小出恵介、激動の時代・昭和を野心的に成り上がる!『虹とマーブル』観劇レポート


2015年8月22日(土)より、東京・世田谷パブリックシアターにて上演が始まった『虹とマーブル』。本作は、M&Oplaysと劇団ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕によるコラボレーションの最新作。『MIWA』(2013年)以来の舞台出演となる小出恵介を主演に迎え、1960~1980年代にかけた戦後の高度成長時代に、社会の底辺から成り上がっていく男を中心とした人々の姿を3幕構成で描く。

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1960~1980年台といえば、日本が最も激しい変化を遂げた時代。目まぐるしく変貌を遂げる時代の姿が、衣装やヘアスタイルなどからも垣間見える。幕間であっという間に姿を変える舞台美術も実に見事で、その鮮やかさに目を奪われることだろう。ストーリーはアップダウンの激しいドラマチックな展開が続き、約3時間の中にそれぞれのキャラクターの30年の人生が詰まっている。

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金を儲け、成り上がりたいという野心を抱く鯨井紋次(小出恵介)は、意気投合したやくざの陰山桂三(小松和重)に商売の話を持ちかけた。そこへ現れた腹違いの弟、南田静馬(木村了)もそれに加担。政界の大物を顧客に持つ銀座のクラブオーナー元吉冬香(ともさかりえ)の援助を得て、商売は軌道に乗る。ある日、紋次は芹沢蘭(黒島結菜)という少女に出会い、彼女を女優に仕立て映画やプロレスといった娯楽産業へと食い込んでいく。快進撃を続ける紋次だったが、ある興行を巡り冬香と対立、仲間たちは徐々に紋次の元を離れ、やがては蘭までもが去っていってしまう。起死回生を狙った紋次は、やがて国を揺るがす一大収賄事件に関わっていく…。

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時に悪にまみれながらも前へ前へと突き進み、生き生きと昭和という時代を体現していく小出と、静かに知略を巡らせる木村の姿は、兄が“動”なら弟は“静”、という対比で二人の関係性を浮かび上がらせる。ヒロインの黒島はこれが初舞台となるが、その振る舞いは実に堂々としたもの。みずみずしい演技で、器の大きさを見せた。会見の時、「(倉持がイメージしたため)『極道の妻たち』を観て役作りをした」と話していたともさかは、普段の彼女からは想像もつかない凄みを醸し出し、小松はやくざな男という役柄だが、生きる道を選ぶ難しさを滲ませる。小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡といった脇を固める俳優陣も変幻自在にそれぞれの時代に現れ、8人で芝居を作っていることを忘れさせるほどの活躍ぶりだった。

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劇中で、蘭が観た映画『紳士は金髪がお好き』のある一節が登場する。マリリン・モンロー演じるショーガールが言った「四六時中お金の心配をしていたら、相手を愛する暇がないじゃない」という台詞だ。満たされた現代の心に、この舞台とこの台詞はどう映るのか。

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M&Oplaysプロデュース『虹とマーブル』は、2015年9月6日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演中。その後、島根・広島・福岡・宮城・大阪・愛知・静岡と全国で公演が行われる。お見逃しなく!

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