日比谷の青空に響いた、音楽座ミュージカルの名曲たち――次回公演『ラブ・レター』に向けて


2022年5月のゴールデンウィーク、3年ぶりに「Hibiya Festival 2022」が開催された。東京ミッドタウン日比谷の主催で、街をあげて行われるこの観劇イベントに、今年35周年を迎える音楽座ミュージカルが参加。5月3日(火・祝)に、青空の下で行われたコンサートの模様をレポートする。

日比谷フェスティバルでのパフォーマンスをレポート

音楽座ミュージカルは、1987年に旗揚げ。『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』『マドモアゼル・モーツァルト』『リトルプリンス』など、オリジナルミュージカルの創作と上演し続けてきた。

今回の日比谷フェスティバルには、井田安寿、岡崎かのん、北村しょう子、森彩香、安中淳也、小林啓也、新木啓介、藤田将範が出演。音楽座ミュージカルが生んできた名曲の中から、日比谷にゆかりの深い楽曲と、6月に上演を控える『ラブ・レター』(原作:浅田次郎「ラブ・レター」集英社文庫『鉄道員』所収)の楽曲などを披露した。

男性陣が黒いスーツ、女性陣はカラフルでドレッシーなワンピース姿で登場。一曲目に歌われたのは、「アストラル・ジャーニー」(『リトルプリンス』より)。「はてしない宇宙(ソラ)へ出会いを求めてぼくは旅立つ」という印象的な歌詞が、気持ちよく青空へと吸い込まれていった。

MCで、藤田は「音楽座ミュージカルの35年の歳月は、新たな出会いを求めて旅を続けてきた、まさにアストラル・ジャーニーそのものです」と挨拶。音楽座ミュージカルが日比谷フェスティバルに参加するのは無観客で行われた昨年に続いて2回目となる。これもまた“新たな出会い”と、観客の前でパフォーマンスできる喜びを語った。

2曲目は「バラの花びら」(『メトロに乗って』より)。『メトロに乗って』には、日比谷からほど近い有楽町に実在した「ラクチョウのお時さん」をモデルにした「お時」という女性が登場する。「バラの花びら」は、そんなお時とアムールという男性によるロマンチックな楽曲だ。今回は井田と安中がデュエットとダンスを披露した。

日比谷では、東宝によって音楽座ミュージカルの作品が上演されてきた。そんな“縁”から、「黄金色(きんいろ)の麦畑」(『リトルプリンス』より)と、「いつの日にか」(『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』より)の2曲が、歌われる場面ごと再現された。ほんの短いシーンだったが、野外で観る演劇の醍醐味を味うことができた。

なお、この日ステージに立ったメンバーは、6月に上演される『ラブ・レター』のメインキャストを演じる面々。『ラブ・レター』は、直木賞作家である浅田次郎の短編を原作に作られたミュージカル作品で、東日本大震災がモチーフになっている。初演は2013年、2015年にも再演された“死者が生者を励ます物語”。

音楽座ミュージカルでは、創立時より代表を中心に関わる者すべてが当事者として作品を考える「ワームホールプロジェクト」という独自の創作システムで、常に新たな風を取り込んできた。7年ぶりの上演となる今回も、もはや新作と言うほど大きくリニューアルされるという。

「ナオミ」役を演じる森は、「(ナオミは原作にも登場しない人物なので)誰も正解を持っていないんです。台本にも答えは書いていないので、大!迷走中です(笑)」と現状を素直に吐露。「ワームホールプロジェクト」として台本の見直し、演出の見直しを行っていくため、初日の50日前あたりのちょうど今が、カンパニーとしては一番産みの苦しみを味わっている時期なのだそう。

また、楽曲も見直され3分の2は新曲になることも語られた。作品が伝えたい大切な根本はそのままに、今を生きる人たちに向けた新脚本・新演出で創出される『ラブ・レター』。イベントでは、同作より「海の彼方」と「はじまりの世界」の2曲が披露され、生まれ変わる作品への期待を感じさせた。

最後は、音楽座ミュージカルを代表する曲の一つ、「ドリーム」(『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』(原作/筒井広志『アルファ・ケンタウリからの客』)より)を全員で歌い上げた。劇中には「ポケットから夢や希望を掴みだして宇宙へと放つ」振付がある。コンサートでは、この振付を観客と一緒に行い、音楽座ミュージカルの今後への期待を日比谷の青空へと解き放った。

音楽座ミュージカルの次回公演、『ラブ・レター』は、6月22日(水)の神戸・神戸文化ホール 中ホールを皮切りに、7月1日(金)から7月3日(日)に東京・草月ホール、8月24日(水)の愛知・名古屋市民公会堂 大ホール、9月3日(土)広島・JMSアステールプラザ 大ホールにて公演を行う。35周年を迎える音楽座ミュージカルの今後にも注目していきたい。

なお、日比谷フェスティバルでのパフォーマンスの模様は5月15日(日)までライブ配信のアーカイブが視聴可能。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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