【稽古場レポート】こまつ座『きらめく星座』


昭和15年の浅草で、戦争に翻弄される小さなレコード店一家の姿を描く『きらめく星座』。井上ひさし戯曲の中でも傑作と呼び声高い本作が、9月にこまつ座によって上演される。5年ぶり7度目の上演となる今回は、木場勝己、久保酎吉ら前回公演から続投のキャストに加え、新たに秋山菜津子、山西惇ら実力派、そしてストレートプレイ初出演となる田代万里生が参加するなど注目の顔ぶれとなった。

8月都内某所、佳境となっている稽古場を見学させていただけることに。この日の稽古は物語全体では後半となる2幕5場。オデオン堂に、秋山菜津子演じる妻・ふじが食料を持って帰宅してきた場面から始まる。間借り人・竹田(木場)が偶然見つけた「星めぐりの歌」の楽譜を見て、歌を口ずさむふじ。そこへ夫である傷痍軍人・高杉源次郎(山西)と外出していた娘、みさを(深谷美歩)が帰宅。その日の出来事を話していたところ、高杉は近所で脱走兵ゆえ身を隠していた一家の長男・正一(田代)を見つけて…という場面だ。

体中から若さとエネルギーが溢れるような正一の登場シーンとその後の高杉の独白、ワンシチュエーションの中でもさまざまなドラマがギュッと詰め込まれている。緊張感の中、ノンストップで5場の最後までが終了する。

一息つくかとおもいきや、それまでは時折演出助手と何かを話すだけで、稽古を止めずに見ていた演出家・栗山民也が席を移動。教室のような机の配置になり、俳優と向かい合って1箇所1箇所の細かい指摘に入っていく。「仕事をしたの」という台詞の「の」のニュアンス、持って帰ってきた食料を扱う手のしぐさ、台詞を言っている時の体の角度…ときに自分でやってみせながら、一つずつ俳優と確認しチェックしていく栗山。俳優たちもペンを片手に台本に指摘を書き込んでいき、その顔は真剣。さながら学校のようだ。

歌唱指導のスタッフから、「星めぐりの歌」の2番、ピアノと歌の掛け合いに関して指摘が入る。音楽が重要なファクターとなる井上ひさし作品だけに、楽曲を舞台上で演ずる際も細かい表現が求められるようだ。

20分ほどみっちり確認を終え、一息休憩を入れることに。張り詰めていた稽古場にリラックスした雰囲気が充満する。しかし引き続き栗山に質問を続ける秋山、ピアノの弾き方についてスタッフに相談をしている後藤と、みな作品を作り上げるためには少しの時間も惜しいようだ。

作者・井上ひさし自身も、作品に関して強い愛着を持っていたと言われるこの作品。物語の中でうたわれるのは不変のテーマであり、そして今だからこそまた新たに感じられるものがあるはずだ。

こまつ座第106回公演『きらめく星座』は、9月8日(月)より紀伊國屋サザンシアターで上演される。

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