だから“演劇”はやめられない!劇団青年座『フォーカード』観劇レポート


2016年4月15日(金)より、東京・紀伊國屋ホールにて劇団青年座『フォーカード』が開幕した。1954年の創立以来、新作戯曲の上演を続ける青年座。今回の脚本もラッパ屋の鈴木聡による書き下ろしで、演出は宮田慶子が手がけた。鈴木と宮田のタッグは、『妻と社長と九ちゃん』(2005年初演)、『をんな善哉』(2011年初演)に続く3作目となる。笑い声に溢れた公演初日の模様をレポートする。

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舞台は、昭和の気配ただよう中野坂上の喫茶店「憩」。お店には、近所のOLやサラリーマン、近所の老人などが集い、思い思いの時間を過ごしている。そこに呼び出された神埼由佳里(野々村のん)、中込彰(大家仁志)、谷義人(横堀悦夫)。彼らは以前所属していた劇団「新流」俳優養成所の同期だった。彼らを呼び出したのは、同じく養成所同期の横山千鶴(増子倭文江)。

『フォーカード』舞台写真_2

養成所時代、“フォーカード”と呼ばれるほどの実力者だった4人。しかし、さる理由から劇団員に昇格できず、演劇と離れそれぞれの人生を歩んできた。久しぶりの再会、言葉を交わせば容易く記憶は蘇る。そんな彼らに、千鶴は“あること”を持ちかける。

「芝居を打たない?この4人で」
「あたしたちの演技力で大金を稼ぐのよ」

千鶴が提案したのは、ペテンの片棒を担がないかというまさかの提案。当然、戸惑う3人だったが・・・。

『フォーカード』舞台写真_3

全体を通して、練りこまれた脚本と小粋な演出、それに応える役者陣が大変素晴らしい。まさに、老舗劇団の本領発揮だ。要所要所に、コンゲームの代表作である映画『スティング』へのオマージュも感じさせながら、しっかりとした起承転結が、客席を一斉に笑いの渦に巻き込んでいく。時事ネタを織り込むことも忘れない。

また、“フォーカード”以外にも、喫茶店に集う近所に住む年老いた母と息子、先輩と後輩、男と女・・・それぞれの関係を通して、日常生活の「あるある」的瞬間をコミカルに際立たせ、“演じる”という行為に多角的なギミックを効かせている。

『フォーカード』舞台写真_4

人は生きる上で、どこか演じあっているものだ。楽しさにも、悲しみにも、絶妙なスパイスを効かせてくれる。だから人生はおもしろい。だから“演劇”はやめられない。

劇団青年座221回公演『フォーカード』は、2016年4月15日(金)から4月24日(日)まで東京・紀伊國屋ホールに上演。

撮影:坂本正郁

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