劇団☆新感線『乱鶯』ゲネプロレポート 悪と忠義と信念と恋と・・・ビターな味わいの新・いのうえ歌舞伎、誕生!


2016年に劇団☆新感線が送る第一作は、約6年半ぶりの新橋演舞場での新作『乱鶯(みだれうぐいす)』。2016年3月5日(土)から4月1日(金)まで新橋で上演された後、大阪、北九州で上演される。今作は、これまでとひと味違い、いのうえ歌舞伎の過去作『阿修羅城の瞳』『アテルイ』『朧の森に棲む鬼』『蛮幽鬼』のようなファンタジー要素は省かれている。江戸時代の下町を舞台にした王道の時代劇だ。“ハードボイルド時代劇”と銘打たれ、主演の古田新太をはじめ、稲森いずみ、大東駿介、橋本じゅんらがほろ苦い大人の人生ドラマを演じる。

関連記事:劇団☆新感線『乱鶯』製作発表 初の本格時代劇も古田新太が「しょせん新感線になる」と断言

『乱鶯』公開ゲネプロ_4

舞台は江戸、天明五年の春。巷を賑わす盗賊・鶯の十三郎(古田)は、人を殺めず貧しい人からは盗まない主義の盗賊の頭として名を馳せていた。しかし、悪事を企む奉行所の与力・黒部源四郎(大谷亮介)の策略で、十三郎は部下の裏切りに遭ってしまう。花道から飛び出した十三郎が、冒頭から激しい大立ち回りで観客を一気に時代劇に引き込む。斬り斬られ、瀕死の怪我を負っていく古田の汗から色気が立ち上る。

盗賊一味は皆殺しされ、十三郎はひとり重傷を負う。そんな彼を救ったのは、幕府目付の小橋(山本亨)、居酒屋の夫婦・勘助(粟根まこと)とお加代(稲森)だった。「盗賊から足を洗うなら見逃す」という小橋の言葉を受け、十三郎は仲間を殺した黒部源四郎への恨みを噛み締める。そして時は流れ・・・7年後。

『乱鶯』公開ゲネプロ_3

病で勘助が亡くなった居酒屋「鶴田屋」を支えるのは、女将のお加代と看板板前の源三郎(古田)だった。名前を変え、すっかり町人として馴染んだのもつかの間、命の恩人である小橋の息子・勝之助(大東)が店に現れ「ある盗賊を追っている」と言う。恩返しのつもりで勝之助に手柄を立てさせたいと考えた十三郎は、一肌脱ごうとするのだが・・・。

『乱鶯』ゲネプロ_6

古田演じる十三郎の心の動きが、物語の醍醐味となる。仲間を皆殺しにされた恨みや、恩人・小橋への忠義、平和な居酒屋を営むお加代への恋心など、いくつもの感情が絡み合う。大人の男が胸に秘めた複雑な思いたちが、古田の放つ色気により、いっそう際立つ。

反面、真っすぐでちょっと間抜けな勝之助や、十三郎とお加代を見守る勘助など、周囲の面々は賑やかで、新感線ならではの勢いでしっかりと笑わせてくれる。古田や大東を中心にした派手な殺陣も健在だ。王道の時代劇というシンプルなストーリーによって、今までのいのうえ歌舞伎よりも人間ドラマが丁寧に描かれる。キャストの年齢の幅や、笑いや憂いの幅が広がり、“ビターな味わい”と銘打つ通り、新たな表現に進もうとする人気劇団の挑戦が感じられた。

『乱鶯』公開ゲネプロ_5

会見で主演の古田は「見どころは大東くんの頑張りと、年寄り(十三郎)の頑張りです」と若手にバトンを渡す。大東は「稽古時間の8割を使ってしまっていたので、頑張ります」と先輩俳優の前で姿勢を正した。古田は作品について「後半は血なまぐさいけれど、前半はマヌケばかり。愉快ですよ。大掛かりで遊園地のアトラクションのようです。絵新橋演舞場まるごと『乱鶯』にします」と意気込みを語っていた。

いのうえ歌舞伎《黒》BLACK『乱鶯』は、2016年3月5日(土)から4月1日(金)まで東京・新橋演舞場にて上演。その後、4月13日(水)から4月30日(土)まで大阪・梅田芸術劇場、5月8日(日)から5月16日(月)まで北九州・北九州芸術劇場にて上演される。

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。