一枚の写真から始まる奇跡の物語 舞台『トンマッコルへようこそ』公演レポート


2016年5月4日(水)より東京・Zeppブルーシアター六本木にて、舞台『トンマッコルへようこそ』が開幕した。本作は、2002年に韓国・ソウルで初演を迎え、2005年には映画化され大ヒット。日本では、2012年1月に日韓演劇フェスティバルで翻訳上演され、2013年に再演されている。今回は、初日前に行われた公開ゲネプロのレポートをお届けする。

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演出は、2013年上演時と同じく、劇団桟敷童子の東憲司が手がけ、出演者には畑中智行、神永圭祐、永嶋柊吾、筒井俊作、山崎彬、平田裕一郎といった多彩な俳優陣が顔を揃えた。

このほかの出演は、木村玲衣、永嶋敬三、関根翔太、洪明花、劇団桟敷童子より原口健太郎、稲葉能敬、鈴木めぐみ、外山博美、川原洋子、もりちえ、深津紀暁、大手忍。

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_8

物語は、ある青年(山崎)の語りから始まる。作家であるその青年は、ある日一枚の古ぼけた記念写真を見つけたという。そこには、異なる軍服を着た兵士たちと村人が一緒に、皆笑顔で写っていた。

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_2

その写真が撮られたのは、朝鮮戦争の激しさ増す1950年代。ある日、山奥にあるトンマッコル村に、一機の戦闘機が不時着した。乗っていたのは、連合軍のアメリカ人兵士・スミス(イアン・マーティン)だった。スミスの話す言葉が分からず、右往左往する村人たちだったが、持ち前の明るさと大らかさで徐々に心を通わせていく。

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_4

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_3

時を同じくして、村には国防軍の隊からはぐれたヒョンチョル(平田)、サンサン(永嶋)、さらには人民軍の兵士であるチソン(畑中)、ヨンヒ(筒井)、テッキ(神永)も迷い込んできて、鉢合わせしてしまう。互いに武器を向け合い、どちらも引かない膠着状態が生まれるが・・・。

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_6

トンマッコルとは、“子どものように純粋な”という意味。その名の通り純粋に、戦争を知らない村人たちは軍人たちの意を介さず、同じようにいたわり、もてなし、温かく迎え入れる。そんな村人たちに、戸惑いながらも、少しずつ強張った心を解きほぐされていく兵士たち。

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_7

戦争を描いた物語だが、時にユーモアを交えながら、人が生きる営みを優しく描いている。“争うことを知らない”というのは、ファンタジーなのかもしれない。しかし地面には、どこにも何も、分け隔てる線など引いていないのだ。心の機微を丁寧に表現する役者たちが、“人”という存在を愛おしく伝え、作品に込められた普遍の願いを「今」という時代に再び響かせていた。

『トンマッコルへようこそ』公開ゲネプロ_5

舞台『トンマッコルへようこそ』は、2016年5月8日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて上演。

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