ついにベールを脱ぐ!つかこうへい七回忌特別公演 新作未発表戯曲『引退屋リリー』稽古場レポート


2016年2月18日(木)より東京・紀伊國屋ホールにて開幕するつかこうへい七回忌特別公演 新作未発表戯曲『引退屋リリー』。本作は、1989年の『幕末純情伝』上演時に“予告編”として存在が明かされたが、その後一度も上演に至っていないという幻のつか作品。つかが亡くなり七回忌を迎える今年、つかこうへい事務所恒例となっている春の紀伊國屋ホール公演で、ついにそのベールを脱ぐこととなった。開幕間近に迫る2月某日、白熱するその稽古場を取材した。

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時は敗戦直後、マッカーサー統治下の日本。舞台は、泣く子も黙る自殺の名所“犬島”。「あの島に入って生きて帰ったヤツはいない・・・」しかし、3日前に島に入った親子の死体が上がらず、困惑する島民たち。刑事・二階堂(馬場徹)は問いかける。「本当にあの島に入って生きて返ったヤツはいないのか?」そこへ現れた映画監督の山崎(山崎銀之丞)。「ここ数日、島が騒ぎ出すんですよ・・・こういう日は、私の芸術的インスピレーションが沸いてくるんですけどね!」そこへ、一隻の船が戻ってくる。「島に入って生きて返ったヤツはいねぇ。島に入って帰ってこれるのは、俺たち島守人だけだ・・・!」しかし、船には一人の女の姿が。乗っていたのは、3日前に父親と一緒に犬島に入った一之瀬玲子(祐真キキ)だった・・・。

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通し稽古開始前には、シーンごとの細かい動きの確認が行われていた。使われている楽曲と役者たちの動きを合わせるために、気になる箇所を何度も繰り返す。踊る町田慎吾と動きを合わせる祐真は「私が動いてから、こう来た方がいい?」などとお互いに案を出し合い、タイミングを探る。そこに絡む宮崎秋人と音楽を交え、パズルのピースがハマるようにベストな瞬間が生み出されていく。

演出を手がける岡村俊一は、要所要所で「もっとそこ(の台詞)は真面目な方向に」「(背筋が)キツいところまで伸びてみて」などと、言葉と身体の両方に方向づけをしていく。その言葉を受け、即座に反応し芝居を変化させる役者たち。台詞やト書きを文字通りに受け止めるのではなく、その台詞の裏に流れる感情、行動に伴う人間の本質的な部分を抉り出していくような手探りの稽古が続いた。

本作はつかの未発表戯曲だが、岡村曰く、作中に出てくるモチーフは『熱海殺人事件』や『蒲田行進曲』など、様々な形でつかの別作品に登場しているという。確かに、稽古場取材で公開された冒頭部分でも、『熱海殺人事件』の木村伝兵衛部長刑事と大山金太郎のシーンを彷彿させるシーンや台詞が登場していた。

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また、つかに見出された二人の名優、山崎と馬場の掛け合いは、往年のつかファン、次世代のつかファンどちらの胸も熱くさせるのではないだろうか。存命時のつかを知る者、つか亡きあと挑む者、つか作品を未来に繋ぐ者たちが板の上で焦がす熱い生き様を、楽しみにしたい。

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つかこうへい七回忌特別公演 新作未発表戯曲『引退屋リリー』は、2016年2月18日(木)から3月7日(月)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演される。

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