【レポート】甲斐翔真、溢れんばかりのミュージカル愛を平間壮一・真彩希帆と歌い上げたファーストコンサート


2021年12月25日(土)に、甲斐翔真が初の単独ミュージカルコンサートを東京・オルタナティブシアターで開催した。2020年にミュージカル『デスノート THE MUSICAL』夜神月役(Wキャスト)でミュージカルデビュー(初主演・初舞台)を果たした甲斐。ゲストに真彩希帆平間壮一を迎え、約1時間半にミュージカル愛をたっぷり詰め込んだ。本記事では、昼夜行われた公演のうち、昼公演の模様をレポートする。

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甲斐にとって初めてとなる、このコンサート。ステージ上には、5人のバンドマンがずらりと並ぶ。客電が落ちると、ギターがあるフレーズを奏でた。このフレーズは・・・!そう思うと同時に点いたスポットライトの下に立っていたのは、ゲストの平間。まさかの始まりへの驚きは、平間のこの一言で一気に高揚感へと変わった。

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「クリスマスの夜から始める――」

そう、1曲目に歌われたのは「Tune Up #1~RENT」。「最初はロジャー。錆びたフェンダーギター、1年ぶりにチューニング・・・」その歌詞に応えるように、甲斐がステージ上に現れた。

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甲斐と平間と言えば、2020年11月に上演されたミュージカル『RENT』で共演している。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、公演半ばで中止となってしまった。本当に、約1年ぶり。二人は熱い気持ちをぶつけ合うように、そして楽しげに、顔を見合わせながら思いっきり「RENT」を歌い上げた。

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のっけから全速力で、「絶対、あの一言から始めたかったんです」と甲斐は満足げな表情を浮かべる甲斐。平間は「みんな、ちょっと笑いそうになっちゃったでしょ。翔真のライブなのにシルエットが違う・・・あれ?壮ちゃん?これ壮ちゃんのライブだっけ?って(笑)。『RENT』 は途中で終わってしまって、多分来れなかった方もいらっしゃったと思うから、この1曲だけでもどうにか伝えたいっていう気持ちが、ここに込められていてね」と、驚きのオープニングの裏側を明かした。

少々興奮&緊張気味な甲斐に、先輩の平間が「俺も今日、お客さんの一人となって袖で聞いていますから。皆さん、耳から幸せになってくださいね」と上手にステージを渡し、いよいよ甲斐が一人ステージに立った。

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改めて甲斐は、集ったファンに感謝を述べ、「今日はいろんな曲を皆さんに聞いていただきたいなと思っています。まずはミュージカルコンサートということで、僕がミュージカルに“どう出会ったか”から始めたいと思います」と、自らのルーツを語り始めた。

一つ目には、2015年にワールドプレミアとして上演されたミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』を挙げた。それが、物心ついてから初めてちゃんと目にしたミュージカルだった甲斐は、そこでラミン・カリムルーの歌声を聞き「今までミュージカルに抱いていたイメージがガラッと変わった」そう。

コロナ禍前、ラミンを日本に招いて『CHESS THE MUSICAL』(2020年)が上演された際には。楽屋まで会いに行き、「あなたのおかげでミュージカルを志しました」と告白するほど大きな影響を受けた。

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そしてもう一つ、甲斐に大きな影響を与えたのが韓国ミュージカル。コロナ禍前は時間を見つけては韓国へ行き、マチソワ(昼公演と夜公演を続けて観劇すること)するぐらいファンなのだという。中でも、ミュージカル『ジキルとハイド』との出会いは衝撃だったそうで、「世界にはこんなものがあるのか・・・!と言葉にできないぐらいの衝撃を受けて。鳥肌が立ちすぎて、もはや鳥になったんですよ・・・」と、その出会いを語った。

そんなルーツへのリスペクトを込めてメドレーで歌ったのが、韓国発のミュージカル『マタ・ハリ』より「普通の人生」、ミュージカル『フランケンシュタイン』より「君の夢の中で」、ミュージカル『ジキルとハイド』より「時が来た」(韓国語歌唱)の3曲。そして、大ファンであるラミンの代表作の一つ、ミュージカル『Love Never Dies』より「Til Hear You Sing」(英語歌唱)を歌った。

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「全部、最初の方に歌う曲じゃない(笑)」と言いながらも、どうしても歌いたかった、聞いてもらいたかった曲を歌い、笑顔の絶えない甲斐。「どれも、聞いた瞬間『いつか絶対歌いたい!』って思った曲なんです。『マタ・ハリ』は、『REON JACK4』で柚希(礼音)さんと共演させていただいた時に『フランケンシュタイン』は日本版の演出をされていた板垣(恭一)さんにゴマを擦っておきました(笑)」と、ぬかりない(?)裏話も。

「時が来た」は、甲斐が公演時のウォーミングアップとして楽屋などでよく歌っていた曲だそう。「いつかこんな風に皆さんの前でお届けできないかなと思っていたら、まさかの生バンドをつけていただけました。・・・時が来た!」と喜びいっぱいの様子だった。

ちなみに、「Til Hear You Sing」については、歌うことをInstagramのDMを通じてラミン自身に報告していたそう。一方的に送ったつもりだったが、まさかの返事が来て、長めのアドバイスをもらったと明かした。『Love Never Dies』は『オペラ座の怪人』の10年後を描いた作品。現在24歳の甲斐が、さらに成長し機も熟して、いつか憧れの人と同じ役を掴むことができたなら・・・。そんな時が来ることを期待したくなる歌声だった。

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続いては、甲斐がこれまでに出演してきた作品からのメドレーへ。初ミュージカルとなった『デスノート THE MUSICAL』(2020年)から表題曲「デスノート」、「ヤツの中へ」を歌唱した。「ヤツの中へ」では、L役としてゲストの平間が再登場。今の甲斐が演じる夜神月、そして平間が演じるLの競演も観てみたくなるほど、熱いセッションが繰り広げられた。

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『RENT』からは「OneSong Glory」、『マリー・アントワネット』からは「遠い稲妻」をセレクト。『ロミオ&ジュリエット』からは「エメ」を、もう一人のゲストである真彩とデュエットで披露した。この組み合わせもまた、観てみたくなる似合いのロミジュリである。

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そして、ここで真彩がソロとして『オペラ座の怪人』より「スィンク・オブ・ミー」を歌った。その透き通るように美しい歌声を惜しげもなく聞かせてくれた。口々に「すごかった~」「耳福~」と言いながら、袖からステージへと戻ってきた甲斐と平間の顔には、あの仮面が・・・。仮面は甲斐自身が前日に買ってきたそうで、平間が「翔真がこれ付けて出たいって言ったんだよ」と告げると、真彩は思わず「かわいい(笑)」と笑った。

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今年上演された『ドン・ジュアン』で共演していた平間と真彩。一方、甲斐は真彩と初共演。「なんていい声と真っ直ぐな瞳を持っているんだろう」と思っていたと真彩に言われ、恐縮しつつも、「真彩さんと初共演なんですが、共通点があるんです」と切り出した。甲斐は、来年3月に上演される『next to normal』で、真彩と宝塚歌劇団雪組トップコンビを組んでいた望海風斗と共演することが決まっている。「伝説の歌うまコンビをすでにコンプリートしそうです(笑)」と恐縮する甲斐に、真彩は「望海さんに、素敵な人でしたって伝えます!」とニコニコだった。

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ここで、平間から「せっかくクリスマスなんだから、台本にないけど、翔真のクリスマスエピ聞きたいな!」と、予定していなかった話題を振られ、甲斐はあたふた。ちなみに、サンタさんを信じていたのは小学校3年生までだったそう(急に大人になった瞬間があったらしい)。

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続いては、平間のソロコーナーへ。2022年2月1日(火)に開幕する『The View Upstairs-君が見た、あの日-』で主演を務めることが決まっている平間。現在、稽古の真っ只中ということで、人前で楽曲を披露するのはこれが初めてだった。「同性愛を描いた作品ではあるんですが、蓋を開けてみると“人間”というものについてすごく考えさせられる作品です。明るい未来を想像して、皆さんが心の楽しさを取り返す曲になればいいな」と、「The Future is Great」を披露。日本初演となる作品との出会いに期待が高まる歌唱だった。

次に甲斐が用意したのは、ミュージカル映画の楽曲メドレー。『Dear Evan Hansen』より「Waving Through a Window」、『ニュージーズ(NEWSIES)』より「Santa Fe」、『ヘラクレス』より「Go the Distance」、『The Greatest Showman』より「Rewrite the Stars」をチョイスした。

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いよいよ、コンサートも終盤。ここで、3月に出演する『next to normal』より「I’m Alive」が初披露された。『next to normal』は、躁鬱病と闘う一人の女性と、それが家族にもたらす影響を描いた作品であり、甲斐が演じるゲイブは物語のキーとなる重要な息子役。この楽曲を甲斐が作品中でどう活かすか、注目だ。

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そして、甲斐の直近の出演作『October Sky-遠い空の向こうに-』より「星を見上げて」。今もまだ演じられるほど作品が身体に染み付いているという甲斐は、「リハーサルの時から、公演の時と同じステージングをしていたんです。星ないのに、後ろ向いて上を見上げたりして・・・。そうしたら、この本番、ステージに星を付けてもらえていました!なんというクリスマスプレゼントでしょう!!」と、スタッフからのサプライズに大喜び。

公演が幕を閉じた今もなお、彼がこの曲を歌えばどこまでも広がる大きな宙が見えるよう。ブロードウェイでの上演に先駆けて、日本で上演されたこの作品は、今後も甲斐が「代表作」として掲げられる一作になるに違いない。

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最後は、平間、真彩を再びステージに呼び込み、甲斐が「この時代に合っているな」と思ったというミュージカル映画『tick, tick… BOOM!』(『RENT』の生みの親ジョナサン・ラーソンの自伝的作品)より「Louder Than Words」を、3人で丁寧に歌い上げた。

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恵まれた身体に忘れそうになるが、甲斐はまだ24歳。そして、舞台に立つようになってから、まだ2年しか経っていない。しかし、その2年がどれだけ実り多きものだったか。クリスマス当日のコンサートだったが、クリスマスソングを挟む隙もないぐらい、甲斐の「歌いたい!」を詰め込んだ約1時間半。甲斐自身がミュージカルを愛し、夢中になっているのかがよく分かるファーストコンサートだった。この先、甲斐のさらなる成長が心底楽しみだ。未来は明るい。

(取材・文/エンタステージ編集部 1号、撮影/オフィシャル提供)

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