【レポート】パリ・オペラ座バレエシネマ『プレイ』が映画館で公開


コンテンポラリー・ダンス界で注目を集めるスウェーデン出身の振付家アレクサンダー・エクマンとパリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちが初めてコラボした作品『プレイ』が、2月11日(金)より東劇ほか全国の映画館で公開となる。この記事では、本作の内容をざっくりとご紹介していきたい。

スウェーデン・ロイヤル・バレエ団、ネザーランド・ダンス・シアターやクルベリ・バレエ団でダンサーとしてのキャリアを重ね、振付家に転向したエクマン。様々な仕掛けを施した斬新な演出が話題となった『白鳥の湖』や、愛と濃厚なエロティシズムで満たされる夢のようなひとときを舞台上に描き出した『真夏の夜の夢』などの作品で、その才能を世に知らしめた。

そんなコンテンポラリー・ダンス界を牽引するエクマンが、世界最古の国立バレエ団であるパリ・オペラ座バレエ団とコラボレーションして創り上げた『プレイ』。タイトルの通り“遊び”をテーマにした本作では、ガルニエ宮の舞台を、金属製の構造物や高架などで埋め尽くし、その中でダンサーたちがリズムとコミュニケーションのエネルギーを放出しながら踊るという不思議な空間へと導いている。また、総勢36名のダンサーの中には、パリ・オペラ座バレエ団最高位のエトワールとして日本でもよく知られるステファン・ビュリョンも出演している。

冒頭、サックスの音色に包まれて、白い舞台上に白い衣装を纏った男女が群れている。そのなかで、オレンジのセーターを着た男性と、グレーのパンツスーツに黒縁眼鏡、ブロンドヘアをピシッとまとめた女性だけが異物感を醸し出す。床を鳴らす音、声、手拍子が楽し気に響いている。

舞台は暗転。下手側にはトウ・シューズを履いた女性、上手側にはオレンジセーターの男性が、大きな立方体の上に乗っている。女性はつま先の硬いトウ・シューズを打ち鳴らし、男性はマイクを床に叩きつけたりこすったりして、競い合うようにリズムを刻む。もう一人、白い衣装の男性が、3つ目の立方体を動かして空間の構成を変化させている。

次第に舞台上は宇宙空間のような空気を纏い始める。あちらこちらで様々なものや人がゆっくりとうごめくなか、男女ペアと男性二人組は、舞台を大きく使ってひたすらに踊り続けている。続いて登場したのは、鹿の角のようなものをつけた女性ダンサー。彼女の動きにつられるように、同じく角を生やした女性ダンサーたちが集まり、大地を連想させるような独特な打楽器のリズムに合わせて縦横無尽に動き回る。

オレンジセーターの男が巨大な風船を投げ込んだことで、“遊び場”は観客席にまで広がり、舞台上では、どこに視線を向ければ良いのか迷うほど、ダンサーや色が目まぐるしく動き回る。舞台奥にいたパンツスーツの女性が白い傘をさすと、バケツをひっくり返したかのようにグリーンのボールが頭上から降ってきて、たちまち床を埋め尽くしてしまう。ダンサーたちが激しく動くたび、跳ねて宙を舞うボールは水しぶきのようだ。

【レポート】パリ・オペラ座バレエシネマ『プレイ』が映画館で公開

オーケストラピット部分に残された大量のボール。そのなかから、黒いシャツにロングジャケット、眼鏡をかけた男がむくっと起き上がり、集まってきた同様のスタイルの男たちが、膝まであるボールの海の中を進む。閉まっていた幕があがり、さらに同様の黒やグレーの衣装に着替えたダンサーたちが姿を現し、パイプ椅子を使った群舞などを披露する。やがて彼らは一列になって舞台を一周すると引っ込んでいってしまい、残されたのは数名。黒のクラシックチュチュを纏った女性とパートナーのパ・ド・ドゥ、台の上で踊る男性2人組、喫煙室のような煙たい空間に佇む女性、ゆっくりと舞台奥を歩く男性。そして背景に映し出された光の時計。

カリスタ・”キャリー”・デイの歌声で雰囲気は一変。1本の蝋燭に炎を灯したダンサーたちがぽつぽつと集まってくると、静かで温かい光の中に、どこか危険なにおいもするようなムーディーな空気が会場を包み込んでいく。

今度は、たくさんの立方体が舞台上に出現。その上やその周りで、足音や擦れる音を響かせながら流れるような振り付けをこなす群舞。ぼーっと見ていると、万華鏡を覗いてくるくる回しているような、そんな不思議な感覚に引き込まれていく。

【レポート】パリ・オペラ座バレエシネマ『プレイ』が映画館で公開

白い舞台上に、グレーや黒の衣装を纏ったダンサーたち。黒の濃淡が視界いっぱいに広がっている。皆で同じ動きをしたり、誰かが急に倒れたり、止まったかと思えば伝染するようにまた動き出したり。いつの間にか一人取り残された男は、服を脱ぎ捨て、眼鏡をはずして、白い素肌のまま舞台袖に消えていく。

再びカリスタ・”キャリー”・デイが登場。巨大な白い風船が客席に飛び出していき、カラフルなリボンや旗が振られ、ダンサーたちは無邪気に黄色や緑のボールを客席に投げこむ。そんな賑やかなフィナーレで作品は終わっていくのだった。

舞台上に広がる壮大でカラフルな“遊び場”。1998年から2015年までパリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして活躍し、現在は芸術監督を務めるオーレリー・デュポンもイチオシする世界観を、ぜひ映画館の大きなスクリーンで楽しんではいかがだろうか。

パリ・オペラ座バレエシネマ『プレイ』は、2月11日(金)より東劇、札幌シネマフロンティアにて、2月18日(金)からは新宿ピカデリーほかで公開される。

【公開情報HP】https://www.culture-ville.jp/parisoperaballetcinema
【Twitter】@cinema_ballet

(取材・文/エンタステージ編集部 4号、写真/オフィシャル提供)

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