中山優馬が“美”と“希望”を語る!舞台『それいゆ』ゲネプロレポート


6月1日(水)、東京・Zeppブルーシアター六本木にて、中山優馬主演舞台『それいゆ』東京公演が開幕した。5月26日(木)~29日(日)までの大阪公演を好評のうちに終え、いよいよ東京での上演となる。今回は、この東京公演初日の直前に行われたゲネプロの模様をレポートする。

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本作は、雑誌「少女の友」の挿絵、雑誌「それいゆ」「ひまわり」の出版などで知られ、戦中戦後を通して少女たちに夢と希望を贈り続けた中原淳一の半生を描いた作品。

1940年、中原淳一(中山優馬)は若くして挿絵作家・人形作家として確固たる地位と人気を得ていた。戦争が暗い影を落とす時代に、中原が挿絵を描く「少女の友」は、多くの少女たちのバイブルだった。そんなある日、「少女の友」編集長・山嵜幹夫(佐戸井けん太)は中原に「挿絵の少女画をモンペ姿で描いてくれないか?」と持ちかける。中原の絵を「敵性文化」だとする軍部からの圧力もあり懇願する山嵜に対し、中原はあっさりと「ならば辞めます」と言い放つ。それは、創作の場を自ら切り開いていく中原の“挑戦”の始まりだった・・・。

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中山自身が持つ華やかなオーラと、「美しく生きる」ことを信念とした中原のキャラクター性との相性は抜群で、大きな瞳を輝かせて“美”を語るその姿には自然と人を惹きつける魅力が宿る。
だが、この希望に満ちた明るさだけがこの作品の魅力ではない。もちろん希望と夢に生きた中原の姿が描かれるのだが、本作ではそれと同じぐらい彼の苦悩にも光が当てられている。

自分が理想とする美を追求するがゆえに、周囲にいた人びとは次第に離れ、やがては自分自身の心とも葛藤することになる。周囲に見せる快活な表情とは裏腹に、孤立しつつある自身の状況を認識しながら決して妥協することのできない情熱との狭間で苦しむ様子は、中山の真に迫る演技と、その心情を巧みに表現した演出とが相まって非常に印象的だった。

そして、この“周囲の人びと”の人生模様もまた、夢を追い続けた中原のものとは違った人間臭さがあり、作品をより一層深いものにしている。

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かつて“もんぺ姿の少女”を中原に書かせようとした「少女の友」編集長・山嵜は、雑誌を降板した後も人気の衰えない中原と再会した際、「“もんぺ姿の少女”を書かせることでお前を自分と同じ場所へ落とし、安心したかった」という強烈な嫉妬と自嘲に満ちた台詞を投げつける。

また、中原のアシスタント・桜木高志(辰巳雄太(ふぉ~ゆ~))は、高額なギャラに釣られて他紙に挿絵を書き、中原とトラブルになる。そして「僕は芸術家ではなくイラストレーター・・・求められるものを書いて生きていきます」という言葉を残し、恩師の下を去っていく・・・。

“天才”と呼ばれる人間だけが知る苦しみも当然あることだろう。しかし、そんなことを知り得る術もないような“凡人”達から発せられる生々しい言葉は、ある意味、中原の眩しさよりも痛切に心に響く。

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ただ、その一方で、人気作家や流行の歌手の「偽モノ」を売って財を成した男・五味嬉助(金井勇太)のようなクセ者や、借金のカタに五味と結婚させられながらも「女優になる」という夢を諦めない女・大河内舞子(桜井日奈子)、中原に見出され歌手として成功を収める天沢栄次(施鐘泰(JONTE))など、戦中戦後の暗い世相の中でも強く生きるキャラクター達からは、“強さ”や“希望”を感じることができた。

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時代に流されず信念を貫いた者、時代に取り込まれ信念を見失った者、時代をあるがままに受け容れしたたかに生きる者、時代に翻弄されながらも懸命に前を向く者・・・。光と影を織り交ぜつつ英雄譚のように語られる中原の半生と、彼を取り巻く様々な人間たちのコントラストが、この作品の一番の見どころなのかも知れない。

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中山優馬主演の舞台『それいゆ』は、東京・Zeppブルーシアター六本木にて6月5日(日)まで上演。

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