総合芸術としての演劇に光を――コロナ禍で開催された読売演劇大賞 贈賞式


2021年2月25日(木)に「第28回読売演劇大賞贈賞式」が東京都内にて行われた。読売演劇大賞(日本テレビ放送網後援)は、国内で上演された舞台作品(1月から12月までの通年単位)から、すぐれた舞台作品・演劇人を顕彰する賞。今回は、鈴木杏、藤田俊太郎、山崎一、小瀧望らが受賞。受賞者たちはみな、コロナ禍で苦しみ悔しい思いをしてきた演劇人の思いも乗ったトロフィーを大切そうにその手に握りしめた。

今回は、緊急事態宣言下の贈賞式開催ということで、受賞者と限られた関係者と媒体のみが会場に集う形での開催に(弊社取材はオンラインにて実施)。例年とは様変わりした式典となったが、ショー・マスト・ゴー・オンの精神で奮闘してきた演劇関係者を励まし、総合芸術としての演劇に光を当てる意味でも、意義深い贈賞式の開催に。

第28回の大賞・最優秀女優賞を受賞したのは、鈴木杏。鈴木は、第24回の最優秀女優賞にも選ばれており、4年を経てついに大賞の受賞となった。なお、優秀女優賞から大賞に輝いたのは、杉村春子、黒柳徹子、森光子、大竹しのぶ、宮沢りえに続いて6人目。緊急事態宣言下の自粛が明けた昨年7月に上演された栗山民也演出のひとり芝居『殺意 ストリップショウ』と、10月から12月にかけて全国6都市で上演された野田秀樹潤色、ルーマニアの鬼才シルヴィウ・プルカレーテ演出の『真夏の夜の夢』での演技を高く評価されての受賞となった。

1994年に創刊120周年を迎えた読売新聞の記念事業として創設された読売演劇大賞は、日本文化の発展促進のため、歌舞伎や能などの古典から現代劇までを網羅し、ジャンルを問わず幅広い視野でから作品を選考する。

9名の選考委員が選んだ候補者・作品の中から演劇関係者108人による投票を行い、それをもとに最終選考回で「大賞」「部門最優秀賞」(最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀演出家賞、最優秀スタッフ賞)「杉村春子賞(新人賞)」「芸術栄誉賞」などを決定。

「杉村春子賞」「芸術栄誉賞」は投票委員からの推薦を受けて決定。「部門最優秀賞」5部門と杉村春子賞の中から、その年の演劇グランプリとなる「大賞」を選出し、正賞受賞者には各部門とも彫刻家・佐藤忠良氏作のブロンズ像「蒼穹」、副賞は大賞受賞者に200万円、それ以外の最優秀賞・杉村春子賞・芸術栄誉賞の受賞者に各100万円、各部門優秀賞には、記念のトロフィーと賞金10万円が贈呈される。

第28回の選考委員は、犬丸治(演劇評論家)、小田島恒志(翻訳家、早稲田大学教授)、杉山弘(演劇ジャーナリスト)、徳永京子(演劇ジャーナリスト)、中井美穂(アナウンサー)、西堂行人(演劇評論家、明治学院大学教授)、萩尾瞳(映画・演劇評論家)、堀尾幸男(舞台美術家)、矢野誠一(演劇・演芸評論家)の9名。

第28回各賞の受賞作品・人は以下のとおり。

【大賞・最優秀女優賞】鈴木杏
『殺意 ストリップショウ』『真夏の夜の夢』の演技

【最優秀作品賞】『リチャード二世』
【最優秀男優賞】山崎一
『十二人の怒れる男』『23階の笑い』の演技

【最優秀演出家賞】藤田俊太郎
『天保十二年のシェイクスピア』『NINE』『VIOLET』の演出

【最優秀スタッフ賞】齋藤茂男
『アルトゥロ・ウイの興隆』現代能楽集X『幸福論』~能『道成寺』『隅田川』よりの照明

【杉村春子賞】小瀧望
『エレファント・マン』の演技

【芸術栄誉賞】緒方規矩子(衣装デザイナー)
【選考委員特別賞】
現代能楽集X『幸福論』~能『道成寺』『隅田川』より

【優秀作品賞】
絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』
『ゲルニカ』
ミュージカル『NINE』

【優秀男優賞】
大谷亮介、片岡仁左衛門、小瀧望、城田優

【優秀女優賞】
安蘭けい、池谷のぶえ、神野三鈴、那須佐代子

【優秀演出家賞】
詩森ろば、瀬戸山美咲、原田諒、眞鍋卓嗣

【優秀スタッフ賞】
梅田哲也、乘峯雅寛、前田文子、宮川彬良

(写真提供/読売新聞社)

(C) 読売新聞社

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