小泉今日子が男たちを惑わせる・・・M&Oplaysプロデュース『家庭内失踪』公開舞台稽古レポート


2016年3月11(金)より東京・本多劇場にてM&Oplaysプロデュース『家庭内失踪』が開幕した。作・演出を手がける岩松了と、M&Oplaysが定期的に行っているプロデュース公演であり、2015年3月上演の『結びの庭』以来の新作公演となる本作。岸田戯曲賞受賞作品『蒲団と達磨』の後日譚ともいえる、笑いと謎に満ちた岩松的ホームドラマを、風間杜夫、小泉今日子、小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介、そして役者としても出演する岩松が、絡み合う人間模様を多角的に描き出す。初日に先駆け、同劇場では公開舞台稽古が行われた。

関連記事:小泉今日子&風間杜夫が倦怠期の夫婦に!M&Oplaysプロデュース『家庭内失踪』

高校の教師をしていた野村(風間)と、その後妻で年の離れた女・雪子(小泉)。その彼女ももう40歳を過ぎ、夫は定年退職。2人の間には倦怠の空気が漂っている。そこへ、雪子にとっては血のつながらない前妻の娘・かすみ(小野)があらわれる。かすみは夫に嫌気がさして実家に帰ってきたのだった。微妙な3人の関係に、かすみの夫の部下・多田(落合)と、かすみの夫の知人・青木(坂本)の2人は、夫の元へ帰るようにかすみを説得するために訪れる。そして、行方をくらましていた近所の男・望月(岩松)が絡み、事態は思わぬ方向へ転がり始める…。

『家庭内失踪』_2

冒頭での、蒲団が敷かれた和室で交わされる風間と小泉のやり取りは、『蒲団と達磨』を彷彿とさせる。ここだけでも、岩松作品ファンには堪らないシーンだろう。風間と小泉が演じる夫婦の淡々としたやり取りからは、年が離れた倦怠期の心の機微や、すれ違う様が、言葉の端々から感じられる。風間と小泉の二人は2008年に岩松が作・演出を手掛けた舞台『恋する妊婦』でも夫婦役を演じており、絶妙な空気感をかもし出す。

『家庭内失踪』_3

やがて、雪子が野村を軽蔑していると感じたかすみは、多田が雪子に気があると伝える。しかし、多田が密かな恋心を抱いている相手はかすみ。そのことを知っていた雪子は、多田に好意があるようなフリをみせ始める。それはかすみに自覚を促すためか、夫への復讐にも見えるあてつけなのか、それとも雪子自身の本心なのか・・・小泉演じる雪子の妖艶な振る舞いに翻弄される男性陣。雪子の真意に何があるのか、観客ですら惑わされてしまうほど。

『家庭内失踪』_6

そして、夫との関係を前に進めることに怯えるかすみと、後妻という関係からかすみとの距離があった雪子。二人は理解し合えるのだろうか、それとも・・・。 小泉と小野、大人の女たちのやり取りは、落ち着いた口調の中に何とも言えない緊張感をはらむ。

『家庭内失踪』_5

内面に様々な感情を抱えギクシャクしていく登場人物たちの会話からは、日常に潜む狂気が独特のユーモアとおかしみを漂わせながら溢れ出し、岩松作品らしい唯一無二の世界観へと引きずり込んでいく。雪子は何を望み、そして何を選択するのか・・・実力派の俳優陣が織りなすストレートプレイが引き込む、会心の一作だ。

舞台『家庭内失踪』は2016年3月11日(金)から3月23日(水)まで東京・本多劇場にて上演。その他の日程は下記のとおり。

3月27日(日) 大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
3月29日(火)・3月30日(水) 名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
4月1日 (金) 岐阜・大垣市民会館 大ホール
4月3日 (日) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
4月6日 (水) 富山・富山県民会館ホール
4月8日 (金) 広島・JMSアステールプラザ大ホール
4月10日(日) 福岡・そぴあしんぐう大ホール
4月12日(火) 新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
4月15日(金) 宮城・電力ホール
4月17日(日) 福島・いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール

撮影:柴田和彦

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。