星たちの便りが伝えるものとは ミュージカル『シデレウス』レポート【財木琢磨×少年T×富田麻帆 ver.】


2022年6月30日(木)まで、東京・自由劇場にてミュージカル『シデレウス』が上演されている。本作は、2019年4月に韓国で初演を迎えた3人芝居ミュージカル。今回は、クワトロキャストによる回替わり上演となっており、本記事では、ゲネプロに出演したチーム・カシオペアの財木琢磨、少年T、富田麻帆の公演の模様をレポートする。

約2年をかけて制作された本ミュージカルは、評論家や観客から好評を博し、2020年8月の再演、同年10月に2か月に渡る延長公演、そして2022年7月26日から10月16日には韓国で再び上演が決定しており、8月には中国人キャストによる上海公演が予定されているなど、アジア全域で話題となっている。時代の壁に遮られ言えなかった真実を命をかけて研究した2人の学者ガリレオとケプラー、そしてガリレオの娘で修道女マリア、3人の物語を3人芝居で描く。

クワトロキャストは、それぞれ星座の名前が付けられた4組に振り分けられており、それぞれ4公演ずつ出演する。出演は<オリオン>のガリレオ役に石井一彰、ケプラー役に小野塚勇人(劇団EXILE)、マリア役に石川由依。<ペガスス>のガリレオ役に鮎川太陽、ケプラー役に神永圭佑、マリア役に七木奏音、<ペルセウス>のガリレオ役に井澤勇貴、ケプラー役に吉田広大、マリア役に礒部花凜。そして、<カシオペア>のガリレオ役は財木、ケプラー役は少年T、マリア役は富田麻帆という配役になっている。

あらすじ

修道女マリアは、父親のガリレオから自分の部屋に隠してある手紙を燃やしてほしいという、一通の手紙を受け取る。その手紙の差出人は全てケプラーという聞き慣れない名前であった。太陽が地球の周りを周回すると信じられていた1598年、数学者でイタリアの大学教授でもあるガリレオは、ドイツの数学者ケプラーから「宇宙の神秘」という一冊の本とともに宇宙への研究を提案される。ガリレオは一度は断ったものの、粘り強いケプラーの説得により、彼の仮説が間違っていることを証明するための研究を行う。そうした中、言及することさえもタブー視されていた「地動説」の論拠を示せば、とんでもないこの仮説が正しいかも知れないという結論を下すことになる。

取材会では、ゲネプロを終えた財木が「やっとここまで来たかという気持ちです。今からが始まりではありますが、一つ達成感はあります」と安堵の表情を見せると、初日の公演を控えて「通し稽古を2回するというのは初めてなので、準備を整えなければと多少の焦りはありますけど、冷静に落ち着いて初日をトップバッターとして迎えられればいいなと思います」と気を引き締めた。

少年Tは「ゲネプロではケプラーを全力で叫んで走って演じたので、すごく暑いです。ゲネプロを終えて1番思うことは衣装を脱ぎたいなというところですね(笑)」と茶目っ気たっぷりにゲネプロの感想を述べると、「この後、本番があるので、その際には衣装をしっかり着て臨みたいと思います」と意気込み、財木と富田を笑わせた。

初日を迎えて、富田は「すぐ初日なので、まだ調整することもいっぱいあると思いますので調整しつつ、初日はまた、フレッシュな気持ちでリセットして、リフレッシュして、すっきりして良い初日を迎えられたらなと思います」と期待を寄せた。

作品の魅力について、財木は「この作品はガリレオとケプラーの知りたいという探究心とか、好奇心がすごく旺盛で、そこにパワーをもらえるのが魅力の一つだと思っています」と語ると、「なので、そういうパワーを皆さんに全公演余すこと無く届けて、明日からの活力になってもらえると嬉しいなという思いで演じていきます」と意気込みを語った。

続けて、クワトロキャストとなる本作において、カシオペアのアピールポイントを「他のチームと楽屋でお話する時に、Tさんの作るケプラーがすごく印象的というお話がありました」と挙げると、「すごく突拍子もないことをやったりするんです。初めての衣装付き通し稽古の時に、自分の力加減が分からず、衣装をズタズタに破るぐらい(笑)。とにかく全身でお芝居をしてくれて、それを受けて、いろいろ物語が進んで行く感じで、うちのチームを良い意味で引っ張ってくれていると感じています」と裏話を交えながら称賛。

すると少年Tが、ゲネプロで指をついてしまい、登壇中も指のマッサージをしていると告白。そんな少年Tに、財木は「怪我だけはないように」と言葉を掛けつつ、「何が起こるか分からないのがうちの魅力かなと思います」と自分の言葉通りの少年Tの突拍子もない行動に笑みを浮かべた。

<カシオペア>財木琢磨×少年T×富田麻帆レポート

まず目を引くのが舞台セットだ。上手にガリレオの研究室と下手にケプラーの研究室があり、舞台中央には目を引く巨大な天球儀を思わせるセットが配されている。イタリアとドイツで距離の離れた手紙での言葉の交流を演者たちがモノローグのように語りながら、八百屋舞台のような客席に向かって坂となっている天球儀の十二星座のシンボルが刻まれた周りを歩み、さらに照明により夜空に浮かぶ星空と星座が相まって、ガリレオとケプラーが観測する宇宙にいるような没入感を観客にもたらしている。

その演出を彩り、本作を支えるのが全15曲のミュージカル・ナンバーだ。夜空に瞬く星々とそこに夢をはせる2人の心情を軽やかに描く楽しいナンバーから、やがて異端として苦難へと追い込まれていく2人の悲しみと決意に満ちたナンバーに、父であるガリレオへの思いと修道女としての立場で苦悩するマリアの心情を綴るナンバーなど、数々の美しいメロディーによって壮大な世界をステージ上に創造している。

ゲネプロでは、ガリレオ演じる財木が、取材会での自身の言葉どおりにパワーがもらえる探究心と好奇心にあふれる序盤の姿から、やがて宗教裁判により苦境に立たされながらも人生を賭して立ち向かっていく姿を熱演。

少年Tは、宇宙への探求に没頭しつつも常に前向きなケプラーを、目をきらきらと輝かせ、自由奔放に、そして天真爛漫に演じていた。さらに富田は、父の研究と修道女としての狭間で揺れ動くマリアの心の機微を繊細に表現。時代に翻弄されていく3人の熱量のあふれる演技と歌声が三位一体となり、心を揺さぶる作品へと仕上げている。

カシオペアのみの公開ゲネプロではあったが、取材会からもそれぞれのチームの個性が垣間見え、四者四様の公演が楽しめる作品であるというのがうかがえる本作。幻想的なステージセットと照明、濃密な3人芝居と胸打つミュージカル・ナンバーの数々が、観る者すべてに星たちの便りを伝えてくれる作品となっている。

ミュージカル『シデレウス』は、6月17日(金)から6月30日(木)まで東京・自由劇場にて上演。上演時間は約110分(休憩なし)を予定。6月25日(土)・6月26日(日)の4公演ではticketbook ONLINE/Hulu/ドワンゴにてライブ配信も実施。

ペガスス、ペルセウス、オリオン、コメント紹介

――チーム・ペガススの強みは?

<ペガスス>
鮎川:各チーム4公演しかないんですけど、作品がとても良い作品なので、一つ一つに誠意を込めて魂を込めて表現できるので、一回一回大切にしようと精一杯やることを心がけています。セットも楽曲も作品もとても良いので、韓国から日本へと国を超えてお客さんも違うと思いますので、そこも楽しんでいきたいと思います。

神永:どのチームよりも歌の面が強みになればいいかと思っています。僕も太陽くんもたくさん練習をしてきましたが、特に3人で歌う場所で、リズムが合うようにと見合って練習したり、それでもできない時は、手を繋いで3人で円を作って練習をしたりとやってきました。それがしっかり結果として本番で出せて、強みになればいいかと思います。

七木:私たちは初めてこの劇場で通し稽古をしたんですけど、そこでも熱量というのは稽古の時より変わっています。なので、これからお客さんが入って皆さんと対面して届けようとした時に、すごい熱量、すごい変化があるんじゃないかという感じを受けたので、それがすごく楽しみです。みんなで円になって練習したのを一緒に思い出しながら大切に演じたいです。

――チーム・ペルセウスの強みは?

<ペルセウス>
井澤:芝居、歌、見せ方、表現、全てです。ケプラー役の吉田とは古くからと言いますか、7、8年ぐらいの仲になるんですけど。芸能界で1番仲の良いアーティストなんです。そこが魅力の1つにとして僕たち自身が楽しめる要因になっていると思います。そこに礒部さんが交わっていただいています。僕たちがくだらない会話をしている時も、礒部さんがいつでも楽しく参加してくださるので、ペルセウスのチーム感というのは、芝居もそうですけど、普段の会話からといいますか、そういうところで成り立っていると思います。それが舞台上で表現できたらと思います。

――大親友同士で演じることをどう思いますか?

吉田:良いことばかりやなと、やってみて思いました。始まる前は、一緒にできることの喜びももちろんあったんですが、ちょっとなあなあになったりしないかと心配もしました。ですが、そういうものも一切なく、やる時はやるという感じでした。お互いに意見を出し合いながら切磋琢磨で作ってこれたので、良かったと思います。

――自分がガリレオ役だったんじゃないかと思いませんでしたか?

吉田:まったく思わなかったですね。むしろ、井澤がガリレオで良かったなと思いました。僕はガリレオぽくないので(笑)。

井澤:そのとおりだと思います(笑)。

吉田:ケプラーで良かったなと思います。

――井澤さんと吉田さんのお二人との稽古はどんな雰囲気でしたか?

礒部:最初からお二人の仲が良かったのですが、でもちょっと不安でもあったんです。だけど、もともと仲が良いお二人と伺っていたので、私も仲に入っていったらいいかなと思って行ったんです。そうしたら、お二人が最初からウエルカムな感じで、一緒にふざける仲にも入れてくれたので、とてもやりやすくて楽しく稽古ができました。

――チーム・オリオンの強みは?

<オリオン>
石井:俺です!……すみません(笑)。最初から稽古に参加してずっとやってきたことで、長く一緒に稽古をする時間もたくさんありましたし、いろいろ話す時間もたくさんあったので、結束力がすごく高まりました。そのことで、感覚が結構3人とも似ているので、そこが強みかもしれないです。

小野塚:強みは僕……ではないです(笑)。カズ(石井一彰)さんとは昔からというか、ここ1か月ぐらいの仲なんですけど(笑)。この1か月間、カズさんと由依ちゃんと濃く3人で何回も話したりもしました。それこそ感覚が似ているので、誰かが浮いてしまうシーンがなくて、カズさんがやったことに対して、みんなが自然とそこにテンションに合わせられることができています。それに、2人の歌唱力に安定感がすごくあるので、そこに僕は乗っかっていくだけというか、その安定があるというのが強みです。

石川:強みは私……じゃなくて(笑)。チームで、稽古がない日も自主稽古をやりたいとお願いさせていただいて、自ら稽古をさせていただいたりもして、話し合いもさせていただいていました。4チームあるので、なかなか思うように稽古できないこともあったんですけど、稽古がない時でも話し合って、みんなで結束を強めることができたなと思っています。私は2人の歌声が大好きなので、その2人と一緒に歌えるのが楽しいので、そんな歌も聴いてほしいです。

――各ガリレオたちから意気込みをお願いします。

<ペルセウス>
井澤:今回、クワトロキャストという形になりまして、各チーム4公演ずつ、そしてキャストを変えて行うこともありません。そのため、各チームの勢いというのはすごく大事でありまして、バトンを繋ぐという形もそうですし、一公演一公演を大切にするという形でもそうなんですけど、個人戦みたいな形になりそうではあります。だけど、やっぱりこの作品を盛り上げるという上では、4チーム12人、スタッフさんも含めて作品をよく知り、お客さんに良いものを届けるというベクトルは一緒なので、そこをしっかり毎公演頑張っていきたいと思います

<オリオン>
石井:カシオペアのゲネプロの熱量がものすごかったですが、12人全員が命を削って演じているので、その熱量を観に来てくださったお客さんが感じ取ってくれたら、僕らはすごく嬉しいです。

<ペガスス>
鮎川:この物語は、ケプラーからガリレオへの手紙から始まって、ただの数学者である彼らが空に魅せられていきながらも、今の現代ではありえないお話となっています。真実とは何かというところを自分の人生を賭けて伝えていくというところに胸を打たれる作品なので、そういったところを観てもらいたいです。こんなコロナのご時世ではあるので、まず今日こうやって全員が揃って舞台挨拶するということが、1番の喜びではありますし、全員が最後まで揃って舞台に立てるように祈っております。

――各ガリレオたちから、ほかのチームに負けないというポイントを教えてください。

<ペガスス>
鮎川:おそらく平均身長です(笑)。僕が1番背が高くて僕1人で平均を上げていますが(笑)。冗談はさせておき、演出家の(田尾下)哲さんに、目がすごく印象的だというをお話を頂きました。僕たちはあまり意識していないと思うんですけど、客席から観た時に、僕たちの目がとても印象的だったとお話を頂いたので、ぜひお客さんの皆さんで、それを確かめていただけたらと思います

<オリオン>
石井:4チームありますから、何か個性を出していきたいと思いながらずっと稽古をしてきたんですけど、それって自分では分からなくて。今こうやって舞台稽古をやらせてもらっている中で、楽屋でガリレオ役の4人が集まる時間が最近あったのですが、、その中で、例えば勇貴くんとお互いのチームの良さとか、琢磨と太陽とかと話してる中で、「そこはいいなと思ってくれているんだ。逆に僕もほかの3チームのここはいいな」という瞬間が多々あり、各チームとも同じくらい良いところがあります。その中でオリオンの勝っているところは……ビジュアルです。すみません(笑)。

<ペルセウス>
井澤:僕はミュージカル作品の中で15曲も歌うということが初めてなので、皆さんの経験に助けられたり、支えられたりとか、見習うところがたくさんあります。個人的にここは負けていないというところは見当たらないんですけど、うちの吉田が常々言っていまして、「俺より歌が上手いやつおらんのちゃう?」と。

吉田:人前で絶対に悪者にするやん!(笑)。

井澤:皆さんが稽古している時に、僕たちが別室で話していると、吉田が「あとキー5個上げてもイケる」とも言っていました。

登壇者全員:聴きましたか、スタッフさん!ペルセウスだけキー5個上げてください!!

吉田:あーどうしよう。その話は裏でやろう。ここでしちゃダメ!

井澤:ペルセウスはこういうボケとツッコミのような漫才気質と言いますか、そういったところが各チームより勝っているのかと思います(笑)。

(取材・文/櫻井宏充、写真/オフィシャル提供)

ミュージカル『シデレウス』公演情報

上演スケジュール

2022年6月17日(金)~6月30日(木) 東京・自由劇場

スタッフ・キャスト

【日本版台本/演出】田尾下哲
【日本語翻訳/訳詞】安田佑子
【音楽監督】宮﨑誠

【出演】
<オリオン>
ガリレオ:石井一彰
ケプラー:小野塚勇人(劇団EXILE)
マリア:石川由依

<ペガスス>
ガリレオ:鮎川太陽
ケプラー:神永圭佑
マリア:七木奏音

<ペルセウス>
ガリレオ:井澤勇貴
ケプラー:吉田広大
マリア:礒部花凜

<カシオペア>
ガリレオ:財木琢磨
ケプラー:少年T
マリア:富田麻帆

ライブ配信

【対象公演】
6月25日(土)13:00~
<カシオペア>財木琢磨/少年T/富田麻帆
6月25日(土)17:00~
<オリオン>石井一彰/小野塚勇人(劇団EXILE)/石川由依
6月26日(日)13:00~
<ペルセウス>井澤勇貴/吉田広大/礒部花凜
6月26日(日)17:00~
<ペガスス>鮎川太陽/神永圭佑/七木奏音

【見逃し配信期間】
込め1ヶ月
6月25日(土)の2公演:終演後準備出来次第~7月24日(日)23:59
6月26日(日)の2公演:終演後準備出来次第~7月25日(月)23:59

【配信媒体】
ticketbook ONLINE/Hulu/ドワンゴ

【公式サイト】http://musical-sidereus.jp/
【公式Twitter】@sidereus_jp

BOOK & LYRICS BY SEUNGWOO BAEK
MUSIC & LYRICS BY YOUJEONG LEE
ORIGINAL PRODUCTION BY RANG Inc.






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