関ジャニ∞丸山隆平主演!苦悩に悶える悲劇の王『マクベス』ゲネプロレポート


アイドルグループ・関ジャニ∞の丸山隆平が主演を務める舞台『マクベス』が2016年6月26日(日)、東京・東京グローブ座で幕を開けた。夜に初日を迎えるという直前に、劇場ではゲネプロが行われた。合わせて囲み取材では、丸山に加え共演の遠藤要、安藤聖、三上市朗、窪塚俊介が登壇した。
シェイクスピア没後400年にあたる今年は、各地で彼の作品が上演されている。この『マクベス』は、『ハムレット』などと並び“シェイクスピア四大悲劇”の一つに数えられる名作だ。今回は鈴木裕美の演出により、現代にしかできない『マクベス』となっていた。

『マクベス』公開ゲネプロ_2

静かな客席に、重く、唸るような風の音が響く。突如、激しい殺陣のシーンが始まり、舞台は一気に11世紀のスコットランドへとなだれ込む。
勇敢で忠誠心のある人物と評判の武将マクベス(丸山)は、その剣の腕で襲いくる敵をなぎ倒す。そしてマクベス軍の勝利が確定。マクベスは一転、無邪気な笑顔で友人バンクォー(石田佳央)と喜びを分かち合う。明るくじゃれ合う姿は、丸山がいつもテレビで見せる姿を思い出させる。

しかし、直後、息のあった敵の兵士がマクベスに襲いかかる。「待て!戦争は終わったんだ!」。だからもう戦わなくていい・・・そう相手をなだめるマクベスだが、興奮した相手は聞く耳を持たない。マクベスはためらいながらも、身を守るために兵士と、その二人の兄弟を殺してしまう。

『マクベス』公開ゲネプロ_4

帰路についたマクベスを待ち受けていたのは、3人の魔物だった。魔物はマクベスに「領主となり、やがて王になる」と予言をする。
この3人の魔物は、奇怪なダンスと語り口で、この世の者ではない存在としての不安をかき立てる。演じているのは、さっきの戦争でマクベスが心ならずも手にかけてしまった、3人の兄弟だ。一人が何役も演じる今作、別のシーンで誰がどんな役を演じるかを気にかけて観ていると、「なぜあの役とこの役は同じ役者さんなんだろう」と想像が広がる。

マクベスが倒したのは、人望の厚いスコットランド王(三上)への反乱軍だった。その功績をたたえられ、マクベスは“領主”となる・・・魔物の予言は的中した。
そして王は、自分の息子(窪塚)に王位を継がせようと宣言する。やはり魔物の言う「やがて王になる」という予言は叶わないのか・・・。

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しかしマクベス夫人(安藤)は、夫が王になるという予言を実現するため、スコットランド王を殺害することをマクベスに促す。皆の前では貞淑な妻を演じながら、裏では夫の成功を貪欲に求める。丸山演じるマクベスが罪悪感でためらい、情けない姿をさらけ出すほどに、夫の尻を叩く妻の強さが際立つ。いつの時代も、肝が据わっているのは女の方なのか。ほかのシーンでも、女性演出家ならではの女性の描き方が垣間見える。

愛する妻に背中を押されたマクベスは、忠誠心や恐怖心を抱えたまま、王の寝首をかく。自分の手を汚してまで予言どおりの王位を手に入れたマクベスは、今度はその地位を失うことを恐れるようになる。多くの仲間や自分の忠誠心をも裏切った罪悪感から逃れるように、マクベスは次々とその手を新たな血で染めていくことに・・・。

忠誠心に従っていれば苦悩しなかったことは自分でも分かっているのに、欲に目がくらんで手を汚してしまう。現代のわたしたちだって、勉強や仕事をしなければいけないのにだらけてしまったりすることもあるし、好きになってはいけない人を好きになったりする。自分に勝てない弱さと苦悩を、丸山は身悶えしながら全力で演じた。そこにはアイドル・丸山ではなく、一人の人間が、己と戦う姿が丸出しになっている。誰しも、熱望のあまり罪を犯してまで手に入れた“王冠”があったら、手放せるだろうか・・・。

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4年ぶりに舞台主役を務める丸山は、「過去2度グローブ座で主役をやらせていただきましたが、毎回初心です。今回は、演劇に興味のないウチの父も『マクベスやるんだろー!』と言っていました」と、誰もがタイトルは聞いたことのあるシェイクスピア作品にやりがいを感じているようだ。遠藤は「アイドルの丸ちゃんじゃなくて、役者の丸山隆平が見られます」と太鼓判を押す。

また、2011年の『ギルバート・グレイプ』でも丸山と共演した三上はスコットランド王を演じるが、「この作品が決まった瞬間、(丸山から)『陛下!』と電話がかかって来た」と笑う。丸山は「嬉しくて」とはにかんだ。

丸山は今作について、「誰の視点で観ても、違って見えておもしろい。誰も見逃さないで欲しい。(見どころは)マクベスだけではないから、奥深く楽しんでいただけたら」と締めくくった。

『マクベス』は、6月26日(日)から7月24日(日)まで、東京・東京グローブ座で上演。

(取材・撮影/河野桃子)

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