奈緒、風間俊介らで『恭しき娼婦』サルトルの傑作戯曲を栗山民也が演出


2022年6月に舞台『恭しき娼婦』の上演が決定した。本作は、1946年に発表されたジャン=ポール・サルトルの傑作戯曲で、人間の深層心理を炙り出す意欲作。今回は、栗山民也が演出し、奈緒、風間俊介らが出演する。

20世紀を代表する哲学者ジャン=ポール・サルトルは、「実存主義」を牽引した哲学者として世界に大きな影響を与えただけでなく、小説や映画脚本の執筆にも取り組み、劇作家としても数々の戯曲を世に残した。

中でもこの『恭しき娼婦』は、非情な世界における人間の“権利”、“尊厳”、そして、“自由”といった、いつの世も人類が向き合う問題に正面から取り組み、最も完成度が高いと評されている。栗山は、かねてからこの戯曲を上演することを熱望していたという。

舞台はアメリカ南部。冤罪を被せられて逃走する黒人青年をかくまう娼婦リズィー。だが、その街の権力者の息子であるフレッドはリズィーに虚偽の証言をさせようと、その黒人青年と由緒ある家系の白人の男どちらを救うか選べと迫る。街全体で黒人が犯人と決めつける状況の中で、リズィーが下した決断は・・・。

奈緒が演じるのは、物語を大きく動かす重要な決断を迫られることとなる娼婦のリズィー役。そして、風間は街の権力者の息子でリズィーに虚偽の証言を迫る白人のフレッド役を演じる。二人が共演するのは、2018年放送のドラマ『サバイバル・ウェディング』(NTV)以来。

さらに、冤罪を被せられ逃走している黒人役で野坂弘、ジョン役などで椎名一浩、ジェイムズ役などで小谷俊輔、フレッドの父で街の権力者である上院議員役で金子由之が扮する。

『恭しき娼婦』は、6月4日(土)から6月19日(日)まで東京・伊國屋ホール、6月25日(土)・6月26日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、6月30日(水)に愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホールにて上演される。

チケットは、4月23日(土)10:00より一般発売開始。

コメント紹介

◆栗山民也(演出)
サルトルのとても短かな、とても感情的な劇
学生の頃から、サルトルのこの劇のことは気になっていた。あの当時は、ヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれたゴダールやトリュフォーなどの革新的な運動に理屈なく嵌っていたから、サルトルやカミュは、その思想的先駆者だった。そのサルトルが観念ではなく、アメリカの地を自分の足で歩いて描いたレイシズムを扱った劇『恭しき娼婦』は、他の作品とは確かに違っていた。妙に生々しく感情が裸だ。テーマは勿論、人種差別だけではないが、アメリカという資本主義国家のこれからの行方を、全身でしっかりと受け止めようとしていたかのようだ。
「8分46秒」とは、米ミネソタ州で、あのジョージ・フロイドが白人警察官に膝で首を押さえつけられていた時間だ。「今」もあり、「昔」から何も変わらず、どこにでもある人間の差別。この劇のレイシズムは、現代の人種問題だけではなく、人間のすべてに対する「差別とは何か」を照射するかのようだ。静かに当たり前のように世界の底を重く流れ続ける疎外。
ずっと気になっていた劇だった。稽古が始まり、一つひとつの言葉がどんな響きで相手役と絡み合うのか、その瞬間に出会うことに今から心躍る。

◆奈緒
出演のお話をいただき、自分にとっても本当に大きな挑戦になるなと思いました。自分にはまだ早いのではないか、という気持ちもあったのですが、栗山さんともいつかはご一緒させて頂きたいと思っていましたし、決まったからには一生懸命お稽古を重ねて、成長できるようにがんばりたいと思います。
この作品は、登場人物がそれぞれの決断をしていく中で、正義とは、人が持つ権利とは、ということを考えさせられますし、自分の信念や曲げたくないものを貫いて生きていくことの難しさを感じることになると思います。ただ、そこには絶対に希望が残ってほしいと感じましたし、現代の状況に置き換えて、これからも皆で手を取り合って戦っていこうという強い気持ちを伝えられる舞台にもなっていると思います。ぜひ劇場でご覧ください。お待ちしています。

◆風間俊介
不条理なことが多い今の世の中で、こういった楽しいだけではない色々な困難に立ち向かう物語を、栗山さん、奈緒さんはじめ、このメンバーと一緒に創れることを嬉しく思います。栗山さんの作品は以前から拝見していますが、毎回、根幹、真理のようなものが炙り出されていくような、楽しかっただけで終わらない、帰り道に自問自答するような作品だなと思っていました。今回も、過去の時代を振り返りながら今の時代を見て、これからの未来を考えるような作品を創っていけるだろうと楽しみにしています。演劇を上演することも、観に行くことも、難しいと感じるこの世の中で、それでもこの作品に興味を持ち、観たいと思ってくださり、足を運んでいただけることに感謝して、良い作品をお届けすることを胸を張って約束したいと思います。ぜひ劇場にお越しください。

『恭しき娼婦』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2022年6月4日(土)~6月19日(日) 伊國屋ホール
【兵庫公演】2022年6月25日(土)・6月26日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【愛知公演】2022年6月30日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

スタッフ・キャスト

【作】ジャン=ポール・サルトル
【翻訳】岩切正一郎
【演出】栗山民也

【出演】
奈緒 風間俊介
野坂弘 椎名一浩 小谷俊輔 金子由之

【公式サイト】https://www.tbs.co.jp/uyauyashiki_shofu/
【公式Twitter】@uyauyashiki



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