辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、林翔太らが練り上げた濃厚な演劇空間『ネバー・ザ・シナー』開幕


2021年9月2日(木)に東京・品川プリンスホテル クラブeXにて『ネバー・ザ・シナー-魅かれ合う狂気-』が開幕した。本作は、世界を震撼させた歴史に残る猟奇的殺人事件「ローブとレオポルド事件」を題材に書かれたストレートプレイ作品。『踊る大捜査線』シリーズなどで知られる君塚良一が舞台初演出を手掛け、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)と林翔太が恋人役を演じる。

「ローブとレオポルド事件」とは、裕福な家庭に生まれ、互いに同性愛関係にあった天才と呼ばれていたユダヤ人の大学生二人が、同じく裕福なユダヤ人実業家の息子ボビー・フランクスを誘拐して殺害し、終身刑プラス99年の懲役刑を受けた事件。

戯曲を手掛けたのは、映画『グラディエーター』『ラストサムライ』などで知られるジョン・ローガン。この『ネバー・ザ・シナー』は、ローガンが映画の脚本家として活躍し始めるよりも前に書かれ、評価されていた作品だ。

辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、林翔太らが練り上げた濃厚な演劇空間『ネバー・ザ・シナー』開幕

物語の時代は、1924年の夏。アメリカは数年前に施行された禁酒法の最中であり、混沌としていた。そんな中、イリノイ州シカゴである裁判が始まろうとしていた。ローブとレオポルド、二人のエリート青年が起こした衝撃的な殺人事件に全米が注目していた。

シカゴ大学で運命的な出会いを果たした二人は、互いを“超人”と認め合い、信頼を深めていた。犯罪小説にのめり込み、空想の中で「完全犯罪」を夢見るようになっていくリチャード・ローブ(辰巳)。愛鳥家でニーチェの思想に傾倒するネイサン・レオポルド(林)はそんな彼と共謀し、ついに事件を引き起こす。

顔見知りの少年を殺害し、誘拐に偽装工作を施すが、それは「完全犯罪」とは程遠い稚拙なものだった。新聞記者(荒木健太朗、前島亜美、山岸拓生)たちが日々センセーショナルな事件のあらましを報道する中、警察の追及を受け、やがて2人は自供するに至る。敏腕弁護士クラレンス・ダロウ(磯部勉)は情状酌量を狙い奔走するが、厳格な刑事ロバート・クローク(姜暢雄)は厳罰を下すべく毅然と立ちはだかる。裁判の中で徐々に揺らいでいく二人の信頼関係の行方は・・・。

「ローブとレオポルド事件」と言えば、人気ミュージカル『スリル・ミー』の題材としても、演劇ファンには広く知られているだろう。『スリル・ミ―』には、彼(ローブ)と私(レオポルド)の会話のみで物語が進んでいくが、本作は新聞記者、弁護士、検事といった人々の目を通し、多角的な視点で描かれている。

辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、林翔太らが練り上げた濃厚な演劇空間『ネバー・ザ・シナー』開幕

ローブ役の辰巳は、スリーピースのスーツをビシッと着込み、周囲を虜にする魅力と猫のようにしなやかに人の心に忍び寄る妖しさを兼ね備える。序盤、レオポルドを後ろから抱き込み、ゆっくりと指を這わせるほんの数秒のシーンから色気が立ち込める。さらに、高度な会話を展開する知性を見せながら、「ママが悲しむ」という子どものような未熟さも垣間見えるアンバランスな青年の心をしっかりと積み上げていく。

それを受けるレオポルド役の林は、ローブを求めるあまり彼の思想に引きずり込まれていく様を丁寧に見せる。二人が出会わなければ、起こらなかっただろう痛ましい事件。林という俳優が持つあたたかな雰囲気が、猟奇性に温もりを与えているようだった。

辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、林翔太らが練り上げた濃厚な演劇空間『ネバー・ザ・シナー』開幕

また、中盤以降で繰り広げられる弁護士役の磯部と検事役の姜の舌戦も熱い。複数の役を演じる荒木、前島、山岸の畳み掛けるような台詞の数々も、2人だけの小さな世界を大衆という鏡に映し、物語にうねりを生んでいった。

調べると、実際のローブとレオポルドには自身が死を迎えるまでの物語があった。この『ネバー・ザ・シナー』のローブとレオポルドの心に、最後に去来するものは・・・。

公開ゲネプロ実施後に行われた会見で、濃厚な稽古の様子を語った辰巳と林。主演の辰巳は、「実話を元にした作品ということで、(演出の)君塚さんを先頭にいろんなことを調べ、勉強しながら真摯に取り組んできました。こうして皆さんの前で披露できることが幸せです」と、初日を迎える想いを語った。

辰巳と林は、かつてジャニーズJr.内の同グループに所属していた時期がある。濃密な関係を持つ「主要人物」を2人で演じることに「こんな日が来るとね」「諦めずにがんばっていたら、こういう景色が見れるんだと過去の自分たちに伝えたい」と感慨深い様子を見せていた。

辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、林翔太らが練り上げた濃厚な演劇空間『ネバー・ザ・シナー』開幕

辰巳は、林について「昔から、純粋に真っ直ぐ物事に取り組む姿勢が好きな俳優さんです。いまもかわいい後輩なんですが、自分がローブとして感じたことを芝居でどう投げてもレオポルドとしてしっかり受け止めてくれるので、男としても、俳優としても成長を感じますね」とコメント。

一方、林は辰巳について「常にお兄ちゃん的存在だった」と言い、「お話をいただいた時はドキドキしました。がっつりお芝居を一緒にできることは本当に嬉しいですし、たくさんの刺激をもらっています」と、共演への喜びを語った。

さらに、「辰巳くんは研究がすごいから、稽古を重ねるごとにどんどんセクシーになっていくんですよ。最後の方は、レオポルドとしてきゅんきゅんしてしまいました」と告白。すると辰巳は「あんまり言わないで・・・!生まれ持ったセクシーさが溢れているだけです!」と大慌て。

近年、バラエティ番組でおもしろい一面をたくさん見せている辰巳だが、根はとても真面目。1920年代の“品のある男”の色気や所作を身につけるため、映画などを観て研究を重ねたという。「あと、何故か『森田剛くんならどうやるかな?』と思いまして。剛くんの映像などもいろいろ観て勉強しましたね」と明かした。ちなみに、森田は「主演をやったら観に来てくれる」と辰巳に約束してくれたそうだが、未だ果たされていないそう。

さらに、林とは物語の舞台となった土地を検索し、「劇中、車で走ったと思われる道を、Google Earthを使って二人で辿ってみました。本当にドライブしているみたいでした」と、コロナ禍の制限がある中でも、できることを探し、自分たちの中でイメージを膨らませていった過程を教えてくれた。

2人が、新境地を切り開く予感を漂わせる本作。辰巳は「翔ちゃんは、後輩でありライバル。仲間であり、ライバルです。一緒にやるうちにそういう気持ちが出てきたので、終わったあとどうなっているか分からなくて、楽しみです」と、自分たちへの期待も覗かせる。

辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、林翔太らが練り上げた濃厚な演劇空間『ネバー・ザ・シナー』開幕

最後に、林は「実際にあった事件を題材にしているので、観てくださる方にとっては心苦しくなル部分もあるかもしれませんが、作品として観ると、2人の青春物語に映るところもあるのではと思います。観に来てくださった皆さんに、何かエネルギーや元気を持って帰っていただけると嬉しいです」と一言。

辰巳は「それぞれが熱く戦っている作品なので、願わくば、一人でも多くの方に観ていただきたい。でも、観に来れない方もいると思うので、その方々にもいつか届けられる一歩にできれば。何よりも千秋楽まで無事に走り続けられるように、演劇というものに真摯に立ち向かっていきたいなと思います」と締めくくった。

『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』は、9月2日(木)から9月12日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeX、9月18日(土)・9月19日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演。

(取材・文・会見写真/エンタステージ編集部、舞台写真/木村直軌)

『ネバー・ザ・シナー-魅かれ合う狂気-』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】9月2日(木)~9月12日(日) 品川プリンスホテル クラブeX
【大阪公演】9月18日(土)・9月19日(日) 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

スタッフ・キャスト

【作】ジョン・ローガン
【演出】君塚良一

【出演】
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)

林翔太

荒木健太朗
前島亜美
山岸拓生(拙者ムニエル)

姜暢雄
磯部勉

【公式サイト】http://www.nts-stage.jp
【公式Twitter】@nts_stage



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