物語だ。原作漫画では「忘れられた荒野」で使用されたエピソード等を織り交ぜ、劇中劇「ふたりの王女」の迫力も相まって、原作ファンの期待も120%裏切らない展開となっている。

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貫地谷は、普段は地味で目立たない少女が、演技をすることですべての人の心を奪うという天才・北島マヤ役を好演。スイッチが入った時の熱量と、眞澄に対する複雑な感情の表現の巧みな交差に惹きこまれる。オーディション場面等の原作再現度も秀逸だ。

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天才・マヤに対して常にコンプレックスを持ち続けながら、自らの道を究めようとする芸能界のサラブレッド・姫川亜弓を演じるマイコ。所作の美しさや女優ファッションを完璧に着こなすスタイルに加え、低音でしっかり語る台詞の安定感が素晴らしい。

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速水眞澄役の小西遼生は、仕事と恋、そしてマヤの母を結果的に死に追いやった罪悪感とで揺れる心情を繊細に表現。全身白のスーツをクールに着こなす姿が凛々しく映える。そんな眞澄の“恋敵”桜小路優役の浜中文一は、そっとマヤを見守りながら、眞澄に対してストレートな感情を見せる場面でしっかり存在感をアピール。ピュアな恋心の見せ方が非常に上手い。

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そしてマヤの師である月影千草を演じる一路の圧倒的な存在感が、本作をより高みへと引き上げているのは間違いないだろう。元宝塚男役トップスターの経験を存分に活かし、空間や声の使い方、劇中劇での佇まいなど、そのすべてが“伝説の大女優”そのものであった。

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約2時間半という上演時間内に、原作漫画の多くのエピソードとエッセンスを取り入れ、原作未読の観客も置いてけぼりにしない構成の素晴らしさと、舞台の中央に巨大な盆を配して巧みに情景を切り替える演出(G2)にも大きな拍手を贈りたい。

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連載開始から約40年、総発行部数5000万部を超える少女漫画の金字塔「ガラスの仮面」。当初は“演技以外とりえのない少女”マヤと、”すべてにおいて恵まれているお嬢様“亜弓とのシンプルなライバル関係が描かれていた演劇漫画であったが、次第に”天才“マヤに対して、コンプレックスと憧憬とを抱く”努力の人“亜弓との複雑な心情のぶつかり合いを深く見せる方向にシフトしていった稀有な作品でもある。

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未だ最終回を迎えていない原作が、漫画家・美内すずえ氏の手によりどんな結末になるのか…それぞれの想像をしながら、舞台上で生きるマヤや亜弓、月影先生の姿を楽しむのもいいかもしれない。

舞台『ガラスの仮面』は9月26日(月)まで東京・新橋演舞場にて公演中。

(取材・文/上村由紀子)

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