村井良大×ユナク出演 『RENT』開幕レポート!“今、この瞬間”を生きる!


9月8日(火)に東京・日比谷シアタークリエにて初日の幕を開けた『RENT』。1996年にNYの小さな劇場で誕生し、その後わずか2ケ月でブロードウェイに進出して数々の逸話を残した“伝説のミュージカル”だ。日本での上演は2012年以来3年振り。今回も全キャストがオーディションで選ばれ、アンディ・セニョールJr.がオリジナルであるマイケル・グライフ演出のリステージを担当した日本版『RENT』の模様をお伝えしよう。

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20世紀終わりのNY・イーストヴィレッジ・・・クリスマスイブ。映像作家のマークはロックバンドのヴォーカル、ロジャーとロフトで暮らしているが、家賃(RENT)も払えず、電気や暖房も止められる始末。そんな中、暴漢に襲われた大学講師のトム・コリンズがストリートドラマーのエンジェルに助けられ、ロフトにやって来る。だがマークの顔色は冴えない。なぜなら恋人のパフォーマー、モーリーンに振られ、彼女には新しい恋人=ジョアンヌがいると聞いたからだ。

一方ロジャーは階下に住むSMクラブのダンサー、ミミと出会うが、彼には悲しい過去と、自らの問題もあってなかなか彼女に心を開くことができない。貧困、ドラッグ、HIV、立ち退き問題…。様々な問題が彼らを取り巻く中、次第に季節は過ぎ、2度目のクリスマスイブがイースト・ヴィレッジにやってきた・・・。

鉄骨で組まれた可動式の二階建てセット。二階部分のセンターでバンドの生演奏が始まると、観客は一瞬にして『RENT』の世界に引き込まれる。マークを演じる村井良大は前半で“傍観者”としてカメラを回し続ける自分の居方に悩み、ハロウィンの辺りからその感情を爆発させていく。彼の「僕はここにいるのに映像に僕の姿は映っていない」という台詞が切ない。エンタステージのインタビューでも語っていた通り、HIVポジティブではないマークがなぜそこにいるのか、そしてどうしてカメラを回し続けるのか…村井マークの佇まいから彼の心情とその答えがしっかり伝わり胸に響いた。個人的な感想だが、ここまでマークが観客と『RENT』の世界を繋ぐ橋渡し役に思えたのは今回が初めてかもしれない。村井の地に足の着いた芝居と、海外ミュージカルへの出演は初めてと感じさせない安定感のある歌声で物語を牽引していく姿が強く心に残った。

 『RENT』

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ロジャー役のユナクは繊細さや優しさ、ある種の弱さを前面に押し出した役作りをしているように感じた。前の恋人が悲しい死を迎えたことへの思いから、ミミの気持ちを受け止められない揺らぎや、ミミも自分と同じ病と知った時の彼女に対する溢れる思いが素直に伝わってくる。カーテンコールでユナクの目が真っ赤だったのは、ロジャーとして瀕死のミミに向き合った芝居の名残と、日本の舞台で日本語の台詞を語って舞台に立つという凄まじいプレッシャーを超え、一つの形を示したことの彼の想いの現れだったのかもしれない。二幕で舞台の上下に分かれてマークとロジャーの二人が歌う「What You Own」は特に強く響いた。

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パフォーマンスの場面で100%心をオープンにし、観客に「ムー」の渦を巻き起こした上木彩矢のモーリーン、華のある姿で純粋な心を持つエンジェルを演じるIVAN、そのエンジェルを全力で支えながら静かに愛し続けたトム・コリンズ役の加藤潤一、確かな歌唱力でモーリーンとのデュエット「Take Me Or Leave Me」をパワフルに成立させた宮本美季ら、カンパニーの面々も個性派ばかり。『RENT』を愛する人たちの思いは、今日も日比谷の劇場で確かに息づいているとしっかり感じさせるステージだった。

ミュージカル『RENT』は2015年10月9日(金)までシアタークリエ(東京・日比谷)にて上演中。

(文中のキャストは筆者観劇時のもの)

(文 上村由紀子)

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