業が詰まった三人の女の陰影。中谷美紀主演舞台『猟銃』公開ゲネプロレポート


『レッド・バイオリン』(1998年公開)でアカデミー賞を受賞、NYCメトロポリタン・オペラも手掛けるカナダの演出家フランソワ・ジラールが、2011年に井上靖の名作小説を日本人女優の中谷美紀を起用して完全舞台化した『猟銃』。国内外で数々の賞を受賞して、鳴り止まない喝采を受けた本作が2016年4月2日(土)より、東京・パルコ劇場にて5年の歳月を経て再び幕を開ける。今回は、本作の開幕前日に行われた初日前会見と公開ゲネプロの様子をレポート。

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本作は、ある男の不倫の恋を、妻、愛人、愛人の娘、それぞれからの三通の手紙によって浮き彫りにしたラブストーリー。中谷はこの三人の女性を一人で演じわける。三人の女性から手紙を送られた男(三杉譲介)は、初演時に引き続きシルク・ドゥ・ソレイユ『LOVE』サージェントペパー役等で知られるロドリーグ・プロトーが抜群の身体能力で象徴的に演じる。

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初日前会見は和やかな雰囲気で始まった。まず、司会者から本作の魅力を尋ねられると、演出家のジラールは「原作の『猟銃』は限りなく深みのある作品。そんな『猟銃』と再び向き合い、中谷の女優としての魅力を掘り下げることができた」と再演による更なる深化を語り、共演のロドリーグは「今回の稽古ではお互い向かい合って触れ合える距離で稽古することができ、中谷の感情を受け止めることができた」と中谷との深まった関係を魅力と明かした。また、中谷もロドリーグ・プロトーには失礼だが、と前置きした上で「初演時は一人芝居という意識が強かったが、今回、ロドリーグと向かい合って稽古してより深い感情を持つことができた」と再演で演技が深まったことを説明した。

中谷は演出家のフランソワについて聞かれると、「『猟銃』と出会うまで舞台は逃げていたんです。でもフランソワさんとの出会いによって舞台にまつわる様々なことが払拭された。私にとってフランソワは演劇の母でもあり父でもある」と語り、フランソワも中谷について「これまでたくさんの俳優と作業を共にしてきたが、一番満足出来るコラボレーターであった」と互いに多大な尊敬と信頼を寄せていることを明かした。

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舞台は三部構成になっており、愛人の娘の薔子、妻のみどり、愛人の彩子からの手紙によって語られる。また、中谷の華麗なる語り口の変化によって舞台美術や衣装も変容していく。植物、石、着物など日本的美しさが広がる中で、中谷による一人三様の陰影はどれも息を呑む程美しい。また、役柄によって変わる中谷の演技は常に新しく、演技の振り幅に驚かされた。

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中谷が特に気に入っているという愛人の彩子による「あなたは愛することを望みますか、愛されることを望みますか?」という台詞の箇所では、この舞台を決定的なものとする究極的な問答で人間の深みが表現されていた。「身を削る思いで演じている」と語った中谷の真骨頂が本作で目撃できるだろう。

中谷美紀主演舞台『猟銃』は、2016年4月2日(土)から4月24日(日)、東京・パルコ劇場にて上演。その後、新潟、京都、豊橋、兵庫、北九州で上演される。

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